〔更生訓練所情報〕
第26回リハ並木祭を終えて
リハ並木祭実行委員会事務局



 去る10月15日(土)、第26回リハ並木祭が、国立身体障害者リハビリテーシ ョンセンター(以下「国リハ」)と国立職業リハビリテーションセンター(以 下「職リハ」)のそれぞれの会場で開催されました。天候は曇りでしたが、最 後まで雨に降られることもなく実施することができました。

(写真)テーマ最優秀作品で表彰される臼杵初さん
テーマ最優秀作品で表彰される臼杵初さん


(写真)ポスター最優秀作品で表彰される小峰貴行さん
ポスター最優秀作品で表彰される小峰貴行さん


 今年度は、一般公開の時間を少しでも増やし、より多くの方に参加していた だくことを目的に、前日の10月14日(金)16時から開会式を開催しました。開 会式では、テーマ及びポスターの最優秀作品の表彰が行われました。テーマは、 83応募作品の中から職リハOAシステム科臼杵初さんの『大きくはばたこう 自 分の未来 世界の未来』が選ばれました。また、ポスターは12応募作品の中か ら一般リハビリテーション課程肢体107期小峰貴行さんの作品が選ばれました。  当日は、76企画と例年になく多くの参加があり、参加企画総数では、過去26 回の中でも最多となりました。入所者の訓練紹介、クラブ紹介、模擬店、恒例 となっている東京サロンオーケストラのコンサート、そして昨年度から開始し た地域の福祉施設や団体の参加も数多くありました。
 特に地域団体の参加については、所沢市のほか、狭山市、入間市にも募集を かけ、昨年度の6団体から17団体に一気に増加しました。国リハと職リハ間の 東西通路に沿い、東は陸上競技場に到るまで模擬店や地域団体のテントが並び 、多くの来場者で賑わいました。
 各模擬店とも趣向をこらしたメニューを準備し、地域団体の方々による手作 り商品の展示販売も大変好評でした。また、陸上競技場では、「ASエルフェン 狭山FC」によるサッカー教室や「NPO法人モンキーマジック」によるフリークラ イミングが大人気で、多くの家族連れが参加していました。


(写真)多くの来場者で賑わう模擬店
多くの来場者で賑わう模擬店


フリークライミング体験の試み
病院第三機能回復訓練部 主任視能訓練士 三輪 まり枝


 本年10月15日(土)「第26回国リハ並木祭」において、視覚障害をはじめと する障害者にも楽しめる新たなスポーツ「フリークライミング」の無料体験イ ベントが行われた。主催はNPO法人モンキーマジックで、フリークライミング の普及・啓発を目的として、特設ウォール(人工壁)を設置してのイベントで あった。
 フリークライミングとはロッククライミング(岩登り)の一種で、ロープで の安全は確保されているものの、前進する手段は手や足など、人間が本来持っ ている能力のみを利用するスポーツである。今回はロービジョン(Low Vision) 者にも見やすい「黒壁に白い石」を配置した白黒反転色の特注ウォールを模擬店 エリアの一端に設置し、障害者にもこのスポーツが好適であることを来場者に 目にしていただくことが出来た。
 主催者のNPO法人モンキーマジック代表、小林幸一郎氏は中途視覚障害者であ る。小林氏が当センター眼科のロービジョンクリニックを受診、その際に私が 視能訓練士として担当した。補助具の選定等で関わる中で、小林氏が視覚に障 害を持つ以前から趣味としているロッククライミングを今現在も楽しんでいるこ と、一人でも多くの障害者の方にクライミングの魅力を味わって欲しいと思って いる熱意を伺うことが出来た。その後、スポーツとは縁遠かった私自身も小林氏 が開催しているクライミングスクールでご指導を受け、ロッククライミングの魅 力にはまってしまったのである。「スクールでは、今回のような人口壁だけでは なく、自然の岩場でのクライミングも楽しんでもらっています。パソコンなどの バーチャルな現代だからこそ、もっとリアルな自然を感じて欲しい。それが一番 やりたかったことです。」と小林氏も話す。
 さて、並木祭当日はルートを2本設定し、延べ体験者数は200人をはるかに超 えた。参加者は、視覚、聴覚、重複などの障害者の方々をはじめ、一般の方は5 歳のお子さんから70歳近い方まで年齢層も幅広く参加、多くの職員にもクライミ ングの楽しさを味わっていただけたことは何よりであった。
 クライミングの順番を待っている間、登っている人がゴールに達成した時は周 囲から拍手喝采が起き、ゴールを目指している人には「あと、もう少し!」とい う激励の声も飛び交っていた。そこは障害の有無とは関係がなく皆が体験を共有 できる場となっていた。体験者の「障害があるのでロッククライミングなんて自 分には関係のないもの、と思っていました。」、「ゴールに到達したときの達成 感がすばらしかった。」と嬉しそうに話してくれる顔が印象的であった。また、 フリークライミングを趣味とする職員の方々がボランティアで運営協力をしてく れたことが、イベントを成功に導いたことを付け加えておきたい。
 モンキーマジックでは、このフリークライミングがなぜ障害者にも好適である のか、その理由をいくつか挙げている。@ロープで安全が確保されているので、 安心して思い切り体を動かすことが出来る。A他者との競争関係がないのでスピ ードを問われない。B晴眼者と同じルールで楽しむことが出来る。さらにこれら に加えて、自らが持つ力だけで目の前にある課題を解決していくということは、 日常の問題解決能力の向上に役立つという視点もある。実際に、アメリカのコロ ラド州にある全米障害者スポーツセンターでも視覚障害者のモビリティ訓練の一 環としてクライミングが位置づけられている。
障害者とフリークライミング、今までは結びつくことがほとんどなかった両者で あるが、その可能性への認知は少しずつ広がりを見せてきている。

