〔学院情報〕
平成15年度学院入学式
 



 去る4月3日(木)の10時から、当センター学院講堂において、 新入生92名を迎え、平成15年度入学式を開催しました。  この式典では、開会の冒頭、当センターの長岡学院長から 次のとおり式辞がありました。

 『言語聴覚学科30名、義肢装具学科10名、視覚障害学科12名、 手話通訳学科30名、リハビリテーション体育学科10名、 合計92名の新入生の皆様、入学おめでとうございます。
 ご家族の皆様、おめでとうございます。
 また、ご参列の皆様におかれましては、年度始めでご多忙のとこ ろ、本学院の入学式にご臨席を賜り誠にありがとうございます。 学院を代表いたしまして、御礼申し上げます。
 リハビリテーションセンター周辺の櫻も満開のこの良き日 に当たり、学院長としてご挨拶を申し上げます。
 私は、学院長として2年目を迎えます。昨年の入学式では、 初めて会う新入生を前に、どのような方々かも分からず、 何をお話したらよいかを考え大変緊張いたしました。本日は、 ここにおられる新入生の皆様は、この学院での勉強、生活に 期待や不安をお持ちでこの席についていらっしゃることと 存じます。私は本日、この一年の経験にもとづいて3つの お話をさせていただきます。これが皆様の勉学に多少なりとも 参考になれば幸いと思います。
 昨年は、この学院を目指してこられる方がどのような方達か、 本当には分かりませんでした。私は、本日ここにいらっしゃる 皆様の一人一人と面接をさせていただきました。面接を通じて、 皆様がそれぞれの学科に期待されるもの、そのためにどのような 覚悟で臨んでおられるかを知ることができました。
 残念ながら、面接を受けられた方の1/3の方は、合格でき なかったのですが、私の眼には、皆様の熱意、能力は立派なも ので本学院で十分にやってゆける方々と思っています。是非、 自信をもって2ないし3年の勉強をして欲しいと思います。
 2番目は、昨年もお話しましたが、先生方、先輩方から しっかり学ぶと言うことです。私は、当センターの病院で 神経学を担当しています。私の学んだ神経学では、例えば、 ハンマーを持って患者さんの反射を調べ、診断を行なうという 診察法があります。
 この教育の過程は本で読んだり聞いたりしただけでは、 なかなか解りにくく、実際を見ながら説明されて始めて理解 できるものです。臨床医学は、伝受と伝授のくり返しと言わ れます。たくさんの情報を先輩から後輩が受け取り(伝受)、 後輩はこれに何かを加えてさらに次の後輩に引き渡す(伝授) ということです。皆様が当学院で身に付けるものもこの伝受と 伝授によって受け継がれるものに他なりません。更に、知識・ 技術のほかに、皆様がかかわられる障害を持った方への専門家 としての対応、即ち、障害者の気持ちを理解した上で専門家とし て助言すること、についても是非受け継いで欲しいと思います。
 3番目に、皆様が習得された技術を社会で役立てようとする 場合、医療、福祉、その他の関連する職種やボランティアの方々 との連携がすぐに必要になります。チームアプローチが大切と 言われています。
 本学院は言語聴覚学科、義肢装具学科、視覚障害学科、手話 通訳学科、リハビリテーション体育学科の5学科で構成されて います。このように恵まれた環境で、各学科間・センター内 各部門の交流を通じて障害者の問題について広い視点をもっ ていただきたいと思います。
 我々を取り巻く医療福祉の環境は大きな変化をしています。 きちんとした知識・技術を獲得し、広い視野をもった専門家 として卒業されることが、このような難しい時代にあっても 専門職として活躍して頂くのに最も基本的で重要なことと信 じています。
 最後に、この緑の豊かな環境で充分に学院生活を楽しまれ ることを期待して式辞といたします。』

