〔学院情報〕
平成15年度学院卒業式
学 院



 去る3月9日(火)の10時から、当センター学院講堂において、厚生労働省社会・援護 局障害保健福祉部企画課 片石修三国立施設管理室長を始め、多数のご来賓や当センター の幹部職員のご参列をいただいて、平成15年度学院卒業式を開催しました。
 式典では、開会の冒頭、当センターの佐藤総長より卒業生一人一人に卒業証書の授与が 行われた後、牛山学院長が式辞を述べました。(別記1)
 次に、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課 片石国立施設管理室長が厚生 労働大臣の祝辞を代読されました。(別記2)
 その後、当センター佐藤総長が祝辞を述べられました。(別記3)
 引き続き、来賓紹介及び祝電披露が行われた後、手話通訳学科1年の小田部家成君が、 卒業生を送ることばを述べました。(別記4)
 これを受けて、卒業生61名を代表して、言語聴覚学科2年の坂田和実さんが、卒業生の 別れのことばを述べました。(別記5)
 最後に、蛍の光の斉唱をした後、卒業生を出席者全員の拍手によりお送りし、卒業式を 終了しました。
あでやかな袴姿の卒業生も散見されるなど、おごそかな中にも華やかさが印象に残る 卒業式でした。
 卒業生の皆様方のご活躍を祈ります。



平成15年度 学院卒業式 卒業証書授与の様子(1) 卒業証書授与の様子(2)



(別記1)
学 院 長 式 辞
 


未熟のうちから
 平成16年3月、本日卒業の学院5科61名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
 2週間前には寒桜が咲いたという便りが伊豆半島から届きましたが、今年は3月に 入って雪がちらつき、「春は名のみの風の寒さや」という歌のごとくの昨日今日です。 私は昨年9月に学院長になり、初めて卒業式に臨席する機会を得て感慨を新たにしており ます。2004年3月、閏年の今月を以って皆さんは学院を去ることになりますが、学院との 縁は切れることはありません。仕事を通じてまた情報交換の場所として、これから新たな 学院との関係が始まります。ここ所沢市は皆さんお気づきのように緑が多くセンターには 花の咲く木がたくさんあります。再び皆さんがここに参集するときは、私たちのみならず それらも温かく迎えてくれることと思います。 さて、皆さんが社会に出て行くにあたり、僭越ではありますが一言申し述べます。
 それはものの上手になるにはどうしたらよいかということであります。
 「名人と名をなした人でも始めは下手という聞えあり」と徒然草にあります。
 「未熟のうちから上手の人の中に混じって、けなされても笑われても恥ずかしがらずに 精進すれば、必ず、世の中の大家として万人の師となる」と吉田兼好は言っております。
 名人になる手始めとして我々の世界で新人は1例報告をします。稀な症例や教訓的な 症例を発表するのであります。次に対象を拡大した報告、研究に入ります。始めは先輩 から指示されますが、次第にだれも指示しなくなります。この時に、自ら問題を見出し、 進んで発表しそれを続ければ、ものの上手になるという教えであります。当然、そのとき、 批判を受けます。けなされても笑われても恥ずかしがらずに行うということはそれ相応の 困難を伴いますが、立ち止まることなく持続してこれを行えば、器用でも何もしない人 よりも上手くなり最期には人に認められ、名人の域に達するのであります。年月を越えて 残っている先人の言葉は今もなお光るものがあります。未熟のうちから批判を糧とし、 笑われても恥ずかしがらずに自分の経験や調査の結果を発表し、人に認められる存在に なっていただきたいと思います。
 簡単ではありますが、これを持ちまして私の「はなむけ(餞)の言葉」といたします。

