〔学院情報〕
平成15年度 介助犬訓練者研修会を終えて
学院事務室



 去る2月2日(月)から6日(金)までの5日間にわたり、 当学院において、「平成15年度介助犬訓練者研修会」を開催し、 盛会裡のうちに修了しましたので、ご紹介いたします。
 この研修会は、「身体障害者補助犬法」(平成14年法律第49号) が同年10月1日から施行されたことに伴い、当学院が行う23種類 にわたる研修事業の1つとして、今年度から新規に予算化された ものであって、記念すべき第1回目の介助犬訓練者研修会として、 別添1の開催要綱に基づき、 別添2のカリキュラムにより実施されたものであります。
 このカリキュラムは、当学院が行う他の研修会と異なり、 本研修会が身体障害者補助犬に関する新たな分野であることに 鑑み、あらかじめ、厚生労働本省において学識経験者、補助犬の 育成団体及び使用者で構成する「介助犬訓練者研修カリキュラム 検討委員会」を設置してとりまとめた「介助犬訓練者研修カリ キュラム」に沿って策定されたものであります。
 また、各講師の先生方も、厚生労働本省や関係団体などの ご支援・ご協力を賜り、各々の分野における第1人者とも言う べき方々に委嘱することができたところであります。
 その結果、介助犬訓練事業団体、聴導犬訓練事業団体等から、 受講予定定員20名のところ、5割増の30名の受講申込みがあり ました。当学院では、今回の研修会は座学を中心としたもので あることから、申込者全員の受け入れが可能と判断して、受講生 30名で開講いたしました。より多くの訓練者に対して、その要望 どおり、研修を受講していただくことができて、効果的・効率的 な研修が実施できたものと存じます。
 研修会初日の冒頭に行った開講式においては、当センター佐藤 総長から、下記のとおり挨拶があり ました。
 今回の研修は、盛り沢山のカリキュラムであったこともあって、 受講生にとっては、5日間という長丁場のハードなものであった と思われますが、いずれの受講生も、各々の講義において、熱心 に耳を傾けたり、一生懸命にノートをとられていました。また、 時には、講師の先生に対して熱気溢れる質問を行うなど、本研修 に積極的に取り組まれている様子がとても印象的でした。
 研修会の最終日に、各研修生にご協力頂いた匿名のアンケート 調査結果によれば、「宿舎生活の中で、研修生同志、有意義な 情報交換ができた。」などとの回答が寄せられ、おおむね良好 という評価を得ることができました。
 受講生の皆様方が、今回の研修会で得られた成果を全国各地に 持ち帰られ、それぞれの現場において、この成果を大いに活用 され、益々ご活躍されますよう祈念しております。
 最後に、平成16年度の本研修会は、介助犬のみならず聴導犬の 訓練者にも受講対象者を拡大して実施する予定であります。今回 の研修にも増して、多くの訓練者の皆様方が受講されますよう お待ちしております。




