〔学院情報〕
学院卒業生レポート
〜手話通訳学科〜
学院手話通訳学科



 平成15年3月に当学院手話通訳学科を卒業し、現在、携帯電話の聴覚障害者専門ショップ「ソフトバンクハンズサインセンター」で店長をされている伏原桃子さんに、学院時代の思い出や現在のお仕事について、お話を伺いましたのでご紹介します。


Q.現在勤務されている「ソフトバンクハンズサインセンター渋谷」について教えてください。
A.ソフトバンクハンズサインセンター渋谷は、聴覚障害者専門のソフトバンクショップです。2002年にオープンして以来、携帯電話の販売はもちろん、使い方の説明や相談など、すべて手話のできるスタッフが対応しています。聴覚障害者専門のショップですので、スタッフ全員が手話ができますし、もちろん筆談等での対応もしています。そういう意味では日本で唯一の形式の携帯電話ショップです。また、併設して手話教室も運営しており、特に、聴覚障害のお子様のいるご家族向けにはファミリークラスという無料の教室も開催しています。


Q.手話通訳学科に入学された動機は何ですか。
A.大学のときに手話サークルに所属していまして、そこである程度、手話で話ができるようになったと、ある時までは自分でそう思って満足していたんです。でも大学3年の頃から何となく物足りないような、自分の手話は中途半端なような気がして、手話をより深く学びたいと考えるようになりました。その時期というのはちょうど、卒業後の進路のことを考える時期でもありました。そんな時手話サークルの先輩から学院のことを聞き、「まさにここだ!」と思い、迷わず受験することを決めました。


Q.2年間を振り返ってみてどうでしたか。
A.とにかく楽しかった。その一言につきます。毎日「新しいことを吸収できている」と実感することができ、それが何よりも楽しかったのです。変な言い方ですが、子どもの頃に返ったような、そんな新鮮な楽しさがありました。その時はとにかく無我夢中でしたが、今振り返ってみると「手話という新しい言語」そして「その背景にある文化」という、それまでの20年近い人生で出会うことのなかった新しい世界の中に入っていくことの新鮮さを、日々体感できていることからくる楽しさだったのだと思います。


Q.印象に残っている科目は?
A.どれも印象深いのですが、中でも一番印象深いのが、イラストの中の光景をそのまま手話で説明するという授業です。どの授業でも、できるだけ日本語から離れて手話だけで考えるようにしなければならないのですが、この授業ほど、自分が日本語からいかに離れられていないかを実感する授業はありませんでした。と同時にその壁をいかに乗り越えてやろうかという負けず嫌いの精神も生まれてきて、それがまた楽しかったんです。でも、この授業は今の仕事をする上で本当に必要な訓練で、今でも仕事の合間に「あの授業があって本当によかった」とふと思い出すことがあります。


Q.今の職場を選んだ理由は何ですか。
A.そもそも接客業が好きでしたので、聴覚障害者と毎日接することのできる職場を希望していました。そんな時今の職場で新しいスタッフを募集しているという話を聞きました。手話で接客ができる仕事ということで、まさに自分の希望している通りの仕事でしたので、是非働きたいと思い、応募しました。


Q.現在はどのような内容の仕事をしていますか。
A.2年前から店長を務めています。通常の携帯電話ショップとしての店舗運営業務はもちろん、聴覚障害者に特化したショップということで、手話での携帯教室の開催や、聴覚障害者にわかりやすい取扱説明書の作成、スタッフの接客指導、育成なども行っています。また手話教室の運営全般にも携わっています。


Q.仕事上で一番やりがいを感じるのはどんなときですか。
A.とにかく、このお店に来てよかったと言っていただけることが何よりうれしいです。携帯電話は大抵の方が家の近くで購入されるものだと思います。でもハンズサインセンターは渋谷にしかありませんから、電車やバスで何時間もかけてわざわざ来ていただく方も多いのです。群馬や茨城、静岡、長野など遠方からご来店いただく方もめずらしくなく、時間や交通費をかけてでも足を運んでいただけるというのは本当に光栄なことです。また、一度来ていただいた方がまた、ご友人を連れてきていただくことも多く、それだけご支持いただいているということを本当にありがたく感じますし、同時に責任も感じています。


Q.仕事をしていく上で、心がけていることはどんなことですか。
A.お客様の要望をきちんと捉え、それに合わせた提案をしていくことが一番大切だと考えています。携帯電話は聴覚障害者にとって、私たち以上に必要不可欠なものです。だからこそ、当たり前のようにご自身のニーズにあった製品、サービスを選んでいただきたいと思っています。これは極めて当たり前のことです。でも聴覚障害者にとって、そんな当たり前のことが難しいという状況が一般のお店では起きてしまいがちです。そこで、ハンズサインセンターに来ていただければそれができる、という状態を常に作っておかなければならないと考えています。そのために、「手話で説明できる」だけでなく「手話で提案できる」ショップづくりを日ごろから心がけています。


Q.これから学院手話通訳学科に入学されようとしている方々にメッセージをお願いします。
A.2年間はとにかく本当にあっという間です。でも確実に自分の視野を広げることができる2年間になるはずです。とにかく楽しんで、手話という新しい世界に飛び込んでいただきたいと思います。







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