〔研究所情報〕
理療教育課程における学習支援システム構築への協力 その2
研究所福祉機器開発部 伊藤 和幸



 第283号に掲載された「理療教育課程における学習支援システム構築への協力」のその後の経過を紹介したいと思います。本研究では、主任研究者である伊藤(理療教育部)をはじめ理療教育部「学ぶ力の向上」の係3名とともに、理療教育課程での学習においてノート・テイキングに苦慮する中・高齢層中途視覚障害者の学習支援システムを構築することとしています。現在、研究2年目を迎え、ノート・テイキングに関して2つの機器の開発が進んでいますので、それぞれについて紹介したいと思います。

 分担研究者の伊藤(研究所)は、メモ機能を搭載した点字タイプライター方式の簡易文字入力装置の開発を行っています。現在のところ、写真1にあるような試作機が出来上がっており、理療教育課程在籍者により試用評価をしております。

 この装置は、6個のスイッチによる文字入力と他の4個のスイッチとの組み合わせによる簡単な編集機能のみ搭載しています。入力内容は随時メモリ内に保存され、読み出し操作により音声で出力することが可能です。機能は至って簡単で、カナ・英数字の文字入力と、カーソルの移動による文字の追加、削除程度であり、漢字変換やインターネット接続、MP3再生機能などの高い機能は全くありません。授業時のメモ機としての役割なので、すばやくメモが取れる機能に主眼を置いています。

 大きさは、理療教育課程の学習形態(複数の教科書を持参する、1日の授業において座学と実技が混じるため教室間の移動がある)などを考慮して、白衣のポケットに入る程度の小型化・軽量化を目指しています。写真の試作機は、W160mm×D100mm×H約30mm、重さ約380g程度、バッテリーに充電して連続使用6時間を目標としています。電源を入れると直ぐに起動するので、操作を開始するまでの待ち時間がほとんどなく、好評を得ています。今のところ音声辞書を搭載していないので入力した文字を滑らかに読むことはできません。今後、漢字変換が混じらないカナのみのテキスト文からどのように抑揚をつけて音声出力するか、パソコンとUSBケーブルで接続することで保存内容を転送したり、キーボードの代わりに入力する機能を付加させること、などが課題となっています。

 また、他の分担研究者の協力により手書きによる文字入力システムの開発も平行して行っております。こちらは写真2,3のように手書きした文字を認識するもので、現在、東洋・西洋医学辞書を搭載させて理療教育部の学習内容に適合させる作業を行っています。研究2年目の成果としては、文字認識エンジンに誤り訂正処理機能を実装し、これまでの一語入力から文として入力できる機能を実現しています。誤り訂正機能とは、文字の前後のつながりを考慮して、例えば、「能木県」と入力しても「熊本県」が候補に含まれるような機能です。なるべく正確に手書きする方が脳活動には良いと思われますが、うっかりミスを補助してくれる機能はありがたいものです。

 本研究は平成20年度が最終年度になります。2つのシステムが安定して稼動するようにブラッシュアップさせるとともに、普及のために全国の生活訓練施設、個人を目標として外部モニターを依頼し、生活訓練場面での活用を検討していく予定です。



(写真1)実技、臨床実習にも持ち込める小さくて軽い電子メモ帳

(写真1)実技、臨床実習にも持ち込める小さくて軽い電子メモ帳
左:10個のキー、縦100mm×横160mm×高さ約30mm、重さ約380g程度
右:イヤホンや外部スピーカーを接続<音声出力>



(写真2)手書きによる文字入力システム

(写真2)手書きによる文字入力システム
画面右側に手書きで文字入力



(写真3)手書きによる文字入力システム

(写真3)手書きによる文字入力システム
画面左側に候補文字と音声出力





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