 
総長挨拶全文
 



 皆様おはようございます。只今、司会者の方から平成15年度と いうこういうご案内がありましたけれども、もう一つの言い方を しますと第1回の研修会ということになります。
 補助犬法が成立しましたのは、一昨年10月と思っております けれども、その2カ月後には、新しい身体障害者基本計画が策定 されておりまして、その主題とするところは、共生社会でござい ます。共生社会、これは、障害を持たれる方々に、積極的に社会 参加していただき、障害あるなしに関わらず共生していこうとい う主旨でございまして、この補助犬法もそれの主旨に沿っている と思うわけでございます。
 今日皆さんにご出席いただきましたこの我々のセンターで ございますが、病院又は更生訓練所におきまして、身体障害者に 対する実際のサービスを提供いたしております。また、研究所に おきましては、そのサービスの手法等について新しい技術開発等 を行い、学院におきましては、このような研修会及び色々のリハ 関連職種の養成を行っております。そのような中で、我々の実際 のサービス実践の経験又は研究の成果をお伝えすることが、学院 で行われる研修会の意義でございまして、平成15年度には、いく つかの新しい研修テーマが加えられ、ほとんど毎週研修会を開い ております。
 新しい研修会の中には、今話題となっております高次脳機能 障害に関するものであるとか、身体障害者更生相談所に関係する もの等がございますが、その中の一つとして、この介助犬訓練者 研修会がスタートして、先程もうしあげましたように、今回が 第1回になるわけでございます。
 本センターの学院におきます研修事業では、できるだけセンター の中で担当できる部分は担当するようにしておりますけれども、 全国に正しい知識・技術を普及するという意味では、センター外 の方々の協力を大きく仰がなければならないというところもござ います。特にこの介助犬については、最初のことでもあります ので、各方面から色んなご意見をいただきながら、現在我国に おいて、この分野でオーソドックスなといいますか、標準的な 講習会としてはこれがいいだろうというものを、担当職員が非常 に努力して組んだものと考えております。今回は、介助犬という ことでございますけれども、補助犬ということでいいますと、 三種類の補助犬があって、日本に導入されてから60年以上になる 盲導犬と最近始まりました聴導犬及び介助犬では、その歴史又は 背景は非常に違うことがあろうかと思います。一方で、共通する ものとして、犬の一般的な訓練であるとか、健康管理であるとか があると思います。本日は、最初であることもあって、講義の中 には介助犬だけではなく、全ての補助犬に関する講義、それから 身体障害や社会福祉に関する部分もございますけれども、是非 この研修会を通して、先程申しあげました共生社会の実現のため に、またこの分野の発展に、寄与できればと思う次第でございます。
 介助犬の訓練は、始まって間もないと思いますけれども、身体 障害者がもっているニーズは何であるかというところがまず最初 にあろうかと思います。身体障害者について、例えば肢体不自由 についても、その方の持っている日常の生活パターンというもの には、それぞれに違いがありましょうし、また、その方の住んで おる生活環境がそれぞれに違う訳でございます。さらに、障害の 程度又は障害の部位等にも違いがある、その人が目指す社会活動 についても、その企業に行く又は学習する又は家庭で生活をする、 色んなものがあろうと思います。また、それを受け入れる社会も 色々とバラエティに富んでいると思います。
 そういうところに介助犬が介入するという時に、そのニーズと いう言葉の中には多くの側面があろうと思いますので、それを 介助犬に訓練していくということは、並大抵のものでは無いと 思います。そういう意味で、皆様が今始められているこの分野の 活動は、今後のために非常に大事なものであろうと思います。
 補助犬として、どのような犬が最も適切であるかという犬の 選択も、また難しい事だというふうに聞いております。
 その選択のために、遺伝子分析をすることによってこの犬は、 適する、適さないというようなことを判別する研究も始まって おるように聞いておりますけれども、何と言いましても遺伝子 分析によって、どれが良い悪いということを判断する為の 「良い、悪い」は、皆様方が訓練された介助犬が、現場でどの ように活動しておるかとういう、そのことが基本になろうと 思いますので、そういう意味も含めて、この分野が良い方向に 発展していくために、皆様方のご努力が非常に貴重なものと なろうと思います。
 皆様のその道標となるようなものが、今回の研修会において 提供される事を祈念いたしまして、開会にあたっての御挨拶と させていただきます。どうぞこの一週間頑張っていただきたい と思います。


総長挨拶の様子 講師 木村佳友先生とパートナーのシンシア





(別添 1)
 
平成15年度 介助犬訓練者研修会実施要綱
 



1 目  的
   介助犬の訓練に従事している者を対象として、訓練に必要 な専門的知識及び技術を習得させ、その資質の向上を図ることに より、適切かつ効果的な業務の運営に寄与することを目的とする。

2 主  催
   国立身体障害者リハビリテーションセンター

3 期  間
   平成16年2月2日(月)〜2月6日(金)

4 場  所
   国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
  (埼玉県所沢市並木4丁目1番地)

5 受入定員
   20名

6 受講資格
   介助犬の訓練に従事している者で、所属長の推薦する者。

7 受講手続
   受講希望者は、別紙(1)受講申込書を国立身体障害者リハビリ テーションセンター学院係あて、平成16年1月16日(金)までに必着で 送付すること。

8 受講決定
   申込者が受入定員を超え大多数の場合には、選考のうえ 受講者を決定する。選考の結果は、1月23日(金)までに所属長 に通知する。

9 研修内容
   別紙日程表のとおり。

10 研修会費用
   23,000円(初日に徴収する。なお宿泊費及び、食費は含まない。)

