〔更生訓練所情報〕
平成15年度国立更生援護施設
理療科教官研修会を終えて
理療教育部 教官 加藤 麦



 去る7月28日(月)から8月1日(金)までの5日間、厚生 労働省との共催で「国立身体障害者更生援護施設理療科教官研修会」 が開催されました。当センター理療教育部の教官をはじめ、函館 視力障害センターから2名、塩原視力障害センターから5名、神戸 視力障害センターから3名、福岡視力障害センターから3名の先生 方が参加されました。また、今回も聴講として2日目に病棟看護師 や研究所職員の方々の参加もありました。
 今年度は会場を学院の大研修室をメインとして開催し、実技が 行われた4日目のみ更生訓練所にて開催しました。これは会場設営 の簡便化を図り、多様化している講演に関する視聴覚機器に迅速に 対応できることを目的として選定しました。
 今年度は、研修会中期計画に基づき病理学・老年医学・東洋医学 臨床論の各分野を中心としたプログラムを計画し、「長寿社会に 活かす理療施術」というテーマを掲げ、基礎医学から臨床、さらに 教育までと幅広い内容を盛り込んだものとなりました。
 まず理療教育に関するものとして、1日目に「理療教育の動向− 視覚障害者の教育と課題−」としてシンポジウムを開催しました。 全国盲学校長会会長の皆川先生より盲学校の現状と課題、あはき師 国家試験評価委員の芦野教官より国家試験の現状と課題、理療教育部 の竹之内部長より国立リハセンター理療教育課程の現状と課題に ついて報告され、今後の特別支援教育の在り方や理療教育課程の 今後、盲学校と国立更生援護施設との関係についてディスカッション が交わされました。また、2日目の午後には分科会形式で「鍼実技 の衛生管理」、「電子カルテの導入」、「事務処理のIT化」の3つ について各センターの実情を報告していただきました。さらに3日目 には鍼灸教育でも積極的に導入されている客観的臨床能力試験(OSCE) の体験学習を東京衛生学園専門学校の先生方のご協力により開催 しました。視覚障害者を対象としたOSCEについては、まだ盲学校の 一部で始められたばかりであり、まずOSCEとはどういうものなのか ということについて体験することを目的に、参加者全員で医療面接・ 身体診察・技術評価について体験しました。視力の関係上、晴眼校で 用いられているものをそのまま視力センターに導入することの問題点、 それに対する改善策などをある程度浮き彫りにすることができ、これ からの理療教育に活かされて行くことと思っております。
 基礎医学分野としては2日目の午前に筑波大学の飯島先生をお迎えし、 「高齢者の病理と臨床」を豊富なデータをもとにわかりやすい説明を していただきました。また、午後からは新潟大学の安保先生による 「白血球の自律神経支配」の講演があり、安保先生独特の口調で長年 の研究生活から証明された理論を、日常生活を例にあげながら天候や 食物、精神活動などと自律神経の関係、その結果としての顆粒球と リンパ球の比率の変化、さらに疾病の発生までお話いただき、非常に 興味深い内容でした。
 臨床医学分野としては4日目に臨床研修を中心とした実技実習を 行いました。分科会形式でリーブ東久留米マッサージルーム院長の 廣橋先生による「タイ古式マッサージ」と杏林堂院長の小川先生に よる「高齢者の鍼灸治療」に分かれ、それぞれ講義を受けた後に 参加者がお互いに実技を行い、新たな技術の習得に汗だくになりながら 和気あいあいと行われていたのが印象的でした。また、最終日には 北京中医薬大学の邱先生による「中医学的診断と食養生」についての 講演があり、中医師として活躍されている邱先生の臨床での実践的な 診断方法や日本人に多くみられる体質の特徴などについてお話して いただきました。また、後半にはグループに分かれ東洋医学的診断 である脈診と舌診についての体験学習もあり、参加者と邱先生が それぞれ診断して一致するかどうかということも行い、日本の理療 臨床に沿った中医学的診断を紹介していただきました。
 今回の研修会参加者は若い先生方が多く、積極的で質疑応答も 活発に行われていました。この熱意で、研修会で得たものをこれから の理療教育に反映していただきたいと思います。最後に学院をはじめ 関係職員の方々のご協力に深謝いたします。

理療科教官研修会の様子 理療科教官研修会 実技実習