[病院情報]
平成16年度 国立更生援護施設看護師
研修会を終えて
病院看護部  堀 房子
古田佳奈代



 平成17年2月3日(木)から4日(金)の2日間、国立更生援護施設看護師研修会が当 センター本館4階中会議室において開催されました。この研修会は看護・保健サービスの 質向上を目的に、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課国立施設管理室により3 年ごとに開催されています。
 今回は8施設から保健指導専門職、看護職13名が参加し、教科毎、各部門の専門職者も 聴講させていただきました。参加施設名は国立函館視力障害センター、国立塩原視力障害 センター、国立神戸視力障害センター、国立福岡視力障害センター、国立伊東重度障害セ ンター、国立別府重度障害センター、国立秩父学園、国立身体障害者リハビリテーション センター病院の8施設です。
 前回は平成14年2月に開催され、当時は措置制度から利用契約制度に、また、支援費制 度へ移行する時であり、選ばれる施設運営を目指しサービスの質向上への対応を図るため に、どの施設もハード面、ソフト面の充実に向け準備がなされておりました。看護職もよ り質の高い看護・保健サービスを提供するための取り組みや課題を考え学び、施設に持ち 帰り業務に活かしてきたと思います。
 さて、諸々の変革期にある今、各施設において利用者の障害が重度化・多様化し様々な ケアニーズがあります。そこで今回は、福祉・医療の課題や動向及び現場の研修ニーズを 踏まえ、最新の知識の教授、カウンセリングの実技、中でも精神疾患や環境不適応症状等 により、訓練や生活に障害をきたしている方々への対応の難しさがしばしば経験されてい ることから、これについては現状と課題の事前レポートにまとめ、講義を踏まえた意見交 換などをとおして課題解決に役立つようにと研修は企画されました。
 また、各講師とも第一線で活躍されている方々により最新の内容を教授していただきま した。
 医療は日進月歩であり、参加者は今回の学びを今後の業務に活かしていくことと思いま す。当院から参加した看護師古田佳奈代の研修会の感想を掲載します。なお、懇親会には 各部門よりご参加いただき、旧交を暖め、情報交換の場としても有意義であったと思いま す。お世話になりました皆様に感謝申し上げます。



