第6回国際アビリンピック(インド大会)に参加して
更生訓練所 指導部 指導課 渡邉 雅浩



 第6回目の国際アビリンピック大会が、平成15年11月23日から の7日間にわたり、インド共和国の首都ニューデリーにおいて、 インドアビリンピック協会の主催により開催されました。今大会 は、世界34ヶ国から選手団と関係者約1,500人が参加し、25種目 の職業技能競技、8種目の生活余暇技能競技、国際会議やデモ ンストレーションなどの各種行事が行われました。日本選手団は、 選手25名、役員22名、医師・看護師ほか11名を合わせた58名が 参加し、その内、当センターからは、医師として谷津先生、 看護師として田村さん、斎藤さん、手話通訳として渡邉の4名が 参加しました。
 国際アビリンピックは、1981年の国際障害者年を記念して、 東京で第1回大会が開催されて以来、「障害者の職業的自立の 意識を喚起するとともに、事業主及び社会一般の理解と認識を 深め、さらに国際親善を図ること」を目的として、東京・ コロンビア・オーストラリア・チェコ共和国でそれぞれ開かれ てきました。
 今大会期間中ニューデリーは、季節的には乾季で雨が全く 降らず、昼間は半袖、夜間は長袖で過ごしやすく、街のいたる ところで結婚式、お祭り、パーティーや選挙パレードが行われ おり、とても活気ある雰囲気でした。しかし、ブルーテントで 生活をする人々、物乞いをする下半身がマヒした子供らを見て、 現地で生活している日本人の方から人々の暮らしぶりについて お話を伺って、貧富の差が激しいことを実感すると同時に 生きることへの力強さと頼もしさを持ち合わせている社会である と感じました。
 文化の違いなのでしょうか大会競技も含め、インド共和国で とても印象に残った言葉は、「No problem」でした。例えば、 日本では競技の課題に禁止事項が書かれてあれば、それを守ら ない競技選手は、失格となる感覚が当たり前と思うのですが、 ある競技では、課題に使用禁止と書かれている道具を使っている 国の選手を見かけてインドの審判に抗議しても「No problem (些細なことだから気にしない。支障はない。)」と一言。 その上、日本選手も慣れない場所で、古くて日本では使われな いような材料や用具を渡されて、きれいな物と替えてほしいと 審判に言うと「No problem」と言われ、なかなか良い結果へ 結び付けることが出来なかったことなど様々なエピソードが あり、とても印象深いフレーズとなりました。


競技に取組む選手の様子 競技の様子

 このような状況の下、日本選手団の成績は、メダル3個 (銀2個、銅1個)。その内、当センターの修了者の安田恭望 さん(肢体不自由修了者・種目:英文ワープロ)、荘司俊哉さん (肢体不自由修了者・種目:CAD製図)が見事に銀メダルを獲得 しました。日本選手団にとっての吉報であると同時に当センター の修了生が2名ともメダルをとったという誇りにも似た感動を 覚えました。メダルにとどかなかった選手も、日ごろから職場等 で職業技術を培い、国内で行われた職業技能競技大会を勝ち抜き、 さらに今大会の参加選手となって、「日々の仕事はもちろんの こと、余暇時間を使って本大会に向けて調整を進めてきた。 負けたのは実力がなかったからだ。また、チャンスがあれば参加 したい。」とのコメントを何人からもお伺いし、平成19年に日本 で開催される第7回国際アビリンピック静岡大会での日本選手の 活躍が今からとても楽しみなこととなりました。
 今大会の大きな目的である国際親善についても、競技中は ライバルですが、競技が終わると各国の選手や参加者の方とも 和やかに交流を深める機会に数多く恵まれ、とりわけ、私は日本 選手の聴覚障害の方と常に一緒に行動していましたので、いろ いろな国の聴覚障害の方と身振りでコミュニケーションし、 インドのインタプリターの方ともお話が出来て、とても有意義な 時を過ごすことが出来ました。是非、皆様も一度インド共和国 で異文化交流をされては如何でしょうかお勧め致します。
 最後に今大会の参加にあたり、日本選手団・国際障害者技能 交流協会をはじめ、種々の皆様にご協力をいただきました。 この場をお借りしまして、感謝申し上げます。


国際アビリンピックの様子 日本選手団と当センター関係者