〔巻頭言〕 |
卒業の先に希望が見える |
更生訓練所理療教育部長 杉江 勝憲 |
理療教育部長に就任して3年が終ろうとしています。この間で印象に残っていることの一つに、就任して1年が過ぎようとした頃
の「理療教育部の運営に関する委員会」の立ち上げがあります。6人の教官からなる委員会でしたが、1ヶ月半という短い期間に夜
遅くまで情熱的に理療教育部の今後を語り続けた彼らの横顔が今でも脳裏に残っています。このときに考え出されたコンセプトが
「卒業の先に希望が見える・自信回復のプログラム」で、オブザーバーとして参加していました私の心を捉えました。理療教育課程
(就労支援・養成施設)で勉学に日々努力を重ねている利用者にとって、卒業の先に希望が見えることが何よりも大事で、この課題
を実現することが私を含め理療教育に携わる職員の使命と素直に感じられたからであります。このコンセプトが考えられた背景には
晴眼者と競合する中途視覚障害者理療師(あはき師)の厳しい現実があります。この8年間に晴眼者を対象とする鍼灸師の養成学校
数は2.8倍、学生数で1,758人から6,052人と3.4倍に増加しています。卒業した先に厳しい競争社会が待ち受けていて、そこにどう希
望の光を見出すべきかの討論が真剣になされました。具体的な取り組み内容は次回の「更生訓練所だより」に寄稿しましたので、そ
れをお読みいただくとして、結論のいくつかが@「ICFの考え方に基づく全人的評価と学習適応のための個別支援」・・サポートチー
ムによる個別支援の強化など、A「有能で人間性の豊かな理療師を育成するための教育プログラム・・いわゆる国リハブランドの確
立」・・現在の課程を臨床にコアした手技療法科と東洋療法科に再編、臨床専攻学科(臨床研修コース)1年課程の設置など、B
「中途視覚障害者の教育・支援や東洋療法に関する研究」・・学習支援のためのツールとノウハウの開発(現在、研究所や全国4国
立視力障害センターとの共同研究を実施)、C「視覚障害者を中心とした理療師の生涯学習、研修機関としての役割」・・東洋療法
研修部門の設置など、D「視覚障害や理療、理療教育に関する情報の発信」・・ICTの活用、公開講座の開催などであります。
これらの結論に、理療教育部として委員会メンバーを中心に実現に向けての努力をしてきたつもりでありますが、まだまだその道
筋は長く遠い感があります。それでもいくつかの取り組みは昨年度の業績発表会などで「理療教育改革への取り組み」として評価を
受けることができました。
最後に我々理療教育部もさることながら、国リハに働く職員として「全ての国リハ利用者の卒業や修了の先に希望が見える・自信
回復のプログラム」の実現を思うのである。