〔随 想〕
「かた身の狭い」愛煙家
更生訓練所 指導部長 山内 保孝



 健康増進法の5月施行に伴い、愛煙家には「かたみの狭い」思い をしいられている。特に官公庁では喫煙コナーが設けられ、休み 時間ともなろうものなら多くの愛煙家が集まり、煙、もくもくと 決していい環境ではないと思っているが、この一服が美味しくて なかなか止められぬ。
 小生も愛煙家歴30年をとおに過ぎている。おそらく肺の中は ドロドロ、ベタベタであろう。
 小生の愛煙歴を振り返るに、中学校の初めだったろうか、当時 親父がヘビースモーカーで、タバコに火をつけ持っていく機会も 増え、それがいつしか親父に渡すころには半分ぐらいになってい ただろうか。それには理由がある。当時は自動販売機もなく、 タバコ屋まで遠く買いだめして、それを親父に高値で譲り小遣い 稼ぎをするのが楽しみであった。それが、今ではすっかりタバコ と縁が切れなくなってしまった。何度か止めようと挑戦してみるが、 なかなか、その夢が報われない。やはり意志の弱さだろうか?
 今、日本の至るところで、喫煙の制限を行っている。この沿線の 西武鉄道のプラットホーム、昨年、10月に全国初めて罰則付きの路上 禁煙条例が東京都千代田区で施行され、その効果を発揮している。 また、仙台市の青葉区でも一部、「歩行禁煙モデルストリート」に 指定される予定だ。さらに福岡市においても、「モラル・マナー条例」 がこの8月から施行され、天神・博多駅前地区など10月以降、路上 での喫煙を全面的に禁止する予定だ。山崎市長も罰則の適用に ついては、「モラル・マナーは市民が自然に身につけ、お互いが 注意し合うかたちが本来のあり方だと思う」としながらも「効果が 上がらなければ(罰則適用を)考えなければならない」と語っている。
 このように、歩きタバコ、ポイ捨ての追放運動が各地で序々に 出始めている。このことは我々愛煙家がマナー・ルールを守ることが 出来ない為に起こりうる問題でもある。確かに、言われてみれば私も 時々口にくわえタバコを吸いながら歩くことがある。決して誉められ たものではない。
 一方、健康影響についても、タバコ煙の構成物質は約4000種類とも 言われ、その中にはnitrosoamine類に代表される発ガン物質を含む 多くの有害物質が含まれていることが知られている。免疫研究の平山氏 によると「六府県コホート研究」や「米国公衆衛生総監報告書」など 評価の高い免疫研究が、喫煙による発がんリスクの上昇等の健康に対 する悪影響を指摘している。また、実験に基づく報告によると、喫煙 は認識能力、情報処理能力、短期記憶を促進するとも伝えられている。 そのせいだろうか、最近、覚えが悪くなってきている。
 愛煙家のそれぞれはこうした健康に対する害を承知で吸い続けている。 タバコ税についても税負担率が6割でもっとも負担率の多い商品の 一つでもある。それでも止められぬ喫煙は中毒症状であり、「かたみ の狭い」思いを捨て、喫煙に対する健康影響、マナー、税負担などに ついて再度、考えを改めなければならいと感じている。が・・・