〔学院情報〕
平成15年度 言語聴覚士研修会を終えて
学院事務室 執筆:研修副担当
学院 言語聴覚学科 教官 下嶋哲也



 平成15年度言語聴覚士研修会を、11月26日(水)から28日(金) までの3日間にわたって開催いたしました。本研修会は昨年度 から衣替えをし、新たに「言語聴覚士研修会」としてスタートし、 本年度はその二回目ということになります。
 今回は、テーマとして「発達障害とコミュニケーション援助」 を取り上げました。昨年度の研修会後のアンケートでは、「発達 障害を取り上げて欲しい」、「小児のコミュニケーション指導に ついて知りたい」といった声が聞かれ、ニーズの高いことが予想 されました。そこで今回、「STは発達障害児者に対して長期的な 視点を持って援助をしていくことが重要である」という視点を 加えてプログラムを構成し、定員を50名まで拡大しました。 実際の参加者は61名で、定員を上回りました。参加者の半数強は 経験年数3年以下の言語聴覚士であり、若いSTの研修に対する ニーズの高さが推測されました。一方、経験20年以上の参加者も 多いこともふまえ、現任者に対する研修の重要性を認識しました。
 内容は、「人間の生涯とはどのようなものか」、「コミュニ ケーションとは何か」といった基本的かつ重要な理論についての 講義に始まり、学齢期の発達障害児に対するアプローチ、成人期 の発達障害者に対するアプローチについて、知的障害・広汎性 発達障害、肢体不自由を中心に、包括的かつ長期的にとらえる 視点が紹介されました。発達障害を持つ子どもが成人していく 過程のなかには、幼児通園施設、幼稚園・保育園、学校、通所 施設、作業所、職場といったさまざまな場面があります。発達 障害児者が、それぞれの場面においてコミュニケーションに ついての問題をもちながらも、ST含め多職種の援助を受けながら それぞれに発達していくことを、研修会の各講義を通して共有 できたように思います。
 講師の先生方のお話は、いずれも豊富な資料をもとにした 具体的な内容でした。シンポジウムも事前のアンケートをもとに 作成した資料を用意したことで、参加者の方々から積極的な意見 を伺うことができ、充実した研修会になりました。テーマの明確 な研修会についての満足度は高く、多くの方々から感謝と今後へ の期待の言葉をいただくことができました。
 ここに、ご協力いただきましたすべての方々に心よりの御礼を 申し上げますとともに、参加された方々が本研修会で得た成果を 臨床で大いに活用されますことを祈念いたします。様々な職場で STを行っている現任者どうしが情報を共有していくことの重要性 と、研修会開催の意義についても示唆的なものを得られた研修会 でした。

言語聴覚士研修会の様子 シンポジウムの様子


平成15年度 言語聴覚士研修会日程表

テーマ:発達障害とコミュニケーション援助
月日 午前 午後
11月
26日
(水)
開講式・オリエンテーション
(センター紹介ビデオ放映)
(9:40-10:40)
1.生涯発達概論
(10:45-12:15)
沖縄県立看護大学
学長  上田 禮子
2.コミュニケーションの発達概論
(13:30-15:00)
京都大学 総合人間学部 人間科学系
教授      鯨岡 峻
3.発達障害児者の医療的問題
(15:15-16:45)
(社)発達協会 王子クリニック
院長      石崎 朝世
27日
(木)
4.学齢期におけるSTの実践
(9:00-10:30)
多摩教育委員会 指導室
長岡 恵理
5.成人期の知的障害者等に対するSTの実践
(10:45-12:15)
日本福祉教育専門学校
言語聴覚療法学科 本間 慎治
6.成人期の肢体不自由者等に対するSTの実践
−重症心身障害児者へのAAC手段を用いた
  援助の仕方とその意義について−
(13:30-15:00)
東京小児療育病院 言語聴覚科
高泉 喜昭
7.発達障害による言語とコミュニケーションの障害
(15:15-16:45)
国立身体障害者リハビリテーションセンター病院
主任言語聴能訓練専門職 倉井 成子
28日
(金)
8.知的障害・広汎性発達障害に対する援助の長期的展望
(9:00-10:30)
北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科
言語聴覚療法専攻  助教授  石田 宏代
9.肢体不自由・重症心身障害児者に
  対する援助の長期的展望
(10:45-12:15)
 都立北療育医療センター 訓練科
主任技術員   高見 葉津
10.シンポジウム
(13:30-16:15)
 発達障害に対するSTアプローチの課題
 「報 告」
  (司会)
国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
教官        下嶋 哲也
 「ディスカッション」
北里大学                 石田 宏代
都立北療育医療センター       高見 葉津
国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
倉井 成子
閉講式
(16:15-16:30)