視覚障害学科の概要
当学科は平成2年に厚生省告示第85号により、1年間の課程で
発足した視覚障害生活訓練専門職員養成機関です。平成11年に
現在の視覚障害学科になり、修業年限が2年間になりました。
視覚障害生活訓練専門職員とは視覚障害リハビリテーションに
関わる専門職員です。
高齢化社会と視覚障害
日本の高齢化は欧米に追従していると言われていますが、2000
年の統計では65歳以上の人口比はイタリア(18.07%)に次いで、
17.34%で世界第二位になっています(国立社会保障・人口問題
研究所「人口統計資料集2001/2002」)。加齢に伴って様々な
身体機能障害が生じやすくなりますが、視覚機能においては加齢
黄斑変性、白内障、緑内障、糖尿病性網膜症等により障害を受ける
ケースが大変多くなります。日本における失明原因の第一位は糖尿
病性網膜症で、毎年3000名が失明すると言われています。今日日本
では糖尿病が強く疑われる人が約690万人、糖尿病の可能性を否定
できない人が1370万人もいます(1997年糖尿病実態調査)。また
高齢化に伴い、骨関節疾患、心疾患、血管障害、聴覚機能低下など
様々な障害を併せ持つ人の増加が予想されます。現在身体障害者手帳
を所持している視覚障害者のうち年齢が65歳以上の人は63.8%を
占めています(厚生労働省・平成13年身体障害児・者実態調査結果)。
視覚障害リハビリテーション専門職の役割
視覚障害者は実に多様なニーズを持っています。
また、高齢の視覚障害者は前述の理由から身体機能状態が多様であり、
一層ニーズの多様化が見られます。
これまでの視覚障害リハビリテーションは施設内で行われる
ことが主流でしたが、今日では家庭に赴かなければ対応が不十分
であったり、不的確になることが多々起こりえます。例えば、
糖尿病性網膜症や緑内障等で入院し、視覚障害が残った状態で
退院しなければならない患者さんがそのまま帰宅できるかどうか
の判断は、生活環境の評価をしなければ難しいと思われます。
特に単身者の場合は慎重な判断と対応が必要です。視覚が活用
できるかできないか、どのような条件なら活用できるか、あるいは
できないか。自宅に事故に結びつく危険な箇所はないか、比較的
簡単に改善できる点がないか、補助具により生活の改善が図れるか、
何かしらの訓練が必要か等です。従って視覚障害リハビリテーシ
ョン専門職は視覚障害をもった人のニーズを的確に把握し、環境
改善、補助具の選定、補助具の使用指導、環境適応のための訓練、
応用訓練などのサービスがあらゆる場所で提供できる人材でなけ
ればなりません。視覚障害学科では、視覚障害をもつ全ての人の
QOLを改善できる援助提供者の育成を目指しています。
望まれる活躍の場
現在視覚障害者リハビリテーションサービスを提供している施設、
機関、団体等は28都道府県70箇所弱です。19県にはサービス提供機関
が存在しません。また既に存在する都道府県でも、複数の資源を
活用できるのは大都市に限られてしまいます。また、これらの
施設等のうち69%が訪問による訓練を実施していますが、必ずしも
予算に裏付けされた事業としてサービスが提供されているわけ
ではなく、十分な活動ができているとは言い難い現状があります。
緊急なニーズに対応するためには視聴覚障害者情報提供施設
(点字図書館)や身体障害者福祉センター等への専門職の配置が
望まれます。障害者生活訓練・コミュニケーション支援等事業、
障害者の明るいくらし促進事業、市町村障害者生活支援事業などの
担い手として活躍しうる人材を、当視覚障害学科では養成しています。