〔病院情報〕
病院紹介シリーズB「第二機能回復訓練部紹介」
病院第二機能回復訓練部



 第二機能回復訓練部(通称二訓)は、病院におけるコミュニケーション障害を担当する部門で、聴覚・言語障害、摂食・嚥下障害を主な対象としています。対象とする具体的な疾患、障害は多様で少なくとも10種類の障害類型に分けられます。

 入院患者さまは、脳血管障害や頭部外傷による、失語症、高次脳機能障害、運動障害性構音障害、摂食・嚥下障害が中心です。交通事故の後遺症により入院している若い方から80歳台まで幅広い年齢層ですが、高齢の方の割合が多くなります。必然的に神経内科系からの指示を受けることが多いのですが、頚髄損傷でも摂食・嚥下障害を伴うことがあり、また高位頚髄損傷では、人工呼吸器依存となる場合が多く、音声確保は二訓が担当します。

 一方、外来の患者さまは、言語発達遅滞、口蓋裂による構音(発音)障害、発声発語器官に問題のない構音障害、数は少ないのですが脳性まひなどお子様の言語障害が多いのが特徴です。聴覚障害は、年齢的には新生児から高齢者まで幅が広いのですが、お子様の聴覚障害はことばの獲得に関係するので、頻度も多く、期間も長くなる傾向があり、二訓の業務では、大人の聴覚障害より比重が重くなっています。そのほか、幼児から大人まで幅広く対応を求められる障害として吃音があります。また、音声障害は成人の方が多い障害ですが、身体的な問題を伴わないので外来で対応します。入院後の外来フォローなどをのぞくと、外来の患者さまの訓練の指示は耳鼻科から出ることがほとんどです。

 こうした言語障害を担当する二訓の職員は、言語聴覚士の国家資格を必要とします。現在常勤8名、非常勤3名で臨床を中心に多くの業務をこなしています。このほかに、当センター学院には、言語聴覚士を養成する専門学校があり、その教官4名が、病院と併任になっており臨床業務が行えるようになっています。二訓職員の一部は、学院の講義や実習などを担当しています。さらに別の言語聴覚士養成校の実習受け入れも行っています。また、この国リハニュースに報告記を記載したような学会を担当したり、学会で発表したり、また論文を書いたりという研究的な仕事も求められています。

 さて、当センター設立以来20余年の二訓の歴史を見てみると大きな変化が感じられます。最も重大な点は、当初50床でスタートした病院が、現在では、200床となり、神経内科系の患者さまが全体に占める割合が増加している点です。このことの二訓への影響は、PT,OTや他の部門の場合とは多少性質が異なります。最初に述べたとおり、二訓の対象となる患者さまは障害類型の性質上外来の患者様が多く、また入院患者さまは神経内科系の患者さまがほとんどです。ところで、ベッド数が増え、かつ神経内科系の患者様が増えることは、そのまま二訓の対象の患者様が増えることになります。実際、20年前には入院患者さまの割合は全体の10%程度で残りは全て外来でした。その後徐々に入院患者さまの割合が増え、昨年度の統計では、初めて患者さまの人数と訓練件数ともに入院が50%を超え、外来を上回りました。

 二訓では、センター設立以来各職員が専門領域を持つ体制をとってきました。これは、聴覚言語障害が10余の障害類型を持ち、内容がそれぞれ相当に異なることと学院の講義などを担当することから、各職員が得意分野(専門性)を持ち、その内容を常に高めるために研鑽を続ける必要があったからです。実際、二訓の諸先輩が、専門とする障害類型に関して日本の学問レベルを高めるために貢献してきたことも事実です。

 しかし、徐々に入院が増加するにつれ、入院担当者を増やし、現在では、二訓職員の半数が入院を担当しています。割合が変わっても外来の患者さまの数が減るわけではなく、結果的に一人の職員が担当する患者さまが増え、また、職員一人が一つの専門を持つことは不可能となりました。どうしても患者さまへのサービスはまず量的に減ることになります。この中で質を保つ努力は続けていますが、それも容易ではありません。最近ようやく発達障害への支援の重要性が社会に認められるようになってきましたが、その情勢の中でこれまで大きな役割を果たしてきた二訓が、その機能を縮小せざるをえないという情けない事態に直面しています。

 これは、国立の施設の構造的な問題であって、センターという組織のレベルの問題でもなく、ましてや二訓職員の個人的な問題ではありません。数年前から、二訓職員は複数領域を専門とするよう体制を変更するなど状況に対応するため最大の努力をしておりますが、根本的な解決には至りません。今、再度二訓自体の役割を見直し、センター内だけでなく、地域連携などを含めた可能な方策を模索しているのが現状です。




第二機能回復訓練部職員