〔研究所情報〕
外国人特別研究員紹介
 



 7月号に引き続き、本年度4月より研究所の外国人特別研究員として、当センターの研究業務に従事している Dmitry Sayenkoさんについてご紹介します。


(写真)Dmitry Sayenko さん

自己紹介
 私は1996年にロシア国立医科大学医学部の医科学修士課程を卒業しました。その後、モスクワ生物医学研究所 、感覚・運動生理学研究部にて、姿勢制御に対する微小重力の効果をテーマとして3年間の卒後研究課程を修了 しました。同研究所には1999年から2006年3月まで研究員として所属していました。2005年に卒後教育課程を修 了し神経内科医の免許を取得しました。また、同じく2005年に航空宇宙医学の博士号を取得しました。論文のタ イトルは“Effect of Microgravity on Characteristics of Posture Corrective Responses(姿勢補正応答特 性に対する微小重力の影響)”でした。今まで私が行なってきた研究は主に、1)微小重力環境での長期滞在に よる宇宙飛行士の運動制御能低下を防ぐ方法を生理学的側面から評価すること、および2)神経疾患患者のリハ ビリテーションの研究、を主たるターゲットとしていました。特に個人的には実際の無重力環境あるいは地球上 での模擬的微小重力環境での姿勢制御系の反応について研究してきました。これらの研究は長期間にわたって無 重力環境にさらされる宇宙飛行士や長期間寝たままの患者に生ずる種々の機能低下を防ぐ方法や、脳卒中患者、 脊損患者などの運動機能を回復させる方法の研究に役立つものであります。本年4月より、私は日本学術振興会 (JSPS)の博士取得後研究員(通称ポスドク)として来日し、当センター研究所、運動機能系障害研究部(受け 入れ研究者、中澤公孝)で研究を行っています。

来日について
私はポスドク生活を送る国として、日本を選びました。それは、日本に滞在することで、一流の専門知識や技術 を持った研究者と会えること、そして世界に知られる高度なテクノロジーを持った日本のハードウェアを使用で きることの、2つの機会を得ることが出来ると信じたからです。そして、実際に私がここで見たものは、私の予 想を更に上回るものでした。私が現在ともに楽しく仕事をしている仲間の科学者は、本当に素晴らしい人間であ るとともに優秀な研究者です。私は彼らの精密さと研究能力に本当に感銘を受けています。また、私がこのセン ターで見た実験機材は実際に“ハイテク”であり、しかも独創的でした。世界中をみても、このようなハイテク と独創性の両面を備えた研究室は、運動機能研究に関わる中でも本当に少ないはずです。しかし、最も素晴らし いのは、研究室のメンバーがたいへん親切であるとともに、私に対して、またメンバー相互に暖かく友好的な関 係を築いている点です。私は、ロシアで、日本の研究室では主任研究者(chief professor)が部下を本当に気遣 い、まるで父親か兄のように接することを聞いていました。しかし中澤先生の接し方は、私にとってそれ以上の ものでした。私は本当に彼の助けに感謝しています。
 私が日本に居るもうひとつの理由。それは、日本の文化、特に詩と小説に長いこと興味を持っていたからです 。これらの芸術作品はロシアでは良く知られていますし、多くのロシアの人々が古典(清少納言、松尾芭蕉、鴨 長明など)や近代文学(芥川龍之介、村上光など)の日本の文学作品を読む機会に魅了され興味を持っています 。ですから、私の好きな作家たちが描いていた国や人々を自分自身の目で見たり、彼らの母国に私自身が居ると いうことを感じることは、とても興味深く光栄なことです。
 私は本当に日本での生活を楽しんでいます。ここは人々がお互いに敬意を表しあう安全な社会です。そして、 私はここに居られて、本当に幸せです。