 平成16年3月9日
  国立身体障害者リハビリテーションセンター
学院長 牛山 武久



牛山 学院長式辞



(別記2)
厚 生 労 働 大 臣 祝 辞
 


 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院の卒業式に当たり、一言お祝いを申し 上げます。
 本日卒業される皆様、誠におめでとうございます。
 皆様方は、当学院に入学されて以来、たゆみない努力を積み重ねてこられました。これ までの皆様方の日々の努力に対し、深く敬意を表しますとともに、新たな出発に当たり、 心からお祝いの言葉をお贈りします。
 これから、皆様方は、障害者のリハビリテーションを始め、保健・福祉・医療分野の 専門職として、全国各地において活躍されることになります。
 皆様方には、常に、当学院の卒業生としての誇りと自信を持ち、これまでに培ってこら れた知識と技能を十分に発揮されるとともに、当学院を卒業され全国各地で活躍されて いる多くの諸先輩方に続き、地域社会で信頼される専門技術者として、今後とも、一層の 研鑚を重ねられ、障害者の福祉の増進に、御尽力いただくことを期待しております。
 厚生労働省としましても、国民誰もが人格と個性を尊重し、相互に支え合う共生社会の 実現に向けて、新しい障害者基本計画及び新障害者プランを着実に実施し、地域生活を 支えるサービス基盤の整備を進めるなど、障害者の方々の自立と社会参加が一層推進 されるよう、全力を挙げて取り組んで参ります。
 終わりに、本日御出席の御来賓の方々を始め、関係者の皆様には、日頃より、当学院の 運営について、温かい御理解と御協力をいただいていることに対しまして、厚く御礼申し 上げますとともに、今後とも一層の御支援を賜りますようお願い申し上げまして、お祝い の言葉といたします。



 平成16年3月9日
厚生労働大臣 坂口 力



坂口厚生労働大臣祝辞



(別記3)
総 長 祝 辞
 


 春の気配が感じられる頃となり、本日、国立身体障害者リハビリテーションセンター 学院の卒業式を迎え、61名の方々をお送りする日となりました。
 本日は、ご多忙中のところ、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課国立施設 管理室片石室長様を始め多くの関係者のご出席を頂き、大変有り難うございます。
 卒業される皆さん、これまでそれぞれの過程を修め、ここに修了の時を迎えられました。
 おめでとうございます。また、教官を始め、養成に関わられた皆さんご苦労様でした。
 卒業される多くの方々が、医療・福祉の職場、あるいは医療・福祉関連の会社に就職が 決まっているようですが、サービス現場での情報の取り方について、お話ししておきます。
 医療機器も進歩して、心電図の所見を判断する機械の精度は上がっております。 コンピューターはパターン認識に優れておりますので、記録された心電図の異常な パターンを正確に読み取ることが出来ます。しかし、現在のところ、心臓病の診断や病状 の判断までも機械に任せることは出来ておりません。その理由は、診断では、直接の診察 による表情の変化や症状の詳細な確認などが必要であるからです。
 それと同じ様なことですが、現在は、携帯電話やインターネットなど、話し言葉、書き 言葉のいずれについても、容易に情報交換出来るようになっております。
 しかし、病院や福祉施設、その他の職場においても、対話によって、生の情報を得ること が基本です。
 たとえ、十分な資料が書類としてあったとしても、自分の観察によって確認する事を お勧めします。
 また、他の部門からの情報を上手く採ることも重要です。たとえば、STのケースが作業 療法を受けているとすれば、作業療法の訓練場面をのぞいてみることによって、それが 数分の短い時間であっても、貴重な情報が得られることがあります。
 いまお話ししたことは、簡単なことではありますが、個人の選択が重視され、また、 人々の価値基準が益々多様になっている時代には、極めて重要なことです。
 さて、当学院でも、この現場主義的な教育が重視されていたことと思います。病院や 更生訓練所などで、失語や聴覚障害、切断、視覚障害、脊髄損傷等々のケースに総合的 リハビリテーションサービスを提供し、研究所においては、リハビリテーション技術等の 開発・研究を行っております。その現場を皆さんの教育に活用し、知識を伝えております ので、皆さんは、教科書的なことだけではなく、実践的な教育を受けられたと考えて おります。
 そのような教育を受けた皆さんは、この国立身体障害者リハビリテーションセンターの 卒業生である誇りを持たれ、各領域の指導者として、また、パイオニアとして、大いに 活躍されることをご期待し、祝辞といたします。

