平成15年度 新成人を祝う会
更生訓練所 指導部 指導課



 国立身体障害者リハビリテーションセンターと国立職業リハビ リテーションセンターの合同主催で「平成15年度新成人を祝う会」 が平成16年1月19日(月)に開催されました。
 今回の新成人は、昭和58年4月2日から昭和59年4月1日まで に誕生した方が対象で一般リハビリテーション課程肢体不自由の 方8名、聴覚障害の方4名、内部障害の方1名、生活訓練課程に 入所している方1名そして職リハハローワークコースの聴覚障害 の方2名の計16名でした。
 祝う会では、国リハ佐藤総長、職リハ苅部所長、理療教育課程 入所者自治会会長から新成人への祝辞が述べられたあと、更生 訓練所長、職リハ次長より記念品の贈呈が行われました。
 また、新成人を代表して、肢体99期恩田明菜さん、聴覚75期 田中雄太さん、内部14期幡野真一さんよりお礼の言葉があり、 新成人をむかえこれからの決意を新たにしていました。


新成人おめでとう
−新成人をむかえた皆さん−
恩田 明菜さん(肢体99期) 石川 和哉さん(肢体99期)
宮崎 允務さん(肢体97期) 渡邉 謙治さん(肢体99期)
長井 美香さん(肢体97期) 坂井田聖乃さん(肢体97期)
佐藤  淳さん(聴覚78期) 山本 ゆいさん(聴覚75期)
幡野 真一さん(内部14期) 川田 祐美さん(肢体97期)
渡部 孝之さん(聴覚73期) 光野  誠さん(ハローワークコース)
大貫 章裕さん(肢体100期) 上沢 康幸さん(ハローワークコース)
田中 雄太さん(聴覚75期) 中村秩加香さん(生活訓練)

平成15年度新成人を祝う会 祝辞 平成15年度新成人を祝う会 記念品の贈呈 平成15年度新成人を祝う会



 
新成人を祝う会における祝辞
国立身体障害者リハビリテーションセンター 総長 佐藤徳太郎



 皆さんこんにちは。この度、成人式を迎えられた皆さん、成人 おめでとうございます。
 私は、皆さんが更生訓練の道を選択されていることは素晴らし いことであると思っています。
 それは、多くの仲間との関わり、先生方の指導、新しい技術 獲得への挑戦などを通して、皆さん自身の人間性と能力を高める 日々を送っておられることにあります。皆さんは、これまでの20 年間、それぞれに努力され、またご家族等の支援も頂き、この 訓練の道を選択され、まさに、社会への船出の直前にあります。 このような時に、センターにおいて成人式を迎えられたことの 感慨は特別であろうと思います。よしやるぞと決意を新たにして おられることと思います。
 また、皆さんはには大きな可能性があることも確かです。
 最近、「私が口を開けば神経の再生」と言われかねないのです が、これまで、脳は再生しないと考えられていたものが否定され、 脳は日々新しい組織を作っていけることが分かり、そのことが、 非常に希望のもてることだからです。
 ここで、1つ、鳥の啼き声の話をしたいと思います。
 美しい鳥の声、求愛のための啼き声が美しいほど求愛が成功 するのだそうで、自然淘汰によって、求愛の声の美しい鳥が残って きていることになります。さて、この啼き声を出す部分を「酸化 ストレス」という特殊な方法で傷害すると、啼き声に障害が出て、 しばらくすると回復してくることが明らかにされました。その研究 では、傷害されたところが新しい神経細胞によって修復されたもの と結論付けております。
 この例のように、我々の脳は日々変化しうる、単に技術習得や 記憶だけでなく、心の持ちよう、性格も変わりうる、その基本に 脳におけるネットワークの再生が関係しているということになる ようです。
 ところで、記憶に関係する神経を新しく作る細胞は、若い動物 の脳では多く、年取ったものの20倍と多いこと、ストレスを加え るとその数が明らかに少なくなることなども示されています。 皆さんは、コンピューターなどの機器の使い方をマスターする にはあまり苦労しないでしょう。年齢が進むにつれて難しくなり、 私はいつも若い人がうらやましいと思っております。
 このように、皆さんの年代は、知識や技術の習得、人間性を 高めるのに大変適しております。磨けば光ると言われますが、 皆さんの年代では、素晴らしい進歩が期待できます。成人式を 迎えられた皆さんの頃が、その可能性の非常に大きい時期です。
 ここで重要なことは、失敗の経験を多くしないことです。 失敗から学べと言うことも正しいのですが、知識や技術を習得 する時期には、分からないことは人に聞くことをためらわず、 できるだけ失敗せず、また次に進みたいと思うよな状況を作る ことを工夫することが大切です。自分で自分を励ましながら、 着実にチャレンジして行くことが重要です。
 その先でどのような日本の社会が皆さんを迎えるでしょうか。 確実なことの1つに、人口動態があります。今、日本の総人口は 増加から減少に方向転換しました。高齢化が進む中での人口の 減少ですので、労働人口の減少は急速です。そのことは、皆さん の活躍の場が大きく、皆さんの技術とエネルギーに負うところが 大きくなります。どうぞ、自分の知識と技能、さらには自立心を 高めるように努力を続けてください。
 皆さんが成人式を迎えられ、今後の発展を期待して、私の挨拶 と致します。




 
新成人を祝う会における祝辞
国立職業リハビリテーションセンター 所長 苅部 隆



 今回新たに成人となられた16名の皆さんに心からお祝いを申し 上げます。
 皆さんは成人となったわけですから、成人の意味をあらためて よく考えていただきたいと思います。小学館の国語大辞典では、 このように書いてあります。
 成人とは、
 1 幼い者が成長すること。また、成長した子ども。
 2 おとなになること。成年に達すること。現在、わが国では、 満20歳以上の者をいう。

 この2番目の意味を受けて、国民の祝日である成人の日は、満 20歳の成年に達した男女を祝福する日となっています。そして、 成年については、人が完全な行為能力を取得する年齢。わが国の 民法では満20歳。というように書かれております。
 未成年者は判断能力が不完全ということで制限されております が、成年に達しますと、判断能力があるとみなされて単独で契約 などの法律上の行為を行えますし、選挙権も与えられます。未成 年者には禁じられている飲酒や喫煙も可能となりますが、その代 わりに、犯罪を起こした場合には、少年としての保護もなくなり ます。保護者から自立した一人前の社会人とみなされるわけです。
 自立した社会人にとって重要なことは、自分の言動に責任を 持つということと、自分の力で生活ができるようになるという ことであります。いままでのような未成年だから子どもだからと いった甘えは許されなくなります。厳しい社会ですが、努力して 結果や実績を出せばきちんと評価して認めてくれます。
 英語やフランス語などの外国語では、主語と動詞、目的語が はっきりしています。たとえば、親は子どもを守る、あるいは、 国は未成年者を守る、という文章の中では、皆さんはいわば目的 語の存在であります。成人になるということは、これまで目的語 だった皆さんが、今度は主語の存在となって家族や社会を守って いく、税金によって援助される側から働いて税金を払う側に回る ということであります。主語の役割の重さと面白さを認識し、 自分の可能性を信じて訓練に励んでいただきたいと思います。
 冒頭で述べた辞書には、成人の意味について、3番目にこう 書いてありました。
 「知徳がそなわり人格がすぐれた人。思慮分別をわきまえた人。」
 21世紀の日本を支えていく皆さんが、そのような立派な成人と なっていただくことを心から期待するとともに、今後のご健康と ご活躍を祈っております。