〔学院情報〕
平成19年度学院入学式
学院事務室


 花冷えが一段落した去る4月5日(木)の10時から、当センター学院講堂において、新入生67名を迎え、平成19年度入学式を開催しました。

 この式典では、開会の冒頭、中島学院長から式辞がありました。(別記1)

 続いて、岩谷総長より祝辞が述べられました。(別記2)

 引き続き、新入生紹介のあと、手話通訳学科2年の大野和英君が、歓迎のことばを述べました。(別記3)

 その後、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長中村吉夫様などからいただいた祝電を披露しました。

 最後に、当日参列された当センターの幹部職員の紹介を行った後、学院歌を斉唱して終了しました。


 以下、各学科の新入生の寸描などを紹介します。


言語聴覚学科

 爽やかに晴れわたった空の下、桜の絨毯を踏みしめて入学したST学科29期生は、2年制の16期生になります。平均年齢24.2歳とフレッシュな30名が揃いました。男性陣が久しぶりに5人となり、元気のよい人が揃い、明るい雰囲気が漂っています。出身は心理、教育、福祉、語学系が多いのですが工学、生物、農学、法学、商学などの出身者も多く、例年よりも多岐にわたり、多様な刺激が受けられそうです。残念ながらほとんどの土曜日も講義で埋まるハードスケジュールは変わりませんが、心身の健康にも十分気をつけ、励んで欲しいと願っています。


義肢装具学科

 26期生として10名が入学してきました。女性4名、男性6名で平均年齢22.2歳と昨年よりまたさらに1歳以上若くなりました。今年度の入学試験の合格者は高校新卒が多かったので、他の大学等に合格すれば、そちらに入学する可能性も考慮していましたが、予想に反して正規合格者の中で辞退者がなく、全員が入学しました。中には他の大学等を多数受験して、全て合格した中でどうしても本学院に入学したかったという者もいます。嬉しい限りですが、3年後には、やはり国リハに入学して良かったといって巣立っていくことを期待しています。


視覚障害学科

 視覚障害学科18期生は9名(男性3名、女性6名)が入学しました。大学での専攻としては、最も多い教育系でも3名、その他文学系2名、福祉系2名、情報系1名、工学系1名と、多岐にわたっております。

 大学新卒者は過半数の5名で、平均年齢は23.8歳と、ここ数年では最も若い年齢構成になっています。入学早々、2年生の演習の餌食となり、4月から毎日のようにアイマスクをつけて歩かされておりますが、社会経験の少なさを補って余りあるその若さとパワーで、厳しいカリキュラムを乗り切っていってくれるものと期待しております。


手話通訳学科

 18期生として14名(男性2名・女性12名)が入学しました。出身地は首都圏1都3県が大半を占め、あとは福島県と宮崎県が各1名ずつと、地方色はやや薄め。年齢構成は、新卒が5名、30代前半までの社会人経験者が7名、50代が2名と、こちらはなかなか多様です。人数が少ないと密度の濃い授業を受けられるという面もありますが、毎回の授業で2人ずつ3人ずつと当たる実技課題がそれだけたくさん回ってくるということでもあり、先輩の2年生からはすでにだいぶ脅かされているようです。手話という異言語・異文化の壁は想像以上に高く厚いものかもしれませんが、初めはとにかくコミュニケーションを楽しみながら、基盤作りにじっくり取り組んでほしいと思います。


リハビリテーション体育学科

 17期生は男性1名、女性3名の計4名です。平均年齢は31.8歳とやや高めですが、2年生に負けないパワーを持っています。また、初めて関東出身者がいない学年となりました。フレッシュな大学新卒者や大学院在籍者、社会経験者と経歴は異なりますが、人数の少なさを熱いハートと個性でカバーしてくれると思います。多くのことを吸収しながら充実した学生生活を過ごし、専門職として成長していくことを期待しています



(参考)

学院在籍状況(平成19年4月5日現在)

(単位:人)

学科名 1学年 2学年 3学年
 言語聴覚学科
31
29
-
60
 義肢装具学科
10
11
11
32
 視覚障害学科
9
15
-
24
 手話通訳学科
14
23
-
37
 リハビリテーション体育学科
4
9
-
13
68
87
11
166


厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長祝電


 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院に晴れて入学された皆様、おめでとうございます。これから本学院で、身体障害者のリハビリテーションに関する専門的な理論及び技術をしっかりと身につけていただき、将来、各地域において先導的、指導的役割を果たし、ひいては、障害者の自立と社会参加を推進していくことを期待しております。どうぞ健康に留意されながら一生懸命頑張って下さい。

平成19年4月5日

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長

中村 吉夫



(別記1)

