〔病院情報〕
「ペルー共和国国立リハビリテーションセンター
建設計画」予備調査に参加して
病院 医療相談開発部長 佐久間 肇



 ペルー共和国(以下「ペルー」)は、南米大陸の西海岸沿いの中央部に位置 し、国土面積128万5000km2、人口は約2754万人、1人当たりGNPは2050米ドル である。ペルーには、何らかの障害をもつ人が861万人(31.2%)いて、その うちリハビリサービスを必要とする人が104万人(12%)、実際にリハビリサ ービスを受けた人は11万人と概算されている(2004年)。
 現在リマ市にある国立リハビリテーションセンターは、ペルーのリハビリテ ーション事業の統括機関で、全国の病院からのリハビリ診療におけるトップリ ファラル病院として位置づけられるとともに、各大学との連携の下で、リハビ リ専門職を養成する教育機関でもある。Dr.アドリアナ・レバサ・フローレス によるリマ市内の1軒家での活動が始まりで、1969年に中央政府組織に編入さ れ、1971年に、旧海軍病院施設を改修した現在の施設で業務が行われている。 組織は、精神機能障害部(学習障害科、コミュニケーション障害科、精神運動 発達障害科、知的障害・社会適応科)


(写真)初診の予約のための「待合廊下」。1カ月ごとの予約だが、予約が取れないこともある
初診の予約のための「待合廊下」。1カ月ごとの予約だが、予約が取れないこともある



と運動機能障害部(姿勢障害・切断・熱 傷科、脳中枢障害科、脊髄損傷科、運動障害・疼痛科)、入院(脊髄損傷のみ )、義肢装具作製部、診療支援部(レントゲン検査、筋電図、血液・尿検査)、 管理部門などからなり、患者数は、2004年は2万5千人(内、入院は、ベッド 数32床で130人)であった。医師58名(インターン20名を含む)、PT及びOT56名、 ST30名、心理士18名、ソーシャルワーカー18名で各科に分散、所属して活動し ている。


(写真)センターの門と玄関の間の空きスペースでも訓練
センターの門と玄関の間の空きスペースでも訓練



 今回のペルーの要請は、上記のセンターの全面移転と拡充についての日本の 無償資金協力である。計画は、既存施設の建築面積約7,400m2のところを、移転 して約19,000m2に拡張するというものであった。要請規模が非常に大きいこと から、要請背景、目的、内容等を確認した上で、無償資金協力としての妥当性 を検討し、基本設計調査を実施する際の協力の範囲および留意点を明確にする ことを目的に、今回の予備調査団が派遣されることになったものである。調査 団はJICAのペルー事務所長を団長に、JICA東京事務所の計画管理担当者、コン サルタント3名(建設/設備計画、機材計画、通訳)と私の6名である。


(写真)一番広い訓練室。各訓練科が1時間づつ交代で使用している
一番広い訓練室。各訓練科が1時間づつ交代で使用している


(写真)トイレも評価室に
トイレも評価室に



現地 調査期間は10/2〜10/25で、私は、10/16〜10/23の間の調査、協議とミニ ッツ署名までの調査に計画管理担当者とともに合流した。
 現在のセンターの訪問視察調査とコンサルタントの調査結果から、現状の施 設の拡張の必要性は明らかであり、また、改修・増築を繰り返した結果の診療 ・訓練導線は不良で、施設移転・拡充の効果は大きく見込めると判断された。 ただし、全面移転をすべて日本の無償援助で行うことは資金面で困難であり、 規模や運用状況、今後の患者数増加の見通し、必要機材の状況などを勘案し、 「運動機能障害部」を中心とした部分移転について、日本の無償援助の対象と することが適当と考えられ、ペルー側との協議の結果、この内容でミニッツ署 名となった。ペルーでは、2004年1月に、各種公共投資プロジェクトによる投 資後の運用・メンテナンスの継続性の確保を目的に、SNIP制度と呼ばれるプロ ジェクト事前評価システムが法制化され、今回の無償援助がこの制度の本格的 適応の第1号になる。したがって、ペルーでの法的手続きと日本側の計画進行 との間に内容や手続き上の齟齬が出ないようにするための調整の協議に多くの 時間が割かれた。
 南米のリハビリ状況の視察と国際協力事業への参画という貴重な経験をさせ ていただいたことに感謝したい。



(写真)ミニッツ署名後に撮影。前列左から、Dr. Pedroza保健省国際協力局交渉部長(局長代理で署名)、Dr. Rebaza初代院長、Dr. Rodriguez院長、表調査団長(JICA)。後列右から4番目が著者

ミニッツ署名後に撮影。前列左から、Dr. Pedroza保健省国際協力局交渉部長(局長代理で署名)、Dr. Rebaza初代院長、Dr. Rodriguez院長、表調査団長(JICA)。後列右から4番目が著者