平成15年度学院入学式 長岡学院長による式辞


 続いて、当センターの佐藤総長より次のとおり祝辞が 述べられました。
 『国立身体障害者リハビリテーションセンター学院に 入学された皆さん、入学おめでとうございます。
 我々は、難関をパスした皆さんを迎え、ここに平成 15年度学院の入学式を挙行できますことは大変有り難い ことでございます。
 最初に、学院や本センターの特色を説明しますが、 この学院には、障害者リハビリテーションの関連職種 を養成する5つの学科があります。皆さんは、自分の 専攻する学科以外の専門知識をも吸収できます。
 恵まれた環境にあると言うことになります。
 このセンターには、学院の他に、更生訓練所、病院、 研究所があります。更生訓練所や病院では、視覚障害、 聴覚障害、肢体不自由、内部障害などすべての身体障害 の方々がサービスを受けております。
 このサービス実施施設として活発に活動できている ことが、皆さんの実習を充実させる重要な要素になって おります。この点も、本学院の一つの特色です。
 センター全体での行事に運動会や並木祭と呼ばれる 文化祭がありますし、更生訓練所では課外に各種の クラブ活動や野外活動としてのキャンプがあります。 このような行事において、色々の身体障害を持たれる 方々と接する機会をとらえて、耳学問以外の実体験 をされることをおすすめします。
 次に、実習などの機会を通して学んでいただきたい ことをお話し致します。ここで、皆さんが急に視力が 低下してきたと仮定してみましょう。その時皆さんは、 その原因はなんであろうか、どこの病院に行くのが良い だろうか、そこではどんな方が治療を担当している だろうか、入院が必要なのだろうか、良くなるので あろうか等多くの心配をかかえ、迷われながら病院を 訪れることでしょう。その際に、病院において適切な 対応を受けることによって、その迷いは消えてゆくで しょうし、逆に、冷たい言葉をかけられれば落ち込んで しまうこともあるでしょう。サービスを担当する側には、 このような方々に対する医療なり福祉サービスを行なって いることを心得て、細心の注意を払うことが必要です。 それが自然に行いうるようになることが求められます。
 最後に、皆さんは我々の仲間であると言うことを説明 します。身体障害者リハビリテーション領域において、 国内で必要とされている部門の教育を最初に取り上げ、 それを確立して普及させることがこの学院の使命です。 その成果が上がり、他にも同種の教育機関が設置される 段階となれば、その領域の充実に努めることとなります。
 そのために必要なことは、臨床や福祉のサービスを提供 する場において、高いレベルの適切なサービスを提供し、 その積み重ねによってさらに高いレベルの技術を作り上 げることです。その基盤のうえに優秀な専門職を育成し、 その方々がまた次のステップを高めてゆくという連鎖 が必要です。
 研究についてお話ししますと、物理、化学、生物などの 研究では、反応系を単純化し、繰り返しの実験によって 同じ反応が出ることを確認することが基本ですが、我々の 領域では対象が人であり、対象を取り巻く環境までを考え たときに、サービスの中身は対象毎に異なります。 このことは、反応系を単純化し、繰り返し試行できる研究 とは大いに異なっております。この場合には、実践の積み 重ねによって始めてサービス技術の進歩が得られます。 皆さんが卒論などで関わるそれぞれのケースがそのように かけがえのない対象でありますので、皆さんの実習における 努力もセンターの実力の向上に寄与する部分があります。
 只今説明したように、このセンターは教育の場であり、 研究の場であり、サービス実践の場であり、それぞれの 進歩が他部門の進歩に寄与するそのダイナミズムの中から 我が国の身体障害者へのサービスをリードし向上させて行く 使命を帯びたところです。そのための機構は整えられており、 皆さんの入学された学院はその重要な部分であります。 皆さんもこのダイナミックな連鎖へ是非積極的に参加される ことをお願い致し私の祝辞と致します。』

平成15年度学院入学式 佐藤総長による祝辞


 引き続き、新入生紹介のあと、リハビリテーション 体育学科2年佐々木健司君が、次のとおり歓迎のことば を述べました。

 『ふきのとうも長く厳しい冬を乗り越え、ようやく その顔を出し、春の息吹を感じる季節になりました。 新入生の皆様、この度はご入学おめでとうございます。 在校生一同、心よりお慶び申し上げます。
 これから、義肢装具学科の皆様は3年間、言語聴覚学科、 視覚障害学科、手話通訳学科、そしてリハビリテーション 体育学科の皆様は2年間、この学院において勉学に励む ことになります。入学式を迎えて、皆様はどのような心境 でしょうか?去年の今頃、私は初めての関東での生活の 始まりに胸を躍らせていたのをよく覚えています。
 これから授業が始まりますが、各学科とも非常に忙しく、 時間に追われる学院生活が待っていると思います。 なかなか六本木に通うことも出来ません。
 それどころか近場の所沢にも通えません。忙しい 学院生活ですが、苦しい時間をともに乗り越えていく 素晴らしい仲間達、常に適切なアドバイスをしてくれる 頼り甲斐のある先生方、学院生活を支えてくれている 職員の皆様、そして我々の成長を温かく見守ってく れている家族・・・。私達の学院生活は、様々な方々に 支えられて成り立っています。この感謝の気持ちを忘れる ことなくこれから勉学に励んでいくことで、将来的には 障害者のリハビリテーションの分野において貢献する 能力を身につけることが出来ると思います。
 特に、このセンターは身体に障害のある人々に対する リハビリテーションを、一貫した体系のもとに総合的に 実施しており、教育機関のみにとどまらず、病院や 更生訓練所、研究所などが隣接されています。
 皆様の行動次第では様々な障害を持った方と実際に 接することが可能であり、教室で学んだことを実際の 現場において自分の目で確認できたり、教科書では学ぶ ことが出来ないことを経験することが出来ます。 そして、障害を持った方と接することで、一人の人間 として学ぶべきこともたくさんあると思います。 これからの学院生活、何事も積極的にアクションを 起こしていくことをお勧めします。
 最後になりますが、我が学院は大学などと比較 すると非常に少ない学生数ですが、だからこそ皆で 力を合わせてがんばっていければと思い、歓迎の 言葉とさせていただきます。』

