〔学院情報〕
平成18年度学院入学式
学院事務室



 去る4月6日(木)の10時から、当センター学院講堂において、新入生96名を迎え、平 成18年度入学式を開催しました。
 この式典では、開会の冒頭、当センターの中島学院長から式辞がありました。(別記1)
 続いて、当センターの岩谷総長より祝辞が述べられました。(別記2)
 引き続き、新入生紹介のあと、視覚障害学科2年の秋吉龍生君が、歓迎のことばを述べ ました。(別記3)
 次に厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長中谷比呂樹様などからいただいた祝電を 披露し、最後に、当日参列された当センターの幹部職員の紹介を行った後、学院歌を斉唱 して終了しました。


 以下、各学科の新入生の寸描などを紹介します。


 言語聴覚学科
 爽やかに晴れわたった空の下、桜の絨毯を踏みしめて入学した言語聴覚学科28期生は、 2年制の15期生になります。平均年齢24.5歳とフレッシュな30名が揃いました。言語聴覚 士を目指し、難関を突破した新入生の期待に溢れた表情が教室を明るくしています。28期 生からは新カリキュラムとなり、言語聴覚士に必要な臨床家としての態度や臨床的スキル 習得の充実を図ったプログラムになっています。残念ながら土曜日も講義で埋まるハード スケジュールは変わりませんが、心身の健康にも十分気をつけ、励んで欲しいと願ってい ます。


 義肢装具学科
 25期生として12名(男性7名、女性5名)が入学してきました。平均年齢23.4歳と昨年 より1歳以上若くなりました。高校新卒も何人かいて、その初々しさが目立ちます。大卒 者の専攻は体育、臨床検査、畜産、材料工学、福祉人間工学、情報科学、薬学など実にさ まざまです。既に実習授業も本格的に開始され、1年生の最初のプロジェクトとしてプラ スチック膝装具の製作が行われていますが、モノ作りという今まであまり経験したことの ない作業に新鮮さを感じているようです。しかし、だんだん難しくなるにつれこれが苦し みにも変わってきますので、それを乗り越えて義肢装具士としての高い資質を身に付けて 欲しいと願っています。


 視覚障害学科
 視覚障害学科17期生は15名(男性5名、女性10名)が入学しました。大学での専攻は相 変わらず多岐にわたりますが、文学系・社会学系・教育系の出身者が10名と過半数を占め ています。福祉系は3名と少なく、その他工学部、農学部の学生が2名となっています。
 今年の傾向として新卒者が9名と多いことが上げられます。1年生全体の平均年齢は 24.6歳です。クラスの雰囲気は若いわりには(?)非常に大人しく、厳正な選挙(じゃん けん)により選出された某有名キリスト教系大学出身のクラス委員長が独特の雰囲気を醸 し出してくれています。今後の成長に大いに期待したいと思います。がんばれ1年生!!


 手話通訳学科
 17期生として、29名(男性5名・女性24名)が入学しました。出身地は岩手県から広島 県までの1都2府11県で、新卒者もいれば社会人経験者もおり多様な色合いを醸し出して います。各人の専攻分野も福祉や医療のみならず多岐にわたっており、学生同士で知識を 深め合うことができそうです。
 初めて体験する異言語・異文化のシャワーは戸惑いと楽しさの繰り返しだと思いますが、 違いを受け入れ共感に喜びながら、お互いに支えあい励ましあい、熱い心と冷静な目、そ して人と人を結ぶ温かな手を育ててほしいと願っています。


 リハビリテーション体育学科
 16期生は男性5名、女性5名の計10名です。平均年齢は22.5歳で、昨年とほぼ同じです。 関東・甲信越出身者が最も多く、その他は東海、近畿、中国、九州となっています。入学 者の多くが保健体育の教諭免許状を取得しています。今春大学を卒業したばかりの学生が 多く、既に入所者の体育系クラブを見学するなどフットワークは軽やかです。若さと基礎 体力の高さを武器に、リハビリテーション体育の専門職員を目指して、充実した学生生活 を過ごして欲しいと願っています。



学院在籍状況(平成18年4月6日現在)

(単位:人)
学科名 1学年 2学年 3学年
言語聴覚学科 30 31 61
義肢装具学科 12 11 8 31
視覚障害学科 15 13 28
手話通訳学科 29 24 53
リハビリテーション体育学科 10 5 15
96 84 8 188


厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長祝電
 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院に晴れて入学された皆様、おめでとう ございます。これから本学院で、身体障害者のリハビリテーションに関する専門的な理論 及び技術をしっかりと身につけていただき、将来、各地域において先導的、指導的役割を 果たし、ひいては、障害者の自立と社会参加を推進していくことを期待しております。ど うぞ健康に留意されながら一生懸命頑張って下さい。

