〔学院情報〕
平成17年度 介助犬・聴導犬訓練者研修会を終えて
研修担当:研究所
障害福祉研究部
特別研究員 水越 美奈



 去る2月27日(月)から3月3日(金)までの5日間にわたって、平成17年 度介助犬・聴導犬訓練者研修会を開催いたしました。本研修会は、身体障害者 補助犬法の施行に伴い、平成15年度に「介助犬訓練者研修会」として介助犬訓 練者の資質向上を目的にスタートし、平成16年度からは聴導犬訓練者を対象に 行う研修会との合同開催となり、「介助犬・聴導犬訓練者研修会」と名称も改 めて実施しています。
 今年度は10施設から14名の受講者の方々が参加されました。受講者の状況は 介助犬訓練事業者から10名(7施設)、聴導犬事業者から3名(2施設)、認 定事業者から1名(1施設)と関係各分野から満遍なく参加をいただきました 。
 今回のプログラムは次頁のとおりです。本研修会は、関連法令から始まり、 障害者福祉や障害リハ関連、公衆衛生から獣医学関連まで、人と犬の両面から 多岐にわたり様々な分野から講義が行われました。今年は身体障害者補助犬法 の見直しの年であり、かつ障害者自立支援法の施行などもあり、法律等に関し ては例年以上に活発な質疑応答が行われました。またこの研修会は、各事業者 間や講師と受講者間でのネットワークをつくる場や同志の再会の場になってき ているように年々感じられます。
 アンケート調査結果では、「幅広い内容で、充実していてよかった」、「ユ ーザーさんや他団体の方の話は大変勉強になった」、「福祉医療の分野から犬 の管理等について詳しい説明がありわかりやすい」などの感想や、「補助犬申 請から合格に至るまでの流れの講義」、「各補助犬の訓練方法」など、今後希 望するカリキュラムについての意見もいただきました。
 身体障害者補助犬法では、「訓練事業者は、医療を提供するもの、獣医師等 との連携を確保しつつ、これを使用しようとする身体障害者に必要とされる補 助を的確に把握し、その状況に応じた訓練を行うこと(第三条第1項)。」と あります。本研修会は、この法律の条文の理念に合致したものであり、身体障 害者に関する総合的な施設である当センターで行われることには大きな意義が あると考えます。良質な身体障害者補助犬が多くの希望者に提供できるよう、 今後もこの研修会が定着し、充実するよう願っております。
 また、本研修会の実施に際しまして、関係各位から多くのご指導とご協力を 賜り、無事終了することができましたことを心より御礼申し上げ、受講生の皆 様方が今回の研修会で得られた知識を糧にそれぞれの現場でますますご活躍さ れますことを祈念いたします。
 最後になりましたが、閉講式にあたり、当センター佐藤総長よりごあいさつ をいただきましたので、ここに紹介させていただきます。


(写真)介助犬・聴導犬訓練者研修会の様子1

(写真)介助犬・聴導犬訓練者研修会の様子2


平成17年度 介助犬・聴導犬訓練者研修会日程表

月日 午前 午後
2月
27日
(月)
開講式・オリエンテーション
(9:00〜9:30)
(1)身体障害者補助犬法の概要について
(9:30〜10:30)
 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
企画課社会参加推進室 補佐  徳永 光則
(2)社会福祉法の概要と身体障害者福祉論
(10:40〜12:10)
 日本社会事業大学大学院祉
教授  植村 英晴
(3)障害者福祉の動向
(13:20〜14:50)
 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
障害福祉課 障害福祉専門官  渡邉 雅浩
(4)体障害者リハビリテーション論(総論)
(15:00〜16:30)
 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院
診療部長  山 裕功
 センター案内ビデオ放映
(16:30〜17:00)
28日
(火)
(5)聴覚障害者の社会と文化
(9:00〜10:30)
 ―ろう文化とは― 
 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院
手話通訳学科教官  小薗江 聡
(6)聴覚障害者の医学的側面
(10:40〜12:10)
 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院
第二機能回復訓練部長  田内 光
(7)障害者の自立とエンパワーメント
(13:10〜16:50)
(7)-1(社)全国脊髄損傷者連合会
(13:10〜15:10)
副理事長  成瀬 正次
(7)-2神奈川トヨタ自動車(株)
(15:20〜16:50)
ウエルキャブ室  伊佐 幸弘
 
3月
1日
(水)
(8)聴導犬について
(9:00〜10:30)
 (福)日本聴導犬協会
会長  有馬 もと
(9)聴導犬使用者の経験報告
(10:40〜11:25)
(9)-1(福)日本聴導犬協会
聴導犬ユーザー  岸本 淑子
岸本 宗也
 国立身体障害者リハビリテーションセンター見学
(11:30〜12:10)
(9)-2聴導犬使用者タッチの会
(13:20〜14:05)
聴導犬ユーザー  細田 恵子会
(10)補助犬の健康管理及び行動学等
 「健康管理並びに行動学各論」
(14:15〜17:15)
 国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所
障害福祉研究部 特別研究員  水越 美奈
 
