〔研究所情報〕
あなたは幾つ知っていますか?
研究所福祉機器開発部 相川 孝訓



 最近では、略号が多く使われていますが、以下の略号のうち、あなたは幾つ知っていますか。ISO, TC, SC, WG, CD, DIS, FDIS, TR, SG, JIS, JISC, JSA, CE, CEN, EN等々です。これらの略号の意味が分かればあなたは規格に関する専門家と言えます。

 研究所には福祉機器や義肢装具に関する規格の作成に携わっているエキスパートと呼ばれる人が何人もいます。今回は私たちが関与している規格について、略号を切っ掛けにして説明したいと思います。国際規格はISO(国際標準化機構)で作成されます。組織はTC(Technical Committee, 専門委員会)またはSC(Sub Committee, 分科委員会)と実質的な審議を行うWG(Working Group, 作業部会)から構成されます。TCは分野毎に番号が決められており、TCの下にSC, WGが作られています。福祉用具の分野に関係したTCは2つあります。TC168は「義肢・装具」に関する専門委員会です。SCはありませんが、WG1(用語)、WG2(医学的側面)、WG3(試験法)の3つのWGがあります。TC173は「福祉用具」に関する専門委員会で、SC1(車いす)、SC2(分類と用語)、SC3(ストーマ・収尿器)、SC6(移動介助用リフト)の4つの分科会とWG1(歩行補助具)とWG7(歩行者領域における視覚障害者誘導のための設備と方法)の2つの作業部会があります。分科会の下にも作業部会があり、例えばSC1の下にはWG1(試験方法)、WG6(車いす固定システム)、WG8(階段昇降機)、WG10(電動車いすの電気技術システムの要求事項と試験方法)、WG11(車いすの座位保持)の5つの作業部会があります。これらの作業部会は通常は年に1〜2回程度世界各国で開催され、登録されている委員(エキスパート)が集まって規格原案について審議して、規格を決めていきます。当センターで開催されたこともありました。作成途中の規格原案の完成度により名称の付け方が決められています。一例を挙げますと、CD(Committee Draft, 委員会原案)、DIS(Draft International Standard, 国際規格案)、FDIS(Final Draft International Standard, 最終国際規格案)等です。次の段階へ進むためには投票で参加国の賛成多数が必要になります。各国1票ですが、最近ではホームページからの投票になりつつあります。日本では個々のTCもしくはSC, WG単位で組織されている国内対策委員会が対応して日本としての投票内容を決め、JISC(日本工業標準調査会)が取りまとめを行っています。

 どの様な規格があるかの例として、最近、制定もしくは改訂されたISOの一部を以下に示します。

・ISO9999:2007 Assistive products for persons with disability -- Classification and terminology

これは福祉機器に関する用語の規格です。

・ISO10328:2006 Prosthetics -- Structural testing of lower-limb prostheses -- Requirements and test methods

・ISO22523:2006 External limb prostheses and external orthoses -- Requirements and test methods

・ISO22675:2006 Prosthetics -- Testing of ankle-foot devices and foot units -- Requirements and test methods

これらの3つは義肢装具に関する規格ですが、ISO22523はCEN(欧州標準化委員会)が作成したEN規格の一つであるEN12523:1999を基にしています。欧州規格は規格番号の先頭に「EN」が付き、欧州で統一的な規格なのですが、発行は各国での対応になり、イギリス(BSI)やドイツ(DIN)などから発行されています。

・ISO16840-1:2006 Wheelchair seating -- Part 1: Vocabulary, reference axis convention and measures for body segments, posture and postural support surfaces

・ISO16840-3:2006 Wheelchair seating -- Part 3: Determination of static, impact and repetitive load strengths for postural support devices

ISO16840-3は座位保持装置の強度に関する国内外で初めての正式な規格です。この規格は草案の段階から、厚生労働省で作成された座位保持装置部品の認定基準の作成の参考資料として使われました。

 今回は国際規格ISOを中心にお話ししましたが、国内規格についても少しだけ触れたいと思います。国内規格と言えば、やはりJIS(日本工業規格)でしょう。最近では、国際規格が成立すると翻訳してJISを作成することが多くなっており、通常はそのまま翻訳してJISを作成しますが、最近発行された以下の規格は複数の車いすのISOをまとめてJISを作成しています。

・JIS T9201:2006 手動車いす

・JIS T9203:2006 電動車いす

 国内の規格はJISが主ですが、JIS以外にも規格・基準はあり、例えば製品安全協会で出しているSGマーク、SG基準があります。福祉用具関係では、棒状つえ、歩行補助車、手動車いす、電動介護用ベッドなどの9品目に基準があります。認定されている製品にはシールが貼られていますので、身近にT字杖などがありましたら、SGマークのシールが貼られているかどうか調べてみて下さい。

 最後になりましたが、略号の答えを載せていないものが幾つかあります。これについては、何らかの方法で調べてみて下さい。なお、CEマークなどはマウスの裏で見つけられるかも知れません。