〔更生訓練所情報〕 |
平成16年度 新成人を祝う会 |
更生訓練所 指導部指導課 |
国立身体障害者リハビリテーションセンターと国立職業リハビリテーションセンターの合同主催により、
「平成16年度新成人を祝う会」が平成17年1月17日(月)に開催されました。
今回の「新成人を祝う会」では、昭和59年4月2日から昭和60年4月1日までに誕生した方で、
一般リハビリテーション課程、肢体不自由の入所者が11名、国立職業リハビリテーションセンター直接入所者
で、肢体不自由入所者が1名、職務実務コース入所者が2名、職域開発コース入所者が1名の合計15名入所者
が対象となりました。
国リハ講堂で行われた「新成人を祝う会」では、佐藤A太郎総長、職リハ市川和通所長、
理療教育課程入所者自治会代表の藤江勝正さんの祝辞が贈られた後、岩谷力更生訓練所長、
職リハ小泉万里子次長より記念品の贈呈が行われました。
新成人を代表して、肢体104期宮澤厚史さんよりお礼の言葉がありました。
新成人を祝って |
国立身体障害者リハビリテーションセンター 総長 佐藤 コ太郎 |
皆さん、成人式の時を迎えられ、おめでとうございます。皆さんはもとより、
皆さんの成長を見守ってこられたご家族も、皆さんが成人になられたことを喜んでおられることと思います。
昨年12月の障害者週間記念式典時に河合純一先生から素晴らしい講演をいただきましたが、
先生が折々に描いた夢を目標として努力した色々のドラマを聴いたことは、
皆さんの記憶に新しいことと思います。
あの講演では、目標を実現する課程で大切なことが強調されておりました。
Plan、Do、Seeという言い方がありますが、Planは希望、夢、計画であり、Doは実行、
Seeは評価です。夢に向かって努力し、その結果を自己評価し、それを基に新たな夢、
目標を描いてゆくことがその内容です。河合先生はこのサイクルを繰り返しながら、教員になり、
さらに、4回のパラリンピックで見事にメダルを獲得されております。
目標の自己決定、実行、その結果を自分の責任において正しく評価することが大切であることを、
ご自分の経験を挙げながら強調されておりましたが、このことは成人として特に大切なことです。
さて、皆さんは、職業人となるためにセンターに入所され訓練を続けておられます。
この進路を決める際には、周りの人々に色々と相談され、最後には自分で決められていると思います。
また、センターでは関係者がそれぞれに皆さんの訓練に協力して下さっておりますが、
それをどのように活かして行くかが重要であり、それを上手に活用して自分の目標を達成して下さい。
その際に、訓練を受けるのではなく、センターの機能を活用しながら自らを訓練する、そして、
自分の責任でその目標を達成して行くように心がけることが基本であろうと思います。
今年の元日の新聞に日本の人口動態の記事が大きく取り上げられておりました。
我が国においては、労働人口が大幅に減少すると予測されております。
それを裏返せば、基本的には、今後労働の機会が多くなると予想されます。
実際に、日本の労働人口はすでに減少し始めております。現在の生産年齢人口は約8500万人ですが、
2025年には7200万人となり、この度成人となられた皆さんが65歳になる2050年には、
約3000万人減って5400万人、現在の63%にも減少すると予測されております。
それを補うために外国の労働者に頼らざるを得なくなってきておりますが、
国際競争力を維持するためにはそれもある程度は必要でありましょう。
しかし、外国の安い労働力に頼ることには限界があるものと思います。その場合に、
我が国では、自分で自分の生活を維持するために、高齢者をも含めて、自らの健康を守り、
出来るだけ生産活動に参加することが重要となってきます。
求人状況にはその時々である程度の波があるとしても、今後は、現在皆さんが学んでいる職業人としての
基本や職業技術を役立てることの出来る機会が多くなります。
そして、皆さんが実際の職業に就いた後にも、その技術を高めて行く、
あるいは新しい技術を習得して行くことが必要になって参ります。
ロボットを例にしますと、ロボット技術が進歩しており、
我が国の労働力不足を補うものとして期待できそうです。先日、私はトヨタのアシモに会いました。
アシモはお辞儀などの挨拶が上手く出来るので、ジャンケンをしてみましたが、それは出来ませんでした。
出来ないというよりは、ジャンケンの機能を組み込むことは出来るが、組み込んでいなかったというのが
正しいのかもしれません。いずれ、今後は職場や日常生活において、ロボットの活躍場面が多くなると
思いますし、その他の色々の機器を利用することもますます多くなると思われます。
そのような変化にチャレンジしつつ、活躍の機会を拡大することも必要です。
最後に、皆さんが、成人になられたこの機会に、ご自分の描いている夢を再度確認され、
自己決定、自己責任、自己評価によって、一歩、一歩目標を実現して行かれることを期待して私からの
お祝いの挨拶といたします。
新成人を祝う会祝辞 |
国立職業リハビリテーションセンター 所長 市川 和通 |
成人おめでとうございます。
さて、改めて成人ってなんだろうって考えてみると、社会的に一人前の大人として認められて、
選挙権も得られるし、晴れてお酒も飲めるようになって・・・色々あるとは思うのですが、
わざわざ成人式という形でお祝いをするというのは、『成人=一人前の社会人』になったことの自覚を
していただこうという趣旨があるものと思われます(にもかかわらず、成人式自体が荒れたりといった、
本来の趣旨とは正反対の動きがよく見られたりしますが・・・)。
では、一人前の社会人としての自覚ということですが、具体的にどうすれば自覚したことになるのか、
なかなか分かりにくいものがあります。
そこで、自覚することへの近道とか方法ってないのだろうかって、考えてみました。
そして、『支える側に回る』というのも、そのひとつの方法・考え方ではないかと思いました。
誰でもそうなのですが、人は支えられて生きています。人はひとりで生きているのではなく、
生まれてから死ぬまで何らかの形で人に支えられて生きています。
このことは、生まれてきた赤ん坊をイメージすれば、すぐに納得できると思いますが、
いつの間にかそのことを忘れたりしてしまっている人も多いのかも知れません。
皆さんは、支えられているということについて日常的に実感する機会が少し多いのかも知れませんし、
多分、実際に多くの支えによって生きてきてこられたのだと思います。
この『人は支えられて生きている』ということを前提として、成人を迎える意味を考えたとき、
『これからは、支える側に回る』ということが連想されてこないでしょうか。
もちろん、これからも、支えられるところはたくさんあるわけで、
支える側だけに立てるものではないのですが、少しでも支える側に回る、支える量を多くするよう
意識的に行動する・・・これが、社会的に一人前になるということのひとつの自覚の仕方だと思われますし、
なにより、自分も、世の中も、前進させていくものではないでしょうか。
支える部分を増やす具体的な行動には、色々なものがあると思います。国リハ、職リハで学ぶ
皆さんにとっての目標である『就職』、『働くこと』も、お金を稼いで家計を助けるという身近で
直接的なことから、税金を納める、社会的な生産活動に参加する等々、
様々な面で支える側に回ることができる大きな手段です。
この例は、今取り組んでいることが、そのまま支える面を増やすことにつながるものですが、
日常の様々な面で、支える量を増やす取り組みというのは様々な形で見つけることができるはずです。
成人の日を機に、このことを意識して自分の行動をチェックしてみる・・・意義のあることではないでしょうか。
こうした取り組みを積み重ねていかれることも含め、成人を迎えられた皆さんが、
社会人としてしっかりご活躍いただくことを心よりお祈り申し上げ、お祝いの言葉とします。