〔魚拓シリーズ14〕
前更生訓練所理療指導室長 川政 勲



 鯉科鯉亜目。金ブナ、銀ブナ、ゲンゴロウブナなど。

 ゲンゴロウブナは品種改良され、ヘラブナとして全国に放流されている。

 漁師の源五郎が一目惚れをしたお姫様に恋文を仕込んだ鮒を献上し、その恋が成就したといういわれがある。

 体高が高く、青みを帯びた銀色をしており、目が口より低い位置にある。

 鮒や鯉を魚拓にしようとすると、準備は釣る前からしなくてはいけない。

 魚拓の場合、魚の色合いもそうだが、魚体の傷や鱗の剥げ具合なども考慮しなければならない。

 特に鯉や鮒は、鱗が一枚でも欠けていれば商品価値はゼロ。釣り上げたときから、鱗をはがさないように新聞紙を濡らし、丁寧に包んで、氷や他の魚と直接ぶつからないようにして持ち帰る必要がある。

 釣って帰ってもすぐに魚拓の作業には入れない。淡水魚はヌメリが強く、よく取らないと魚拓紙から剥がすときに、紙が魚体に粘りついて破れてしまう。

 また、釣りで疲れてその日に魚拓をしようという時間と余裕が無い。

 結局冷凍庫に収め、土曜日や日曜日を待つことになる。

 冷凍する際も、鰭が凍って折れてしまわないような凍らせ方をしなければならない。

 そうして出来たのがこの作品である。

秋うらら釣りへの誘ひ来たりけり  いさお




(写真1)鮒
(写真1)鮒