〈問合せ〉 NPO法人モンキーマジック 
〈問合せ〉 http://www.monkeymagic.or.jp


(写真)リハ並木祭当日、陸上競技場に設置された特設ウォールでフリークライミングを楽しむ来場者
リハ並木祭当日、陸上競技場に設置された特設ウォールで
フリークライミングを楽しむ来場者


(写真)NPO法人モンキーマジックと協力職員(左から2番目が代表の小林幸一郎氏)
NPO法人モンキーマジックと協力職員
(左から2番目が代表の小林幸一郎氏)



 一方、講堂では聴覚入所者によるサンバの披露や、軽音楽部によるライブ演奏、 そして東京サロンオーケストラによるコンサートが開催されました。この東京サ ロンオーケストラの皆さまは、今年で12回目の参加となります。毎年すばらしい 演奏のほかに、入所者参加のコーナーも設けていただいております。生演奏をバ ックにした生オケコーナーでは、5名の入所者が素敵な歌声を披露してくれまし た。生活訓練課の小俣由佳さんのビオラでの共演も好評で、会場は立ち見の観客 が出るほどの大盛況となりました。


(写真)国リハ聴覚入所者によるサンバ
国リハ聴覚入所者によるサンバ



(写真)素人指揮者コーナーで指揮を取る入所者(東京サロンオーケストラ演奏会)
素人指揮者コーナーで指揮を取る入所者(東京サロンオーケストラ演奏会)


 事務局では入所者、職員、地域参加団体の方々を対象にアンケートを実施し集 約したところですが、「楽しかった」、「来年も実施して欲しい」などの意見が 目立っています。また、アンケート項目の中の、開催日程の希望については、現 在の1日開催ではなく、リハ並木祭にかける準備やセンターPR等を考えると2日 開催を希望するとの意見も多く寄せられています。
 リハ並木祭は各部署が協力し取り組む行事として、また入所者のご家族や修了 生、地域との交流の場として大変意義のあるものと考えています。開かれた施設 づくりの一環としても、今後リハ並木祭を通してさらに多くの方々との出会いが 生まれれば幸いです。
 最後に、実行委員会では、皆さまのご意見を参考に、次年度以降のリハ並木祭 のあり方を考え、より充実した催しにしていきたいと思っております。並木祭に ご尽力いただいた皆さまには、この場を借りて改めてお礼申し上げます。