研修会の様子 その1


研修会の様子 その2


〔感想〕
 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課国立施設管理室の主催で今回の研修会が開 催された。8つの施設の中で6施設からは1名ずつの参加で、国立秩父学園からは2名、当 院からは5名の参加であり、大変貴重な研修会に参加させていただいたことを有難く感じた。 そして、研修会の目的である看護の質の向上にふさわしい講師、講義内容であった。どの講 義も内容が凝縮されており、さらに詳しく聞きたいという思いがあり、講義時間が短くさえ 感じた。
 阿部光教先生による「障害保健福祉制度改革と国立施設運営の課題について」は平成17年 2月10日に国会で議論される障害者自立支援法(仮称)について、その概要、現行と新体系 で何が異なるのかという講義であった。福祉サービスの一元化、障害者の就労を福祉側から 支援、身近な所でサービスが受けられるようにする、手続きや基準の透明化・明確化、増大 する福祉費用を皆で負担するという改革のねらいとそのための具体案というまさに、最新の 障害者福祉の改革について学ぶことができた。
 品川博二先生による「入院・入所者に対するカウンセリングについて」はケア・カウンセ リングという初めて聞く言葉から始まり、ケアとは何かという投げかけがあった。私たちは キリスト教の考え方、つまり、「神への感謝の気持ちを最も身近な看護の対象者に向ける」 という考え方で看護を習ってはいるが実際に行っているのは療養上の世話になっている。ケ アとはやさしさで、やさしい気持ちが大切というお話だった。しかし、看護師は人の欠点、 不足したところを見つけるのは慣れているが、良い点を見つけ、褒めることは下手であると 指摘された。演習で肯定メッセージを送ることを行ってみたが、結果そのとおりであった。 「本人の外見ではなく態度・性格・行動パターンなど内面的な良い点を想像してほめる。演 出・誇張は良いが、嘘をついてはならない」このことは、是非実行していきたいと考えてい る。
 中里栄介先生による「感染症対策」については感染症予防策の基本を改めて学んだ。知識 があっても実践しなければ無意味であり、まずはスタンダードプリコーションを徹底してい きたいと思う。感染症は急減したものが多いが死因の4位は肺炎であり、世界中で振興感染 症や、再興感染症の発生があり、情報を知り、適切な対応が必要ということがわかった。
 佐藤A太郎総長による「最新の医療動向と糖尿病について」はエビデンスに基づいた医学、 診療のガイドラインの作成、糖尿病診療の概要、糖尿病診療ガイドラインについてのお話だ った。糖尿病患者の治療に関わる中、体重の増加、浮腫の出現、低血糖発作という症状はよ く見られるが、エビデンスに基づいた関わりを私達看護師もしていかなければならないこと を学んだ。
 井上裕司先生による「医療安全の取り組みについて」は厚生労働省による最新の医療安全 の取り組みについて知ることができた。2000年より、医療過誤をテーマにした報道が急増し、 医療訴訟は年間約1000件、毎年7〜9%増であるという、医療事故事例、ヒヤリハットを情 報収集・分析・情報提供し事故を未然に防ぐための試みを知ることができた。更なる医療安 全支援センター設置が望まれるが、医療に関わる一人一人が安全・安心・質の向上を心がけ ていかなければならないことを再認識した。
 浦上裕子先生による「精神疾患を持つ入院・入所者への対応について」は脳血管障害と脊 髄損傷における急性期後のリハビリテーションの過程と生活訓練や社会適応における心理的 反応に対する対応・支援についての講義であった。総合失調症、気分障害、人格障害、解離 性障害、不安障害、適応障害について詳しい説明があり、薬物療法を行う前に環境調整や適 切の対応を行うことを学んだ。そして、緊急時には早急な診断と適切な病院で治療を開始す ることが必要になることを学んだ。
 「精神科疾患を持つ入院・入所者への対応」について研修者14名を2グループに分けグル ープディスカッションを行った。ここでは施設に勤める者、病院に勤める者で抱えている問 題が異なることに気が付いた。施設では介護者、指導員が対象者の生活に関わり、その中で 看護師と他職種との連携が取れていないことが大きな問題となっていた。例えば「看護師が 不在時の与薬を他職種に依頼するが断られる。」「正しい内服がされているか確認できない。」 ということが挙げられた。一方病院では薬の管理は看護師が24時間いるため管理できている が訓練以外のレクリエーションや活動の関わりをどのようにしたらよいかとう問題が挙がっ た。挙げられた問題をまとめると、@医療システムの問題、Aマンパワー不足、B他職種・ 他病院との連携があげられた。今後さらに精神障害を持つ対象者は増えることが予測され、 看護師だけでなく対象者に関わる職員すべてと協力して関わっていかなけらばならないとい うことが話し合われた。
 今回の研修では何よりも当センター以外の施設の方と情報交換ができたことが大きな成果 であったと思います。大変有意義な研修であったことを感謝申し上げます。



平成16年度看護師研修会日程


2月3日 (木)
時   間 講  義  内  容  等
10:00 〜 10:30 開講
 挨拶
  厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
           企画課国立施設管理室長           金井  博
  国立身体障害者リハビリテーションセンター病院看護部長      堀  房子
10:30 〜 12:00 講義1
 「障害保健福祉制度改革と国立施設運営の課題について」
  厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
         企画課国立施設管理室長補佐          阿部 光教
12:00 〜 13:00 昼食
13:00 〜 15:00 講義2
 「入院・入所者に対するカウンセリングについて」
  NPO法人日本ケア・カウンセリング協会代表理事      品川 博二
15:00 〜 15:10 休憩
15:10 〜 17:00 講義3
 「感染症対策について」
  厚生労働省健康局結核感染症課
            国際感染症情報専門官            中里 栄介


2月4日 (金)
時   間 講  義  内  容  等
10:00 〜 11:00 講義4
 「最新の医療動向について」
  国立身体障害者リハビリテーションセンター総長            佐藤コ太郎
11:00 〜 12:00 講義5
 「医療安全への取り組みについて」
  関東信越厚生局健康福祉部医事課長             井上 裕司
12:00 〜 13:00 昼食
13:00 〜 14:30 講義6
 「精神疾患を持つ入院・入所者への対応について」
  国立身体障害者リハビリテーションセンター病院診療部
                 精神科医長              浦上 裕子
14:30 〜 14:40 休憩
14:40 〜 16:00 グループディスカッション
 「精神疾患を持つ入院・入所者への対応について」
  国立身体障害者リハビリテーションセンター病院看護部長       堀  房子
16:00 閉講