 平成16年3月9日
  国立身体障害者リハビリテーションセンター
総長 佐藤 徳太郎



佐藤総長祝辞



(別記4)
送 る こ と ば
 


 冬の寒さも和らぎ始め、学院前の桜も花開こうとしています。
 本日ここに各学科を修了し、晴れてご卒業の日を迎えられた皆様に、在校生を代表して 心よりお祝い申し上げます。長いようであっという間の学院生活もいよいよ最後の1 ページとなりました。入学されてから今日までの四季折々の充実した日々が、いま走馬燈 のように思い出されることでしょう。
 今日ここに居られる61名の皆様方は、言語聴覚、義肢装具、視覚障害、手話通訳、 リハビリテーション体育といった社会的使命を持つそれぞれの専門分野で、たくさんの 技術と知識を修得されたことと思います。密度の濃いカリキュラムの中で培われたものは、 素晴らしい一生の財産となることでしょう。また実技、実習、発表と、時間が足りない ほど多忙な生活や自身の力不足と未熟さに悩んだこともあったかもしれません。その ような時、壁を乗り越えることができたのは、指導してくださった先生方、先輩方、 そして共に学んだ仲間達の存在が大きかったのではないかと思います。特にこの学院は 全国から様々なキャリアとキャラクターを持った方々が集まっています。いまこうして 同じ日に卒業を迎えることができる仲間達との偶然の出会いは、かけがえのない一生の 宝物となることでしょう。
 私達在校生も球技大会、体育祭、交流会と学科や学年の枠を越えた数少ない行事の中で 先輩方と交流し、各専門分野について知識を深めることができました。一方で、もっと 意見交換の場を持ちたかったという思いもあります。
 明日から始まるそれぞれの道でも、この学院での得がたい経験と出会いを大切にし、 互いに励まし合い、支え合いながら、誠意と熱意を持って、目標に向かって歩まれること を期待しております。実社会においても先駆者として実力を発揮され、後に続く者の手本 となっていただければと思います。現在リハビリテーションの専門分野は多岐に渡り、 それぞれの役割が重要視されています。皆様方のご活躍を待ち望んでいる人々の信頼に 応え、元気と勇気を与えて下さるよう願っています。その姿を励みに、私達も日々努力し、 頑張ります。近い将来、同じ志を持つ者として、またお目にかかれる機会を楽しみにして おります。
 皆々様の一層の御活躍と御多幸を心からお祈り申し上げ、送る言葉とさせていただきます。

 平成16年3月9日
在校生代表 手話通訳学科1年 小田部 家成



在校生代表 小田部さんによる 送る言葉



(別記5)
別 れ の こ と ば
 


 木の芽がふくらむ季節を迎えました本日、私たち61名は新たなる希望と決意を胸に学院 を卒業いたします。
 晴れてこの日を迎えることができましたのも、佐藤総長をはじめ、牛山学院長、諸先生 方、当センターの職員の方々、ならびに私たちが出会うことができました全ての方々から 賜りました、真摯で温かいご指導とご支援、そして細やかなご配慮のおかげです。卒業生 一同、厚く御礼申し上げます。
 卒業を迎えるにあたり温かいご祝辞をいただき、またご多忙の中ご来賓いただき、ご列席 賜りましたことを深く感謝申し上げます。
 学院生活をふり返りますと、縁あって全国各地から集まった仲間たちと初めて顔を 合わせた時のことが、昨日のことのように思い出されます。各学科の充実したカリキュラム の中で、私たちは日々、多くの知識、理論そして技術を学び、実習を重ねて参りました。 時には課題に追われることもございましたが、教室の窓から見える美しい富士山に心 洗われ、先生方に励まされ、そして何よりも多くの仲間たちと支え合うことで、一つずつ 乗り越えてくることができました。この学院でしかできなかった体験の全てが、私たちに とってかけがえのない財産となりました。本当に恵まれた環境の中で学院生活を送ること ができ、大変ありがたく思っております。
 在校生の皆さん、皆さんとは今日でひとまずお別れになりますが、志を同じくする者 同士、いずれ再会する機会もあると思います。その時を心待ちに、これからもお互いに がんばっていきましょう。
 明日から私たちは、それぞれに新たな第一歩を踏み出すことになります。これからの 生活に不安と期待でいっぱいですが、この学院で学んだことを胸に、凛としてスタート を切る所存です。とはいえ、私たちはまだまだ未熟で、学ぶべきこともたくさんあり ます。今後とも、諸先生方をはじめとして多くの皆様の更なるご指導やご鞭撻を賜ります よう、心よりお願い申し上げます。
 最後になりましたが、学院のますますのご発展と先生方のさらなるご活躍を祈念いたし まして、別れの言葉とさせていただきます。

 平成16年3月9日
卒業生代表 言語聴覚学科2年 坂田 和実



卒業生代表 坂田さんによる 別れのことば