学院長式辞


 本日は満開の桜の中を入学式に参列された学生諸君ならびにご家族の方々には、学院長として心からお祝いを申し上げたいと存じます。また来賓の方々には御来駕賜ったことを学院を代表して厚く御礼申し上げます。

 今回の入学者数は、言語聴覚学科30名、義肢装具学科10名、視覚障害学科9名、手話通訳学科14名、リハビリテーション体育学科4名の、合計67名です。これら5学科の沿革を紐解きますと、いずれの学科もそれぞれの分野での専門職養成機関としてわが国における最も古い歴史を刻んでいます。医療や福祉の現場で活躍するこのような専門職の養成を一般的な教育機関で実施していない頃から、当学院は時代の要請に応じて、また時代に先駆けてこれら5つの学科を設置し、運用してきました。このような歴史をもつ、当学院に選抜試験を勝ち抜いた諸君を、ここに迎えることを学院長として私は誇りに思います。

 さて、諸君が学院で、専門職を目指してこれから学ぶということについて述べます。それぞれの学科にあって、教育は座学と実習から構成されています。座学と言うのは文字通り講義を座って聞くということです。講義は決して現場で使うための知識の伝授ばかりではありません。その専門職の法律上の位置付け、或いは実施する業務の行政的な取り扱いと言った面にまで及びます。そればかりではありません。諸君は視力を失った方がわが国に何人、聴力を失った方が何人、言葉を失った方が何人、そう言った統計をも知る必要があります。しかしながら、座学によるもろもろの知識の習得について、私は、今回、諸君の入学試験をつぶさに見て来たことから、諸君のこの点での能力にはいささかも疑いを持っていません。

 私が本日、この場を借りて諸君に伝えたいことは、実習の重要性です。実習を通じた技能の習得は知識の習得と同等に重要であるということです。技能を身につけるということは、専門職を目指す以上、どの学科においても必要なことです。工作技術のような技能、いわゆるテクニックと呼ばれるものです。あるいは患者や障害者と上手にコミュニケーションを図り、相手の気持ちを忖度しながら訓練効果を上げるような技能は、アートと呼ばれています。いずれの学科においても、あらゆる局面でこのような技能の習熟が求められます。ところが、この技能の習得ということについては、一体どのくらいの時間をかければどのくらいレベルアップしていくものか、諸君には実感がないことと思われます。この実感を実習を通じてもっていただきたいと思います。さらには、技能の習得は、知識の習得と異なり、短期間で身に付けることができず、他人をまねても不十分であることを知らねばなりません。短期間で身に付けることができなくとも、一旦これを身に付けたならば容易に忘れることがないのも技能の特徴であります。諸君は自らの技能を学院生活の間に実習を通じて、自ら心掛けて、能動的に身につけて行く必要があります。どうか、技能の習得が知識の習得と同等に重要であり、一朝一夕に実現するものではないことを念頭において今日からの学院生活を有意義に送ってください。本日は入学おめでとうございます。


平成19年4月5日

国立身体障害者リハビリテーションセンター

学院長 中島 八十一







(別記2)

総長祝辞


 満開の桜が皆さんの入学をお祝いするように、センターの杜を彩っています。本日は、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院に入学おめでとうございます。ひさしぶりに富士山が現れました。満開の桜と富士山は日本の最も美しい風景のひとつで、皆さんの前途をお祝いするにふさわしい一日となりました。このよき日に、67名の皆さんをお迎えすることは、私どもセンター職員にとって大きな喜びであります。また、ご家族、ご父兄の皆様にも心からお慶び申し上げます。

 皆さんは、障害を持つ人々の力になりたいという志をもって、専門職としての知識と技術を習得するために、この学院に来られたと思います。私たちは、同じ志を目指す仲間となる卵を大切に育てたいと気持ちを新たにしています。さて、障害とはどんなものでしょうか。障害をもつと言うことはどんなことでしょうか。障害を体験することがない障害をもたないものにとっては、本当に理解することは難しいことです。本当に理解することは不可能と言っても良いかも知れません。

 平成14年12月に内閣は障害者基本計画を定めました。そこでは、「21世紀のわが国が目指すべき社会は、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支えあう共生社会とする必要がある。共生社会においては、障害者は、社会の対等な構成員として人権を尊重され、自己選択と自己決定の下に社会のあらゆる活動に参加、参画すると共に、社会の一員としてその責任を分担する。他方、障害者の社会への参加、参画を実質的なものとするためには、障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している諸要因を除去すると共に障害者が自らの能力を最大限発揮し自己実現できるよう支援することが求められる」と謳われています。障害を持つ人々が参加、参画する社会、障害をもつ人々を招き入れる社会を作っていくことをこれからの皆さんが人生の仕事としていただきたいと思います。