平成15年度学院入学式 リハ体育学科2年佐々木君による歓迎の言葉


 次に厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長 上田茂様、日本言語聴覚士協会会長藤田郁代様など からいただいた祝電披露を行いました。最後に 出席した幹部職員を紹介して終了しました。

 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長祝電
『国立身体障害者リハビリテーションセンター学院 に晴れて入学された皆様、おめでとうございます。
 これから本学院で、身体障害者のリハビリテーション に関する専門的な理論及び技術をしっかりと身につけて いただき、将来、各地域において先導的、指導的役割を 果たし、ひいては、障害者の自立と社会参加を推進して いくことを期待しております。
 どうぞ健康に留意されながら一生懸命頑張ってください。
 平成15年4月3日
  厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長
  上田 茂』

 以下、各学科の新入生の寸描などを紹介します。

 言語聴覚学科
 昨年とうって変わって、今年は満開の桜に迎えられて の入学式。言語聴覚学科には25期生(2年制12期生) 30名の新入生が入りました。平均年齢は25歳。
北は岩手県から南は沖縄まで、大学新卒者、大学院 修了生、元会社員、元先生、既婚者と出身も経歴も 様々です。昨年は6名いた男性も今年は例年通りの 3名と少ないのですが、委員長、副委員長は共に 男性がなり、早くもしっかりとその存在をアピール しています。とても積極的で意欲的、はつらつとした 印象のスタートです。過密スケジュールですが、 その前向きな姿勢を持ち続け、元気に2年間を 過ごして欲しいと願っています。

 義肢装具学科
 義肢装具学科は22期生10名が入学し、新学期が スタートしました。新入生は男性6名、女性4名で 平均年齢が27.1歳と大変高くなっています。高校卒 の課程ですがほとんどが大学あるいは大学院卒で、 また、大半が社会人経験者です。出身地は関東より 西ばかりで東北や北海道はいません。専攻をみると どういう訳か美術系が3名もおり、他は工学、農学、 教育、社会科学系などです。先日、上級生主催の 新入生歓迎コンパが開催されましたが大変な盛り 上がりで、学院に入学できた実感を十分味わって いるようでした。お互いに磨き合い、良い雰囲気 のクラスになって欲しいと期待しています。

 視覚障害学科
 平成15年度、視覚障害学科には12名の新入生を 迎えました。内訳はRBには珍しく、男性7名、 女性5名と男性が多い学年となりました。平均 年齢は25.9歳と前年度並み。また、今年度の特徴 としては新卒者2名と前年度同様少なく、何らか の社会経験がある者の入学が多い状況です。 次に大学時の専攻ですが、社会系5名、教育系2名、 その他福祉、語学、芸術、水産や農学といった違う 分野での専攻者も入っています。社会経験のある 者とそうでない者、様々な大学時の専攻など、 異種文化が混合される(?)ユニークな構成である と思われます。様々な対象者に接する我々は、 様々なバックボーンを持っている人間といかに接し てきたかが、現場に出たときの財産となります。 そういった意味では彼らがお互いに刺激しあい、 ユニークな専門職員となってくれることを願って います。

 手話通訳学科
 これまでの15名から定員が倍増し、この春、 手話通訳学科は30名の新入生を迎えました。過去 最高の人口密度で、大変にぎやかです。年齢も出身 も経歴も個性もさまざまな学生たちが、先輩たちと ともに、手話通訳者を目指して日々奮闘しています。 現在は、しっかりした基礎作りのために、毎日毎日 手話のシャワーを浴びているところです。

 リハビリテーション体育学科
 本年度の入学者は男性5名、女性5名の計10名です。 平均年齢は22.8歳で、昨年と同じです。関東出身者 が最も多く、その他は東北、中部、関西、中国、 四国、九州となっています。入学者の大多数が 保健体育の教諭免許状を取得しています。今春大学 を卒業したばかりの学生が多いなかで、職歴のある 学生も若干名います。出身地、経歴が異なる学生が 集いましたが、リハビリテーション体育の専門職員を 目指して、勉学に励んで欲しいと願っています。


学院在籍状況(平成15年4月3日現在)

(単位:人)
学科名 1学年 2学年 3学年
言語聴覚学科 30 29 - 59
義肢装具学科 10 10 8 28
視覚障害学科 12 10 - 22
手話通訳学科 31 15 - 46
リハビリテーション体育学科 10 4 - 14
93 68 8 169