〔病院情報〕
トロント大学生体材料生体医用工学
研究所の訪問を終えて
病院 第一機能回復訓練部長 赤居 正美



 今回、厚生労働科学研究費の補助を受け、10月3日(月曜日)から11日(火 曜日)までカナダに旅行し、Institute of Biomaterials and Biomedical Eng ineering, University of Toronto(トロント大学生体材料生体医用工学研究 所)を訪問した。
 当研究所のMilos Popovic博士はリハビリテーション工学を専門とし、機能的 電気刺激を用いた機能回復トレーニングの分野における第一人者である。特に 障害者の立位姿勢保持および歩行能力向上を目指して、電気刺激等の機器を用 いる支援研究を行っている。我々の研究所でも、再生医療による脊髄の損傷部 分での軸索再生と併せて、残存脊髄機能の可塑性を研究することにより脊髄損 傷者の歩行再獲得を最終目的としたプロジェクトを動かしている。脊髄可塑性 の解明に向けた具体的な手法としては、脊髄損傷者に歩行補助具を用いるアプ ローチを用いて来ているが、以下のような検討課題がある。
 1)ヒトの脊髄に歩行パターンを自律的に生み出す能力がどの程度あるのか
 2)それは末梢からの感覚刺激に対してどの程度適応的に変化する能力がある のか
 3)その能力は上位中枢とどのような結合状態を取っているか
これらの課題に関連し、我々の研究内容の発表、意見交換と併せ、今回の出張 は、脊髄損傷者の歩行トレーニング方法・歩行パターンの計測方法などに効果 的な実験手法を調査する事により新たなリハビリテーションの方法を開発する 上で貴重な機会となった。
 たまたま10月6日には同大学において、トロント市のリハビリテーション関 連の研究発表会が開催され、ポスター展示による百数十もの発表があった。興 味深かったのは、最初に各発表に1分ずつの口頭説明(宣伝? “mad minute p resentation”と呼ばれていた)が行われ、参加者はあらかじめ面白そうな発表 をチェックするという方法が取られていたことである。ごく限られた時間内で 、全体の動向がつかめ、各種のリハビリテーションについても効果的な情報収 集が行える良い方法かもしれない。トロント大学は都心の真ん中に広大な敷地 を有する恵まれた環境にあり、過去にはインスリンの発見が行われたカナダ有 数の高等教育機関であった。(写真1)

(写真)写真1
写真1



ちょうど紅葉の時期に当たっており、週末には車で3時間ほどのアルゴンキン 国立公園を訪れた。写真に見るような紅、橙、黄色の葉に緑を交えたきれいな 景色を見るとともに(写真2)、道路端に出てきたムースにも出会うことが出 来た。(写真3)



(写真)写真2
写真2


(写真)写真3
写真3


 直行便での往復で乗り継ぎや移動の不便もなく、楽しく有意義な8日間であった。