〔学院情報〕
平成20年度学院入学式
学院事務室


 この日を待ちかねたように桜の花が満開に咲きそろった去る4月3日(木)の10時から、当センター学院講堂において、新入生59名を迎え、平成20年度入学式を開催しました。
 この式典では、開会の冒頭、中島学院長から式辞がありました。(別記1)
 続いて、岩谷総長より祝辞が述べられました。(別記2)
 引き続き、新入生紹介のあと、リハビリテーション体育学科2年の寺本朋弘君が、歓迎のことばを述べました。(別記3)
 その後、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長中村よしお様などからいただいた祝電を披露しました。(別記4)
 最後に、当日参列された当センターの幹部職員の紹介を行った後、学院歌を斉唱して終了しました。 以下、各学科の新入生の寸描などを紹介します。

言語聴覚学科
 爽やかに晴れわたった空の下、桜の絨毯を踏みしめて入学したST学科30期生は、平均年齢23.7歳と今までになくフレッシュな30名(女性26名、男性4名)が揃いました。出身は例年、心理、福祉、語学系が多いのですが、今年は教育系が多くみられました。一方、理科系の出身者も例年より多く、芸術、看護などの出身の方も見られ、多岐にわたります。また、元気な人が多いのも特徴的で、例年にない明るい雰囲気が漂っています。残念ながら8月までの土曜日はすべて講義で埋まり、それも17時までがほとんどという、ハードスケジュールは変わりませんが、心身の健康にも十分気をつけ、励んで欲しいと願っています。

義肢装具学科
 27期生として10名が入学し、男性6名、女性4名で平均年齢22.5歳と昨年同様の年齢層になりました。高校新卒者が3名、大学新卒者が4名、そして社会人経験者が3名とバランスのとれた内訳になりました。このようにバックグラウンドもそれぞれ異なる10名ですが、既に義肢装具士の業務には一生ついて回る石膏による実習で、真っ白になりながら頑張っている毎日です。
入学前に抱いていた初心を忘れずに国リハという恵まれた環境の中で自己の可能性を伸ばし、各人が抱く理想の義肢装具士になってくれることを期待しています。

視覚障害学科
 視覚障害学科は平成2年度の開設以来最も少ない3名の新入生を迎えました。どっしり構えて落ち着いたお兄さんに、新卒の元気な二人の妹という兄妹です。大学では工学、福祉、心理と三者三様の分野を修めています。三人がそれぞれの個性を生かし、各自の持っている知識や技術を出しあって助け合えば、人数以上の2倍、3倍の力を発揮できると期待しています。視覚障害者の自立をサポートする専門職をめざして、全員がそろって卒業式を迎えられるよう応援しています。

手話通訳学科
 この春手話通訳学科に19期生13名(男性2名、女性11名)が新たに加わりました。今年は例年見られる東北出身者の姿がなく、首都圏および西日本の出身者で構成されています。年齢は40代が2名いる他は25歳前後が大半を占めています。大学新卒者もいれば社会経験者もおり入学前の経歴は様々ですが、互いに刺激しあって頑張ってほしいと思います。手話を第二言語として学び始めたばかりの学生たちにとって、手話でのコミュニケーションにはまだ戸惑いがあるようです。まずしっかりと基礎を身につけ、学院生活を大切に過ごしてほしいと思います。今後の成長に期待しています。

リハビリテーション体育学科
 今春、18期生3名(男性)の新入生を迎えました。開設以来、初めて女性がひとりも在籍しない期になりました。出身地は佐賀県、鹿児島県、岡山県で、年齢構成は23歳±1です。新卒者のほかに職歴のある学生もいます。例年、体育系大学を卒業して、保健体育の教員免許状を取得済みの新入生が多いのですが、本年度は体育系、教育系、福祉系大学と専攻は様々です。出身地、経歴などバックグラウンドが異なる学生が集いましたが、入学式からお互いをニックネームで呼び合うなど気心も知れ、休み時間には逞しい笑い声が教室に響いています。学習意欲も旺盛で、放課後には既に入所者の体育系クラブに積極的に参加しています。学生生活の中で多くのことを吸収し、充実した2年間を過ごして欲しいと願っています。