11 修了証書
   研修会修了者に対し、修了証書を授与する。

12 宿泊施設
 @ 本センターの研修用宿泊施設に宿泊を希望する者は、別紙 (2)宿泊申込書により申し込むこと。
 A 宿泊費用一泊1,250円(初日に、宿泊日数分を徴収する。) ただし、宿泊は研修会初日(2月2日)からとし、初日の研修終了 後の入舎となる。
 B 食費は、各自負担とする。

13 その他
   本研修会に関する照会については、国立身体障害者リハ ビリテーションセンター学院係あて連絡のこと。

〒359-8555 埼玉県所沢市並木4丁目1番地
  国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
   TEL 04-2995-3100(内線2612)
   FAX 04-2996-0966




(別添 2)
平成15年度介助犬訓練者研修会日程表

月日 午前 午後
2月
2日
(月)
開講式・オリエンテーション
(9:00-9:30)
1.身体障害者補助犬法の概要
(9:30-10:30)
 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
企画課社会参加推進室 補佐 竹垣 守
2.社会福祉法の概要と身体障害者福祉論
(10:40-12:10)
日本社会事業大学社会事業研究所
教授    植村 英晴
3.障害者福祉の動向
(13:20-14:50)
 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
 企画課 障害福祉専門官 石渡 博幸
4.身体障害者リハビリテーション論(総論)
(15:00-16:30)
 国際医療福祉リハビリテーションセンター
 身体障害者療護施設 那須野療護園
施設長     初山 泰弘
センター案内ビデオ放映
(16:30-17:00)
3日
(火)
5.介助犬と作業療法
(9:00-12:00)
 名古屋大学医学部保健学科
作業療法学専攻 助教授 原 和子
6.身体障害者リハビリテーション論(各論)
(13:00-16:00)
 横浜市立大学医学部附属
  市民総合医療センター
リハビリテーション科 教授   安藤 徳彦
4日
(水)
7.介助犬と理学療法
(9:00-12:00)
 青木記念病院
PT科長   野口 博美
 兵庫県立総合リハビリテーションセンター
リハビリ療法部 理学療法士  神沢 信行
8.自立生活とエンパワーメント
(13:00-16:00)
 (社)全国脊髄損傷者連合会
副理事長  成瀬 正次
9.盲導犬について
(16:10-17:40)
(財) 中部盲導犬協会盲導犬訓練センター
所長  河西 光
5日
(木)
10.聴導犬について
(9:00-10:30)
 (福)日本聴導犬協会
会長  有馬 もと
11.介助犬について
(10:40-12:10)
介助犬訓練者に求められる、その実際と展望
 −身体障害者補助犬法に基づく
 介助犬訓練者の役割と実際−
 本介助犬アカデミー/横浜市立大学医学部
付属病院リハビリテーション科  高蛛@友子
12.補助犬の健康管理及び行動学等
(13:10-17:50)
(13:10-14:40)
 「ヒューマン・アニマル・ボンド
と狂犬病予防法、動物愛護法」
 (社)日本動物病院福祉協会
常任アドバイザー  柴内 裕子
(14:50-17:50)
 「健康管理並びに行動学各論」
国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所
障害福祉研究部 特別研究員  水越 美奈
6日
(金)
13.不特定多数の利用施設からの報告
(9:00-10:30)
〔司会〕
 日本社会事業大学 社会事業研究所
教授  植村 英晴
(発表者)
 京王プラザホテル宿泊部
副部長  中村 孝夫
 ダイエー営業企画本部
消費者サービス部 部長  高嶋 啓一
14.介助犬使用者の経験報告
(10:40-12:10)
〔司会〕
 日本社会事業大学 社会事業研究所
教授  植村 英晴
(発表者:10:40〜11:25)
 日本介助犬使用者の会
事務局長  木村 佳友
(発表者:11:25〜12:10)
 NPO 法人
  トータルケアアシスタントドッグセンター
代表  清水 れい子
15.介助犬の訓練について
(13:10-17:10)
(基礎訓練、介助動作訓練、合同訓練等)
 全受講者の発表と情報・意見交換
〔座長〕
 日本社会事業大学 社会事業研究所
教授  植村 英晴
閉講式
(17:10-17:30)