〔更生訓練所情報〕 |
マルチメディアを活用した視覚障害者用教育 訓練支援システムの研究開発のための 海外(英国、スウェーデン)調査報告 |
理療教育部 教務統括官 加藤 博志 |
私は、岩谷更生訓練所長と平成17年8月28日から9月3日まで、標題の調査を
しましたのでここにその概要を報告させていただきます。
英国調査は、まず大英図書館(British Library(BL))で視覚障害者のアク
セス情報収集でしたが、国民の祝祭日のために一部開館の中でギャラリー
(Turning the Pages Gallery)にタッチパネル式のディスプレイで、音声、
画面の拡大及びページ捲りでの表示機能があり、弱視者への利用が可能と思われ
た。
次に、1868年創設の王立英国盲人援護協会(Royal National Institute for
the Blind(RNIB))を訪ね、ライブラリー製作部長などからRNIBの活動概要と
実際のDAISY製作現場などを調査しました。
RNIBは、点字出版、盲人図書館、学校及び職業能力評価など多くの事業を展開
している。出版事業は、世界各国の盲人福祉団体や施設と連携をとり、海外にも
貸出しを行うレファレンス・ライブラリーを行っている。
点字出版は1967年にコンピューター方式により300万冊以上の製版をしている。
墨字専門書はスキャナー呼込みの点字変換、製本や拡大図書(著作権、教育図書
は無条件使用可能)、DAISY図書関係はロンドン市内のセンターにおいてボランテ
ィアが製作(Easy Daisy)し、音声出力機器(CD録音図書)であるPLEXTALK,VICTOR
(わが国の仕様と若干異なる)を使用していた。
![]() BLのタッチパネル式ディスプレイ |
![]() RNIBのDAISYプリンター |
DAISYの将来計画では、技術及びオペレーターの責任者によればDAISY3(注1)
への移行は考えていないとのことであり、現在のDAISY2.02仕様(注2)の利用
で充分であるとのことである。出版工場(点字、拡大図書)は、当センター第一
体育館フロアー2個分以上の巨大作業場であったことが印象的である。
![]() RNIBの出版工場 |
![]() TPBのスタッフとのミーティング |
スウェーデンでは、国立録音点字図書館(Talboks-och punktskriftsbiblioteket
(TPB)英語略は(SRF)を調査した。
スウェーデンは、障害者の定義がなく、個人情報保護も含め数の掌握をする必
要も無く、個人の不自由さによりTalking Books(TB)のサービスが提供され、提
供判断は、学生は学内の特別支援室などの査定による。
TPBは、1955年から国の全面資金援助でTBが地方図書館と共に役割分担による貸
し出しシステムができている。90年代から点字使用者が少なくなり登録は600名程
度でユーザーの希望により点字化をしている。DAISYでは、24,000タイトルを蔵書、
機器2,000台を所有し地方図書館や1,200人の大学生に貸出し、そのほとんどはデ
ィスレクシア(注3)で視覚障害者は130人程度である。地方図書館は大学生以外
が利用し、教育制度は統合教育である。
DAISY製作では、年間10,000枚(3,000時間)を録音し、それ以外は製作会社に
委託契約しているが、ボランティアはいない。製作要望があれば対応している。
著作権処理は、7月1日の法律改正で判断を個人の利用に委ねたとのことであ
る。
DAISY製作では、基本を全てのメディアに活用できるXML-documentの使用を中心
に考え、Text、Wordなどに活用する方式で、DAISY3へは参画しているとしていた。
最後に、詳細の報告は別にするが、この機会で得た知見を研究開発に寄与でき
れば幸である。各国の関係者にこの場をお借りして謝辞を申し上げる次第である。
注1:DAISY3…Digigal Accessible Information System 製作システム。
注2:DAISY2.02仕様…DAISY CONSORTIUMで提唱し公式に推奨されているデジタル録音図書 (DTB=Digital Talking Book)には音声とタイトル要素など6種類がある。
注3:ディスレクシア(dyslexia)…失読症。