〔センター行事〕
第23回業績発表会優秀賞受賞者から一言
管理部企画課



 1月号国リハニュースでお知らせいたしましたが、12月22日(金)に行われました第23回業績発表 会において優秀賞を受賞した以下の4名の方にコメントをいただきましたのでご紹介します。

○優秀賞
病院第一機能回復訓練部 山本 正浩
更生訓練所指導部生活訓練課 石渡 博幸
研究所障害福祉研究部 北村 弥生
更生訓練所指導部指導課 三好 尉史


病院第一機能回復訓練部副作業療法士長 山本 正浩
演題:「高次脳機能障害者の社会参加状況と健康関連QOL」


 先日、山田規畝子さん原作の「壊れた脳 生存する知」がテレビドラマ化されました。ご自身の体験に基づく実話で、 記憶障害、注意障害、視覚失認など重度の高次脳機能障害を抱えながら、医師という仕事を続けることで彼女らしさを 維持しているという内容です。当然、生活や仕事では失敗が多いのですが、症状を理解した愛息や姉が、彼女の不足し た部分を補い、本来持っている彼女らしさを引き出してくれています。
 今回、病院高次脳機能障害リハビリテーション委員会では、身体障害が軽度な高次脳機能障害者を対象に、社会参加 状況と健康関連QOLについて追跡調査しました。その結果、仕事に就いている人のQOL値は、国民標準値とほぼ同様です が、仕事に就けず在宅生活を送っている人たちは、精神と身体の両面で健康感が損なわれていると感じていることが分 かりました。また、仕事に就いていなくても、職業訓練など就労に向けた活動を継続している人たちのQOLが比較的良 好に保たれていることも分かりました。
 高次脳機能障害を持つ人たちが、いま置かれている状況の中で、その人らしく生き生きと生活していくためには、 その人たちが本来の役割を担うための努力ができる環境を提供されることが必要だと言えます。これは「モデル事業 」で目指したケアの連続性に他なりません。「普及事業」においては、医療リハと職業リハの連携にはいくつもの課 題が残っていると言われています。当センターにおいても、「病院と更生訓練所との連携」という言葉は良く耳にし ますが、未だかつて成果として現れたものはわずかだと思います。高次脳機能障害のある人たちへの対応をきっかけ に病院と更生訓練所との連携を強化し、全国展開される「普及事業」で各施設に参考にしてもらえるようなシステム を構築できるように力を合わせていきましょう。



更生訓練所指導部生活訓練課主任生活訓練専門職 石渡 博幸
演題:「障害者自立支援法における自立訓練事業開始に向けての準備状況報告」


 本年10月から障害者自立支援法に基づく新たな仕組みによる障害保健福祉サービスの提供が開始され、それに伴い、 当センターも新事業体系に移行しました。生活訓練課では、担当する自立訓練事業開始に向け、事業に関する運営基準 等も未確定な部分がある中、事業開始まで約半年という短い期間でしたが、職員の新制度やサービス提供に関する共通 認識を深めるための「手引き」作成や利用者の満足度を高めるための効率的なサービスの提供を行う体制作り等に、各 部門のご協力をいただきながら年度当初から取り組んで来ました。
 障害者自立支援法には、様々な課題もありますが、地域生活を支えるサービスのさらなる質の向上と個々のニーズに 対応した適切な支援の提供について具体的手法が示され、我々支援者の意識改革を行っていく良いきっかけになったと 考えています。
 今回、他に優秀な発表が多々ある中、当課の取り組みに対して過分な評価をいただけたのは、今後これらの取り組み が効果を上げていくための具体的プログラムの開発や客観的指標に基づくその効果測定などを行い、より有効な支援サ ービスを展開していくことを期待しての「優秀賞」と理解しております。今回いただきました評価の意味を課員でもう 一度考え、今後、エビデンスをもった具体的サービス提供の効果的方法などをさらに追求し、支援モデルを全国に示し ていくよう取り組んで行きたいと考えております。



研究所障害福祉研究部 研究員 北村 弥生
演題:「国リハ更生訓練所利用者の満足度と自己概念の関係」


 業績発表会では、平成17年度に更生訓練所の利用者を対象に行った2つの調査結果を発表しました。いずれも更生訓練所の職員 のみなさまのご協力をいただき、目的設定、協力者の募集、結果の解釈ができましたことは、貴重な体験でした。「研究」は、と かく対象者(調査協力者)をモルモットのように扱い、役に立たない「勝手な解釈」をする、と批判されます。白い毛の実験動物 は実験用に品種改良された動物なので、この批判の前半の比喩は適切でないのですが、後半部は大きな課題です。
 理療教育部での調査では、質問紙調査実施後に、理療教育部教官から授業中に調査の感想を聞いていただき、利用者に結果のフ ィードバックをする時間を理療教育部長からご許可いただくことにより、結果と反響を協力者と共有することができたことは画期 的でした。
 現場で役立つデータと学術的に意義のある結果を両立させる研究デザインを立てることは容易ではありませんが、今回の2つの 調査で得られた「利用者の自己概念は対照群に比べ有意に低かったこと」「利用者のうち既婚者は未婚者に比べて自己概念が有意 に高いこと」「調査協力の公募に応じて国リハの改善策を提案した利用者の自己概念は対照群と有意差はなかったこと」は、サー ビスを利用者が選択するためには、個々の技術だけでなく、結婚を含めてどのような生活を送るかを視野に入れた支援が必要なこ とを裏付けており、実用的にも学術的にも有意義であると考えています。
 面接調査では、残念ながら、将来の生活設計を立てている利用者はほとんどありませんでしたので、現在の自分を見つめ、将来 について安心して話ができる場の設定も必要と考えました。今後も、更生訓練所や地域と連携し、実用的かつ学術的価値のある研 究を行っていきたいと思っていますので、御指導いただきたくお願い申し上げます。



更生訓練所指導部指導課主任生活支援専門職 三好 尉史
演題:「更生訓練所における「指定障害者支援施設」の指定に向けた取り組みと今後の課題」


 今回優秀賞に選ばれた理由は大きく分けて二つあると考えています。一つは平成16年度から更生訓練所が取り組んできた更 生訓練所のあり方に関する検討と指定障害者支援施設として埼玉県の指定を受けるための取り組みへの全体的な評価。二つめ は提供するサービスをさらに充実させると共に、国立施設としての役割を十分果たしていくように、「これまで以上に一体と なって取り組みなさい」との期待と激励を込めてのことであったと理解しています。
 一方個人的には、更生訓練所のあり方の検討を行っていく中で、毎日夜遅くまで議論を尽くしたワーキンググループのメン バー、特に若手職員の頑張りがその後の更生訓練所の取り組みにつながり、今回の発表を後押ししてくれたと感じていますし 、彼等に本当に感謝しています。
 さて、業績発表で報告したとおり、指定障害者支援施設として、国立施設としての更生訓練所の課題は山積しています。引 き続き、課題をひとつひとつ整理しながら、次回の業績発表会では、より具体的なかたちで新事業の成果を報告できるように 努力していきたいと考えております。ありがとうございました。