〔研究所情報〕
座位保持装置部品の認定基準の策定について
研究所 福祉機器開発部  相川孝訓



 義肢装具は、「補装具の種目、受託報酬の額等に関する基準」を基にして処方されて いることはご存じだと思いますが、この基準には座位保持装置も含まれています。座位 保持装置の完成用部品は数が徐々に増えてきており、指定品目も増えてきています。 今回は、このシステムに関してお知らせしたいと思います。
 新しい完成用部品の指定を受けるためには、取り扱い業者が厚生労働省へ申請して 指定を得る必要があります。平成13年に厚生省と労働省が統合されたことにより、 審議会等についても統合・廃止が行われました。完成用部品の指定についても同様で、 厚生労働省になってからは、従来の委員会に替わって新しく義肢装具専門委員会が 組織され審議を行うことになりました。この義肢装具専門委員会で、申請された 完成用部品の指定の可否を審議します。提出された申請書類と実物のサンプルに より審議されるのですが、工学的試験評価結果とフィールドテスト結果を提出する 必要があります。義肢装具の完成用部品は規格が制定されている部品が多く、工学的 評価は実施可能で工学的試験評価結果の提出はそう困難ではありません。 これに対して、座位保持装置部品に関しては規格・基準が規定されてなく、申請された 製品が破損しないで安全に使えるかどうかについて判断することが困難でした。 座位保持装置の強度に関する規格は、国際規格ISOの技術委員会内の作業部会(ISO /TC173/SC1/WG11)において規格の策定作業が進められており、日本からも積極的に 参加していますが、規格が制定されるまでにはまだ何年か必要なようです。ただ、 フレームについては車いすの規格がISO及びJISにありますので、参考にすることは 可能です。つまり、現状では規格・基準が殆どないと言えるのですが、何のチェック もしないで指定すると危険な製品が指定されてしまう恐れがあります。何らかの工学的 試験評価の実施が必要であり、早急に規格・基準を作成する必要がありました。そこで、 厚生労働省では山内研究所長に委員長をお願いして座位保持装置の若手専門家の方々に ご協力頂き、座位保持装置の工学的評価基準に関する検討委員会を臨時に設置しました。 現在参考に出来るISOの規格原案、JIS、SGの安全基準などを参考にして基準案の たたき台を何とか作成し、委員会での審議を経て、1年という短期間で座位保持装置 部品の認定基準及び基準確認方法を作成しました。短期間での作成にも拘わらず、 基準には必要なものをほぼ盛り込むことが出来ました。完成用部品の種類別では、 頭部支持部、背支持部、座支持部、側方支持部、大腿内転防止支持部、前方体幹支持部、 前方骨盤支持部、足部支持部、構造フレーム、アームレストのそれぞれに試験が規定 されています。また個々の試験内容は、静的荷重試験、衝撃試験、繰り返し荷重試験、 耐衝撃性試験、静的安定性試験、走行耐久性試験、静止力試験、耐荷重試験、耐離脱性 試験があり、部品により規定されている試験が異なります。具体的な基準の内容に つきましては厚生労働省のホームページを参照して下さい。
 基準の作成により、工学的試験評価が実施可能になりましたが、これで終わりでは ありません。基準作成後、内容の再検討及び改訂のために、研究所福祉機器開発部 担当部門では試験機や試験用治具の開発、試験内容の確認試験を直ちに開始しました。 座位保持装置は部品の種類が多く試験の数も多くなっていますので、実際の確認作業は 大変ですが、現在、精力的に作業を進めています。
 今回、座位保持装置完成用部品の認定基準の策定について概略を説明しましたが、 説明が不十分な部分もあるかと思われます。ご質問等ございましたら福祉機器開発部、 相川または廣瀬まで遠慮なくお問い合わせ下さい。

 座位保持装置部品の認定基準及び基準確認方法
  URL http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/12/s1225-8.html