〔巻頭言〕
病院機能評価の受審準備を通して思うこと
病院看護部長 堀 房子



 保健医療福祉を取り巻く環境はますます厳しさを増しています。病院においても患者中心の安全、安楽、安心そして快適な療養環境を含め た、質の高い医療サービスの提供がますます重要となっています。質の高い医療サービスを提供するには、職務満足も向上してこそ患者満足 度が向上するといわれますが「7:1看護」等の影響を受け看護師確保に苦慮しております。
 当病院は1980年に50床の病院機能がスタートし増床を重ね200床となり今日に至っています。病院は、変化する環境と社会のニーズに対応 し貢献することが期待されています。それには医療サービスを点検し環境整備をすることが必要となります。当病院ではこの3月末に病院 機能評価機構の評価を受けるべく、病院機能向上委員会と小委員会が推進力となり、それぞれの部署が準備を進めてきています。病院機能 評価機構の医療の質に対する評価の全体像を私なりに把握してみました。評価の第一義は患者さんの基本的人権の尊重が上げられると思い ます。倫理面への配慮、プライバシー保護、インフオームドコンセント、要望希望の尊重、医療成果、チーム医療などがキーワードであり 、その構成は、構造:Structure、過程:Process、結果:Outcomeから成っています。構造は病院の理念や方針、組織における看護師の責 務、人員配置、機器・設備の状況、人材育成、組織体制、管理体制など、医療を提供するための枠組み。過程は診断・治療・看護など医 療活動の一連の流れ、看護提供のための活動、知識、技術、基準、手順。結果は提供された医療に起因する個人や集団における変化、健 康状態の変化や患者満足度などであります。評価の視点は、常に患者さんが主体であることを私達は学んでいるところです。私達医療者 はプロセスを大切にしてきましたが、患者さんは結果を大きく期待していることを意識し、安全の質を保証し治療成果が重要になります 。そういった観点から数多くの評価項目を整理していくわけですが、どのようにプレゼンテーションしていくのか苦慮しているのも本音 です。しかし看護部はこれまで実践してきたことを全員参加で取り組み点検し、強み弱みを整理、年度末の慌ただしさを勢いに変え(?) 追い風として気持ちを張り詰め、皆で本業務終了後遅くまで準備に取り組んでいます。
 評価項目の一つに、精神的ケアや疼痛コントロールに関することがあります。リハビリテーション看護において、心身の疼痛緩和ケアは看護実践の枠組みの中に組み入れてきました。多くの患者さんは、身体の運動能力や、可動性、生活するのに困難なことの大きさ、行動や感情の変化する自分への戸惑い、言葉にならない不安感、心配事、怒り、苦しみ、ストレス、痛みなどを体験しています。臨床実践において看護師は、受傷後の診断されたときの気持ちや今抱えている問題、障害と向き合いながら生活するときに、どのような感情が芽生え、揺らぎ、渦巻くのか、傾聴しどのようなサポートが可能なのか考えケアを実践しておりますが、コミュニケーションが困難な場合は看護者の悩みは深くなります。そこで、リハビリテーションの究極の目的は心のケア、心の緩和ケアであるという心理学者がおられますように、この領域をリハビリテーションプログラムに位置づけ発展させて欲しいと考えています。患者さんは体験している感情を語り、傾聴し、何が起こっているか、どのような対応が可能か検討し支援していく。やがては感情のポジティブな面、豊かな感情を引き出す教育学習ともなるような、心理的適応過程を支援する心理的リハビリテーションのチームアプローチが実現し確立することを期待したいと思います。