平成18年4月6日
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長
中谷比呂樹


〔別記1〕
学院長 式辞
 


 本日、この国立身体障害者リハビリテーションセンターの桜は満開です。
 新入生の皆様方ならびにご家族の方々の心の中の桜も、また満開であると思われます。 この良き日を迎えられたことを学院長として心からお祝い申し上げます。
 また、ご来賓の皆様におかれましては、年度始めでご多忙のところ、本学院の入学式に ご臨席を賜り、学院を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。
 今回の新入生の皆様の内訳は、言語聴覚学科30名、義肢装具学科12名、視覚障害学科15 名、手話通訳学科29名、リハビリテーション体育学科10名、合計96名となっています。言 語聴覚学科という学科は聴覚に障害のある方の聞き取りや発話の訓練、加えて言語に障害 のある方の言語訓練などを専門にする職員の養成にあたる学科です。義肢装具学科は手足 を切断した方のような身体に障害のある方に義肢や装具を製作し、これらをうまく適合さ せるような専門技術者を養成する学科です。視覚障害学科は視覚に障害のある方、すなわ ち目の不自由な方が生活を無理なくできるようにするための生活訓練を専門にする学科で す。手話通訳学科は聴覚障害者の手話通訳を専門とする職員養成過程です。リハビリテー ション体育学科では身体障害者のための体育やスポーツの指導を専門にする職員の養成過 程です。
 このようにご入学の皆様方はそれぞれの専門性に従って、かなり違うことを学ぶことに なるわけですが、しかしながら、障害者の役に立つ専門職になるということで共通してい ます。したがって学院は「ひとつ」であります。
 日本というこの国に体や心に障害をもつ方が6百万人を超えます。比率にすると人口の 5%ぐらいに相当します。これは20人に一人と言い換えることができます。20人に一人と いうことは、親戚まで含めた一族の中に障害をもつ方がいることは決して稀なことではあ りません。隣近所や職場まで含めると、障害をもつ方のことは誰もが経験することに近い と言えます。そればかりではありません。このような数字の指し示すことは、自分の家族 や自分自身も障害者になる可能性が決して低くはないということです。
 私たちが住んでいる社会においては、誰にとっても障害者として人生を送る可能性があ り、そのことを思えば、自分がそうなったら誰が支援してくれるのだろうかと不安になり ます。本日入学を果たされた皆様が、それぞれの分野において専門職に就かれ、ご活躍い ただけるとなれば、このような不安は間違いなく減ります。先に私は皆様方が障害者の役 に立つ専門職になるということで共通していると申し上げました。さらに一歩進んで、皆 様方は「安心して暮らせる社会」を作るということで共通しているのです。
 皆様方にはこの学院で一所懸命に勉学に励んでいただくわけですが、それぞれの学科を 学びながら、自分が社会に出て働くということがどのように社会に役立つかということを、 自分でも折に触れては考えていただきたいと思います。皆様方は「安心して暮らせる社会」 を作ることに参画するのであり、今日はその第一歩であることを述べて、お祝いの言葉と したいと思います。
 本日はご入学おめでとうございました。