(写真1)「歓迎のことば」を述べるリハビリテーション体育学科2年の寺本朋弘君
(写真)「歓迎のことば」を述べるリハビリテーション体育学科2年の寺本朋弘君


〔別記1〕
平成20年度学院入学式式辞
 


 本日は満開の桜の中を入学式に参列された学生諸君ならびにご家族の方々には、学院長として心からお祝いを申し上げます。また来賓の方々には御来駕賜ったことを学院を代表して厚く御礼申し上げます。
 今回の入学者数は、言語聴覚学科30名、義肢装具学科10名、視覚障害学科3名、手話通訳学科13名、リハビリテーション体育学科3名の、合計59名です。これら5学科はいずれも、それぞれの医療・福祉専門職を養成する学科として、わが国で初めて開設されました。すなわち最も歴史がある学科です。このような歴史をもつ当学院に、難しい入学試験を経て入学を果たした諸君をここに迎えることを、学院長として私は誇りに思います。
 さて、諸君が学院でこれから2年間あるいは3年間学ぶということについて私の考えを述べます。諸君は専門職を目指してこれから知識と技術の両面で猛烈に学習することになります。大変厳しい課題をこなす毎日が続きますが、おそらく諸君はこれを余り辛く思わずにこなしていかれるだろうと想像します。なぜならば、高校や大学における授業と異なり、学院の授業が、これを学べば専門職になれるという、最もストレートで理解しやすい目的をもっているからです。中にはいくらか苦手な教科があったり、関心の薄い教科があったとしても、専門職になるために必要であれば、人は一所懸命に学ぶことができます。また、教官たちも諸君を一人前の専門職として養成するために決して手を抜くことはいたしません。国家試験がある学科では合格を目指して最大限の努力を惜しみません。これまで合格率は他のどの学校と比較しても常に最高でした。それでも学院が授業として教えることは、有用な社会人になるための半分に過ぎません。後の半分は自ら学ばねばなりません。それは一般教養を身につけるということです。英語で言うところのリベラルアーツです。
 諸君は将来、専門職として患者、障害者の方たちと直に接していくことになります。その時、学院で学んだ知識と技術は間違いなく役に立ちます。しかし、その知識や技術をどのように、またどのような場面で使っていくのか、それは一筋縄では行きません。理論の上では誤っていなくとも、患者あるいは障害者個人のそれぞれが一様に納得するわけではありません。この人にとって良かったことが、他の人にとって良いとは限りません。何が正しく、どのようにしたら良いか、判断するのは諸君自身です。その都度正しく判断するために必要な学問が教養であり、リベラルアーツです。一人の人間が一生の間に経験することはわずかです。30年間専門職を続けたら、適切に判断ができるようになるかと言えば、全くそうはなりません。広く教養を身につけることによって初めて可能になります。学院は専門職になるための知識と技術を授けます。それで半分です。後の半分は諸君が自ら努めて広く教養を身につけることにより、自分自身で正しく判断し、正しく行動できるようにせねばなりません。多くの本を読み、多くの人の話を聞くことにより教養を深める、その重要性を強調して御祝いの言葉といたします。
 本日は入学おめでとうございました。

平成20年4月3日
               学院長  中島八十一


〔別記2〕
総長祝辞
 


 平成20年度国立身体障害者リハビリテーションセンター学院の入学式にあたり、一言ご挨拶いたします。
 皆さん、入学おめでとうございます。ご家族の皆様にも心からお祝い申し上げます。
 桜の花が咲き誇り、ケヤキの新芽が萌え出す、この素晴らしい時に、大きな夢を抱いて集まってこられた皆さんをこの国立身体障害者リハビリテーションセンター学院にお迎えできることは、センターを挙げての喜びであります。
 皆さんは、我が国の障害を持つ人々への保健、医療、福祉の将来を担っていただく大切な人材であります。
 私たちは、皆さんをともに働く仲間として、将来を託す後継者として知識と技術を伝え、力を合わせて新しい地平を開いていきたいと思っております。
 我が国は、「障害者基本計画」において「21世紀に目指すべき社会は、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会とする必要がある」と宣言しております。
 共生社会とは、障害者が社会の対等な構成員として人権を尊重され、自己選択と自己決定の下に社会のあらゆる活動に参加、参画するとともに、社会の一員としてその責任を分担する社会であります。
 私たち国立身体障害者リハビリテーションセンターの活動は、この共生社会の構築に寄与することを目的とし、「利用者主体のサービス提供」、「時代の科学を動員した障害研究」、「機能的制限の軽減手法の開発」、「各部門の一体的・効率的運営」を目指しています。
 第二次世界大戦以降、障害者福祉の基本的思想は、憐れみ、保護、隔離を脱して基本的人権保障へと転換し、法律が改定され、制度の整備が進められてきました。
 医学は、長い間にわたって障害を病気・外傷、その他の健康状態から直接的に生じるもので、専門職による個別的な治療が必要で、治療あるいは個人の適応と行動変容を図ることにより障害を克服しようとして来ました。このような考え方を「医学モデル」といいます。
 それに対して、障害を持つ人々から、障害は主として社会によって作られた制約であり、障害は個人に帰属するものではなく、多くが社会環境によって作り出されたものと見る考え方が示され、障害を持つ人々の社会生活の全分野への完全参加に必要な環境の変更を社会全体が共同責任で行うべきであるとの主張がされました。このような考え方を「社会モデル」といいます。
 このような障害を持つ人々の主張に、医学は態度の変更、学理の見直し、理論の再構築、治療方針の変更が迫られました。
 過去半世紀にわたる歴史の流れを経て、一昨年には国連において「障害者権利条約」が採択され、障害を医学モデルと社会モデルを統合した視点からとらえ、ノーマライゼーション、自立生活、完全参加、機会平等、差別禁止、多様性尊重の理念に基づいて、障害者福祉に関係する他分野・他職種と連携・協働することが求められる時代になっています。
 さらに、わが国は少子高齢社会となり、加齢による健康状態の変化、心身機能の低下により、障害を持つ高齢者が増え、機能維持・回復、障害の軽減は、健康施策における重要な課題となっています。
 障害の有無に関わらず、人格と個性を認め合い尊重することは、努力しても乗り越えることができない、身体の動きがうまくいかない、目が見えない、耳が聞こえない、言葉が話せない、物忘れする、計算ができないなどなどの心身機能、能力の違いをその人の属性として認め、社会で一緒に生活をする道を探していくことは、たやすいことではありません。
 皆さんは、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、音声言語障害のリハビリテーション専門職としてのこれらの問題に対処し、障害を持つ人と持たない人との間を取り持って、共生社会のために貢献する知識と技能を勉強をするためにこの学院に来られたのです。
 私たちは、その高い志に大きな期待を寄せるものであります。専門とは、広く豊かな基礎知識のうえにあってはじめて、その高さが役立つものであります。専門職にある者が互いに力を出し合って共に働くことにより、初めて病気→障害を持つ人々の便益を最大にすることができます。
 幸い、このセンターには、多くの異なった障害を持つ方々がおられます。皆さんが専門とする障害以外の障害についても、知識と経験を学ぶようにしてください。
 これから、皆さんと一緒に学び、遊び、センターの歴史を育んでいきたいと思います。
 健康に気をつけて、豊かな学園生活を送って下さいますよう希望します。

