〔病院情報〕
病院紹介シリーズ⑦
「第三機能回復訓練部」
 



 第三機能回復訓練部(以下、三訓)は、視覚の障害に起因する問題に対応する部門です。スタッフのほとんどが診療部の眼科と併任し、入院および外来の患者様に対して、検査、診察、治療を行っております。
 それに加え、眼の病気などを治療しても、視力や視野などに障害が残り、日常生活に不自由を感じている方に対して、眼科医師、視能訓練士、生活訓練指導専門職およびソーシャルワーカーという専門の技術を持つスタッフが対応を行う「ロービジョンクリニック」を開設しています。
 この「ロービジョンクリニック」は昭和58年10月に設置されました。昭和59年4月からは更生訓練所指導部の協力を得て、社会適応を担う生活訓練指導専門職兼ソーシャルワーカーが派遣され、医学リハビリテーションのみならず社会リハビリテーションサービスも行うことが可能となりました。この医療と福祉の連携によるサービスの提供により、患者さまの見えづらさの改善を図り、生活の質の向上、社会復帰をめざし、25年の歴史を刻んできました。
 当時は、まだ治療中心の医療が一般的であり、見えにくさに対するリハビリテーションを行っている施設は少なく、試行錯誤の繰り返しでしたが、少しでも患者様に満足していただけるケアを行いたいとの思いでスタッフ一同、努力をしてまいりました。
 平成4年には患者会「愛・eye・会」が設立され、親睦交流を中心とした、定例会や旅行、子供の会「トコロキッズ」などの活動が行われています。
 現在は、平成20年2月より着任しました仲泊聡新部長のもと、眼科医3名(内非常勤1名)、視能訓練士3名、生活訓練指導専門職兼ソーシャルワーカー1名により、現在までの「ロービジョンクリニック」の伝統を引継ぐとともに、更なるロービジョンケアの発展を目指し日々の業務を遂行しております。
 ロービジョンクリニックの具体的な流れとしては、まず眼科医師による診察、治療、病気に関する相談などを行います。そして、医師の指示のもと視能訓練士による視機能検査、拡大鏡、遮光眼鏡などの補助具の選定、生活訓練指導専門職およびソーシャルワーカーによる歩行訓練やパソコン訓練、日常生活に関するア ドバイスや相談等を行っております。さらには必要に応じて、入院による訓練も実施しています。
 また、三訓では、視覚に障害を持つ患者様が、いつでもどこでもロービジョンケアを受けられるようにロービジョンケアに携わる医師、医療機関の拡大をめざし、平成3年度より「視覚障害者用補装具適合判定医師研修会」を行ってきました。今回までに参加された眼科医師は総計230名となっています。
 平成19年度は3月5日〜7日の3日間行われ、全国より20名の先生方が参加されました。研修会では、ロービジョンケアに必要な知識の講義のほかに、実際に視力障害や視野障害を体験できるゴーグルを装用してのシミュレーション体験や、ルーペや遮光眼鏡などの補助具の選定方法のロールプレイなどを行いました。この研修会を修了された先生方により、全国の眼科にロービジョンクリニックが広がりつつあり、一歩づつではありますがこの成果が現れてきているようです。
 最後に、ロービジョンクリニックでは、次の様な理念に基づき活動を行っています。
<理念>
1.患者さまが受診したことに喜びを感じられる医療を行う
2.チーム医療を行う
3.患者さまに対して正確な情報を伝えサポートを行う
4.他機関との連携を行う
5.ロービジョンに対するEBM(Evidence Based Medicine)を実践する
6.ロービジョンに関する啓蒙を図る
※EBM(Evidence Based Medicine):根拠に基づいた医療

今後もこの理念のもと一人でも多くの患者さまに満足していただけるようスタッフ一同、努力していきたいと思います。