〔学院情報〕
臨床実習を終えて
学院義肢装具学科2年 宇多 真知子


 今回初めての臨床実習を経験し、義肢装具の製作・修理といった作業を実際に担当させて頂いたり、社員の方の作業を見学をさせて頂いたりする中で多くのことを学ぶことができました。練馬区にある会沢製作所にお世話になったのですが、製作所では作業の効率化を図る現場ならではの工夫が随所に見られ、基礎を踏まえた上での省力化や応用という点から「学校」と「会社」との違いを身をもって感じました。またこういった技術面のみならず、病院への営業同行では実際の患者様とのやり取りや採型→製作→仮合わせ・納品といった一連の流れ、さらに修理や各種の相談受付等のアフターサポートなどを見ることができ、学校とは違う環境の中で多くのものを得ることができました。

 今回の臨床実習を通じて私がいちばん強く感じたことは、上でも述べましたが製作所は「会社」である、ということでした。製作所が「会社」である以上、そこで扱われる義肢装具は「商品」であり、患者様は「お客様」である、ということになります。会社である以上は当然利益を出さなければなりません。これは作業効率を考える、また材料を無駄にしないといったことに繋がります。同様に良い商品を提供することはきちんと適合した、見栄えの良い義肢装具を作ることに繋がり、お客様に満足して頂くためにはその方に納得して頂けるような説明をすることに繋がります。私は社会人経験があるので会社のシステムなどある程度は把握していたし、同様のことは学校でも言われていたため頭ではその事実を理解していたつもりでした。しかし実際の作業や営業を通じて、その事実を頭ではなく経験として捉えることができました。もちろん義肢装具を使用する人の役に立ちたいという思いは大前提として、その上で改めて自分の学校での実習態度を省みると、今までは目先の作業ばかりにとらわれて作業効率等への意識が足らなかったように思います。

 また今回いくつかの病院へ同行させて頂いたのですが、医師や看護師、理学療法士、作業療法士といった他の医療職との関わりの程度や患者様への対応をどこまで任されるかなどが各病院で異なっていたように感じました。社員の方の話によると、病院の規模や専門性、職員との関係などそれぞれの病院の特徴に合わせて営業担当者を決めたり対応を考えたりしているとのことでした。多くの義肢装具士は他の医療職と異なり、病院ではなく製作所に所属していることから患者様との接点が限られてしまいます。しかし、だからこそ限られた時間の中でも十分な説明をして安心感を与えることが必要であり、安心が信頼へと繋がることを営業の中で実感しました。実際に十分な説明がなければ装着位置や方法を間違ったり、また信頼関係がなければいかに適合した義足や装具を作っても合わないという訴えを受けたりということもあります。説明不足で装具治療の効果がでないばかりか、間違った使い方により障害部位やそれ以外へ影響が出たり、また最終的に装着を拒まれたりということも考えられます。特に初めて義肢装具を作る方は不安感を抱えていたり、逆に過大な期待を寄せている方もいらっしゃるため、しっかりと患者様の様子や状態を確認し、状況に応じた対応と十分なコミュニケーションが重要であると感じました。

 臨床実習中は社員の方々の貴重な作業時間を使って指導して頂き、また失敗して材料や時間を無駄にしたりと本当に迷惑を掛けてばかりの40日間でしたが、学校とは違う環境・緊張感の中での経験は心に残るものばかりでした。これらの経験を生かして今後も頑張っていきたいと思います。