 皆さんは、専門職としての修業を始めます。視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、言語障害をもつ人を支援するためには、それぞれの障害の特性を理解し、特有な知識、技術を習得することが必要となります。そのような、特別の知識と技能を持つ者が専門家です。元来、専門とは基礎学問に付加されるものであるから尊ばれるのです。障害を持つに至った人は、病気の治療、リハビリテーション、日常生活訓練、更生訓練、就労、就学支援の過程を経て、日常生活を営む力をつけ、社会での自立生活を達成します。それぞれの過程に、専門家が求められています。医療の専門家のなかは、眼科、内科、耳鼻科、整形外科、リハビリテーション科、神経内科などと、リハビリテーション専門職も、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、高次脳機能障害、聴覚言語障害と分化しています。それぞれの専門家は、患者さん、障害をもつ人の障害のそれぞれの専門に関する部分の治療に一所懸命になります。

 近年、専門性の切り売りをするばかりで、患者さん、障害を持つ人の全体を見分けようとしない専門家が増えております。たしかに専門知識は必要です。私たちは、自分の専門性を高める努力を一生続けなければなりません。しかし、専門のことしか分からない、患者さん、障害を持つ人の生活や人生のなかで、自分の行う専門的支援がどれくらいの意味があるのかが分からない専門家は落第です。周囲の専門家と協力して、患者さん、障害を持つ人が生活する力を獲得する支援をすることが我々の仕事です。また、高度な知識、技術は、それを必要とする人々の身近にあってこそ価値があります。生活のなかに生かされてこそ、役に立つものでしょう。皆さんがこれから習得する専門技能を最もそれを必要とする人に利用してもらうためには、専門性を理解してもらわなければなりません。専門性は、障害を持つ人々のもつ多くの問題の中のごくわずかの部分の解決にしか役立たないということを知って戴きたいと思います。

 しかし、専門性は大きな力を持っています。その専門性を生かすには、障害について、障害をもつ人について、他の専門職について、理解し、自分の専門性がどのように生かされるかを考える力をつける必要があります。そして、障害を持つ人々を理解し、共感できるように感性と人格を磨く必要があります。障害を持つ人々は障害の専門家です。その人々から学ぶことは、沢山あります。皆さんが、この学院で専門性を身につけると共に、障害を持つ人々と共感できる感性をみにつけて戴きたいと思います。私たちは、一所懸命に皆さんと共に志に向かって努力いたします。

 健康に配慮しつつ、意義ある学院生活であることを期待します。


平成19年4月5日

国立身体障害者リハビリテーションセンター

総長 岩谷 力






(別記3)

歓迎のことば


 新しい息吹が一斉に感じる春、野に山に美しい花々が咲く季節になりました。

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。今日から共に学ぶ仲間になられたことに在校生一同、心より歓迎致します。

 いくつになっても、スタートラインに立つということは、希望に胸を膨らませると共に不安があるものです。親元を離れ、今日から初めて1人暮らしをする学生もいるでしょう。ここで学ぶ学生は、年齢や歩んできた人生もさまざまです。自分の知らなかった世界に出会い、刺激を受けることも多いでしょう。この学院生活をかけがえのない機会とし、同じ目的をもつ仲間と共に高め合い、共に成長していきましょう。また、困ったことや分からないことがあれば、私達上級生にも遠慮なく相談してください。みなさんより学院で過ごしている時間が長いので、何か力になれることがあるはずです。

 学院では、専門職に向けた多彩なカリキュラムが用意されています。各分野でご活躍されている先生方の指導を受けることができ、また、設備や機器も充実しています。周囲には自然が多く春には桜、秋には紅葉がとてもきれいなところです。学院の6階からは富士山が見え、感動することでしょう。このような素晴らしい環境で学べることに感謝しつつ、熱意をもって勉学に取り組みましょう。

 早速明日から授業が始まります。課題や実習などに追われ、辛いと思うこともあるでしょうが、自分一人ではなく、皆、同じ思いで取り組んでいます。お互いに励まし合い、友情を大切に育みながら共に勉強していきましょう。

 この広大な敷地内には、更生訓練所や病院、研究所などがあります。球技大会や体育祭、並木祭などの行事では学院生だけでなく、センターを利用される方と交流する機会もあります。また普段触れ合いの少ない他学科の方々と友情を深める場にもなるでしょう。勉強だけではなく、人間関係、人との繋がりを学ぶことができる場でもあります。

 周りを見ると学科にもよりますが、全体としては男子学生が少ないことがわかると思います。男子学生も貴重な人材です。女性のパワーに負けないように共に頑張りましょう。

 以上、皆さんの入学を心からお祝いし、歓迎の言葉とさせていただきます。


平成19年4月5日

在校生代表 手話通訳学科2年

大野 和英