平成18年4月6日
国立身体障害者リハビリテーションセンター
学院長 中島八十一


(写真)学院長 中島八十一式辞



〔別記2〕
総長祝辞
 


 皆さん、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院に入学され、おめでとうござ います。桜の花吹雪が舞う所沢に、大きな夢を抱いて集まってこられた皆さんをこの国立 身体障害者リハビリテーションセンター学院にお迎えすることを心から喜んでおります。 皆さんはこれから、ここ学院で志を達成するために2年または3年の間勉学に励んでいた だきます。皆さんは、我が国の障害を持つ人々への医療、福祉の将来を担っていただく大 切な人材であります。私たちは、ともに働く仲間として、将来を託す後継者として皆さん に知識と技術の習得を支援しつつ、力を合わせて新しい地平を開いていきたいと思ってお ります。皆さんの入学にあたり、3人の先達の言葉を紹介したいと思います。
 一人目は高木憲次先生です。高木憲次先生は我が国の肢体不自由児療育の父といわれる 方で、東京大学整形外科学教室の第2代教授でありました。昭和初期から終戦後まで整形 外科の発展に力を尽くされました。大正時代から、肢体不自由児の治療と教育に情熱を注 ぎ、家庭の奥に閉じこめられていた手足の不自由な子どもたちを、「この子どもたちは、 ただ手足が不自由なだけでしっかりとした治療と教育をすれば、社会人として自活できる」 と考え、肢体不自由児施設の建設を社会に訴え、昭和17年に東京の板橋に整肢療護園を設 立しました。その後、全国に肢体不自由児施設の建設を進め、昭和37年にすべての都道府 県に肢体不自由児施設が整備されました。高木先生は、肢体不自由児の療育に携わるもの に、「療育とは、時代の科学を総動員して肢体の不自由をできるだけ克服し、それによっ て幸いにも回復した快復能力と、残存せる能力と代償能力をできるだけ活用して、自活の 道のたつように育成することである」と述べておられます。私たちは、障害を持つ人々に 時代の最先端の知識、技術を用いて、医療、福祉サービス支援を行わなければなりません。
 二人目は、ノーマリゼーションの父とよばれるバンクー・ミッケルセンです。この方は 、デンマーク政府の行政官でありました。第2次世界大戦後、当時では知的障害者は大規 模施設に収容されて一生を送っていたのですが、そのような施設がナチスドイツの強制収 容所で行われていた人権侵害と同じことを知的障害を持つ人々に行っていたということに 気づき、ノーマリゼーションという考えを打ち出しました。ノーマリゼーションとは、そ の国の人たちがしているふつうの生活と同様な生活をする権利を持つということを意味し ます。障害がある人に障害のない人々と同じ生活条件を作り出すことをノーマリゼーショ ンといいます。ノーマライズというのは障害がある人をノーマルにすることではありませ ん。彼らの生活の条件をノーマルにすることです。ノーマルな生活条件とはその国の人が 生活している通常の生活条件のことです。この思想が今日の我が国の障害者施策の根幹と なっています。ノーマリゼーションということをしっかりと考えていただきたいと思いま す。 
 三人目はマーチン・ルーサー・キング牧師です。キング牧師は1963年8月28日「仕事と 自由のためのワシントン大行進」において、以下のような有名な演説をしました。われわ れは今日も、明日も困難に直面しているが、私はそれでもなお夢を持つ。それは、アメリ カの夢に深く根ざした夢である。私はいつの日にかこの国が立ち上がって「我らはこれら の真理を自明のもととして承認する。すなわち、すべての人は平等に造られ」という、そ の信条を生き抜くようになるであろうという夢を持っている。私は私の四人の小さなこど もたちがいつの日にか、皮膚の色でによってではなく、人格の深さによって評価される国 に住むようになるであろうという夢を持っている。
 キング牧師は肌の色によって差別されることにプロテストしました。そして、ついには 暗殺されてしまったのですが、彼の訴えたことは、人種問題を越えて、すべての差別に対 するプロテストへと発展しました。その流れの中から、障害を持つ人々の自立生活運動 (IL運動)が芽生え、やがて障害を持つ人々の脱医療、脱施設運動、当事者運動へと発展 しました。そして、今日我が国の障害者基本計画には「障害のある人もない人もともに、 尊敬しあって生きる共生社会」を目指すことが明記されております。
私たちがこの仕事を進めていく上に、当事者の皆さんとの連帯が必須であります。そのと きに、支えとなる理念はノーマリゼーションです。そして、専門職として、私たちは常に 時代の先端の知識、技能を修得していかなければなりません。
 これからの皆さんの努力を期待します。また、この学院で学ぶとともに多くの友を得て いただきたいと願っております。
 本日は入学本当におめでとうございます。


平成18年4月6日
国立身体障害者リハビリテーションセンター総長
岩谷 力

(写真)国立身体障害者リハビリテーションセンター総長 岩谷 力 祝辞



〔別記3〕
歓迎の言葉
 


 各地で豪雪をもたらした寒い冬も終わりを告げ、桜の花が美しく咲く季節になりました。
 新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。在校生一同、心よりお慶び申し上げ ます。
 全国各地から、さまざまな経歴をもつみなさんが、この所沢に集結しました。今日から は、ともにリハビリテーションの世界を志す仲間どうしです。
 明日以降、各学科において授業がはじまります。先生方は、熱心にご指導してください ます。また、どの学科でも、基礎から実習にいたるまで、密度の高いカリキュラムが組ま れています。みなさんの学ぶ意欲に、きっと応えてくれることでしょう。
 課題、実習などで帰りが遅くなることもあるでしょう。ときには、疲れを感じることが あるかもしれません。困ったときには、先生方はもとより、私たち上級生にも相談してく ださい。きっと、先輩としてアドバイスできることがあることでしょう。
 学業ばかりではありません。学院では、5月の球技大会、11月の交流会など、各学科と の交流をかねたイベントが行われます。さらに、6月の体育祭、10月の並木祭では、セン ターの職員の皆さん、入所者の皆さんと一緒に楽しむことができます。学院生活を彩るこ れらの行事は、きっと楽しい思い出になることでしょう。
 また、この広大なセンターには、病院、研究所、更生訓練所が設置されており、様々な 障害を持つ方が入所されています。学生のうちから、障害者の方と交流をもつ機会に恵ま れたこの環境を、大いに活用してください。
 私は、この1年間、障害者の方とお話する機会を数多くもつことができました。多くの 方は、辛い体験をお持ちのはずなのに、笑顔で気さくに話をしてくださいました。むしろ、 教えてもらっているのは、私たちの方だということを痛感している毎日です。みなさんも、 さまざまな出会いと体験を通して、感動する機会があることでしょう。その感動を胸にし まって、卒業時には一回り大きくなった自分を目指して頑張ってください。
 みなさんの学院生活が素敵なものになることを祈っています。
 以上、簡単ではございますが、歓迎の言葉とさせていただきます。


 平成18年4月6日
在校生代表 視覚障害学科2年
秋吉 龍生

(写真)在校生代表 視覚障害学科2年 秋吉 龍生 歓迎の言葉