 平成20年4月3日
            国立身体障害者リハビリテーションセンター総長 岩谷 力



〔別記3〕
歓迎のことば
 


 厳しい冬を耐え忍び、春を待ち続けた息吹が、この街のあらゆる場所に感じられる季節となりました。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。本日皆さんが本学院にご入学されたことを在校生一同、大変うれしく思います。
 これから学院生活を送る上で、色々と不安に思うことも少なからずあるかと思います。特に入学当初は新しい環境で今後頑張っていけるかどうか不安になることや落ち込むこともあるでしょう。そんな時は一人で考え込まず、同じ学科の友人はもちろん、私たち上級生にも相談をしてみてください。生まれた場所やこれまで歩んできた人生も異なってはいますが、学院生活を経験してきた先輩として、また同じ道を目指す仲間として、きっと力になることが出来ると思います。
 本学院には、言語聴覚学科、義肢装具学科、視覚障害学科、手話通訳学科、リハビリテーション体育学科の五つの学科があります。各学科では、それぞれの分野における専門職のための多彩なカリキュラムが組まれており、そのカリキュラムに一生懸命取り組んでいます。勉学に励んでいると、一年が過ぎるのは本当にあっという間です。特に、所沢は比較的緑が多いので、季節の変化を肌で感じることができ、なおさら時の流れが早く感じられます。ですから、皆さんにはぜひ一日一日を大事にして過ごしてもらいたいと思います。
 センター内には学院のほかに、職業訓練や生活訓練を行う更生訓練所や病院、研究所などがあり、実習でお世話になる機会があります。各学科で組まれてあるカリキュラムの中にはこういった施設における実習があります。実習を通じて、講義で学んだ知識や理論を実際に体験し、より深く理解することが出来るでしょう。そして、実際に障害のある方と接することで自分の対応の仕方や考え方など、普段の講義では得ることが出来ない貴重な経験や今まで知らなかった自分を見つける機会にもなるはずです。
 また、普段の講義以外にも、他学科の人たちと交流が持てるスポーツ大会や交流会、そしてセンターを利用されている方たちと協力して行う体育祭や並木祭といった行事があります。こういった機会を大いに利用して、より多くの人たちと交流を持つことが出来るでしょう。
 最後になりますが、私たち上級生も気持ちを新たにして、また新入生の皆さんは、今日この瞬間に持っている希望や情熱を忘れることなく、これから一緒に頑張っていきましょう。  以上、皆さんのご入学を心からお祝いし、歓迎の言葉とさせていただきます。

平成20年4月3日
リハビリテーション体育学科二年  寺本 朋弘



〔別記4〕
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長祝電
 


 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院に晴れて入学された皆様、おめでとうございます。これから本学院で、身体障害者のリハビリテーションに関する専門的な理論及び技術をしっかりと身につけていただき、将来、各地域において先導的、指導的役割を果たし、ひいては、障害者の自立と社会参加を推進していくことを期待しております。どうぞ健康に留意されながら一生懸命頑張って下さい。

 平成20年4月3日
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長  中村 よしお