 
 
2日
(木)
(11)補助犬の健康管理及び行動学等
(9:00〜10:30)
 「公衆衛生学的見地からの狂犬病予防法、
 人獣共通感染症等について」
 厚生労働省健康局結核感染症課
動物由来感染症指導係長  高橋 幸子
 
(12)盲導犬について
(10:40〜12:10)
 盲導犬育成事業の現状
(財)日本盲導犬協会神奈川訓練センター
訓練部長  中村  透
 
 
 
 
 
(13)介助犬について
(13:20〜14:50)
 介助犬訓練者に求められる、その実際と展望
 ―身体障害者補助犬法に基づく介助犬訓練者の
 役割と実際―
 日本介助犬アカデミー専務理事
 /横浜市総合リハビリテーションセンター
補助犬担当  高柳 友子
(14)介助犬使用者の経験報告
(15:00〜17:00)
(14)-1千葉市障害者相談センター
(15:00〜16:00)
主事  山口 亜紀彦
(14)-2特定非営利活動法人
(16:00〜17:00)
 トータルケア・アシスタントドックセンター
代表  千葉 れい子
3日
(金)
(15)補助犬の育成に関わる補助犬法に基づく
 医療との連携
(9:00〜14:40)
(15)-1介助犬と理学療法
(9:00〜10:30)
 兵庫県立総合リハビリテーションセンター
 リハビリ療法部
理学療法士  神沢 信行
(15)-2介助犬と作業療法
(10:40〜12:10)
 聖隷クリストファー大学
 リハビリテーション学部 作業療法専攻
教授  原 和子
(15)-3障害者にとっての補助犬の必要性と
 その判断について
(13:10〜14:40)
 ―ソーシャルワーカーの立場から考える―
 横浜市総合リハビリテーションセンター
生活訓練係長  小田 芳幸
 
閉講式
(14:40〜14:50)
 
 
 
 


〔佐藤総長あいさつ〕
 皆様、この年度末のお忙しいところを、一週間の研修会に御参加いただいて ありがとうございました。
 ただいま14名の方々に修了証書をお渡しいたしましたが、皆さんは介助犬・ 聴導犬の領域にとって非常に貴重な方々でございますので、研修会の成果を今 後に活かしていただきたいと思います。
 この領域では色々の取り組みを行いながら進化している時期であろうかと思 います。この研修会も、開始して間がありませんので、当センターとしては研 修会の内容や講師陣について各方面に御相談いたしました。そして、現時点で 最も適切であろうという研修を計画いたしました。全国を見渡して最も適切な 講師に、この決められた日程の中で調整していただくのは大変なことではあり ますが、幸い今回は皆さんに御都合を付けていただき、計画通りの研修会を行 うことができました。
 研修の内容はいかがだったでしょうか。皆さんの御意見も伺って今後の研修 会に活かしていきたいと思っております。
 介助犬・聴導犬については、基本的な訓練を受けた犬が実際に赴く生活の場 ・環境というのがそれぞれ異なるであろうと思いますし、また介助犬・聴導犬を 使用される方々のニーズや性格なりにもまたそれぞれ違うものがあろうと思い ます。さらに、犬の性格や体力等にも個体差があると思います。そのようない ろいろな要素を考慮しながら上手くフィットさせることは非常に難しいことで あろうと思います。皆さんにおかれましては、介助犬・聴導犬訓練の日本のリ ーダーとして、ぜひこの領域を引っ張っていただけるように期待するとともに 、この研修会の成果が活かされることを期待いたします。
 障害者自立支援法が成立したところであり、それと共に、障害者雇用促進法 も既に成立しております。障害を持っている方々が障害を克服して社会に貢献 できる、その自分自身の活動をしっかりと確認でき、その喜びを感じられるよ うにするための改革であると思います。
 その中の就労支援にしても、就労継続支援にしても、就労という尊い行為を 多くの方々が行ないうることを目標とするものでありましょうから、介助犬や 聴導犬の力がそのような社会参加に繋がり、障害者基本法に謳われている共生 社会がさらに充実したものになることが強く望まれておると思います。皆様に は、是非、介助犬・聴導犬訓練を通して障害を持っている方々の社会参加に御 貢献いただきたいと思う次第でございます。
 センターを代表して、皆様の今後御活躍を期待しながら挨拶を終えたいと思 います。
 どうも一週間御苦労様でございました。