〔巻頭言〕
国立障害者リハビリテーションセンターのスタート
更生訓練所 自立訓練部長 西村 茂



 昭和54年7月、これまであった在京3施設を統合して医療から職業訓練まで一貫した総合リハビリテーションを実践する施設として「国立身体障害者リハビリテーションセンター」が開設されて30年目を迎えました。
  この間、多くの先達や仲間と共に身体に障害がある人達のリハビリテーションの向上を目指して、先駆的な役割を果たすべく、それぞれが専門の分野で或いは相互に連携しながら前進してきたところです。
  創立30年の節目の時期に、身体に障害がある人達に加えて高次能機能障害や発達障害のある人達など、障害全体を視野に入れたリハビリテーションの取り組みを行うこととして、本年10月から「国立障害者リハビリテーションセンター」と名称が改称されました。長年、慣れ親しんできた「国立身体障害者リハビリテーションセンター」の名称が変わってしまうことに些か感傷的になってしまうのも秋のせいなのかもしれません。
  平成18年10月からは障害者自立支援法の施行に伴い、指定障害者支援施設として新たな一歩を踏み出し、平成19年度から開始した青年期発達障害者の地域生活移行支援を目指したモデル事業は、本年10月から発達障害者情報センターの移管や発達障害診療室の新設を受け、更に強化された取り組みが期待されるところです。
  更生訓練所でも障害者自立支援法の趣旨を踏まえ、障害全体を視野に入れたリハビリテーションの取り組みを行うため、10月から組織を再編いたしました。その詳細は他に譲るとして、組織再編には二つの大きな方向性が見えると思います。
  一つは就労支援の強化です。障害がある人達が自立した生活をおくるうえで経済的自立は極めて重要なことです。これは障害者自立支援法の大きな柱でもあり、地域においても障害がある人達に対する積極的な就労支援の取り組みが始まっています。これらの取り組みを行っている地域のネットワークと連携して一人でも多くの方を就労に結びつけ、更に職場に定着していただけるよう支援することが必要です。
  もう一つは、障害があることによって日常生活に介助を要する人達の自立を支援する機能が加わったことにより、機能訓練等を提供して脱介護を目指し、また介護を必要としながらも経済的自立を図るための取り組みを積極的に行うことです。そのためには訓練や生活する設備を改善する必要もあり、準備を進めているところです。
  これら新たな取り組みや機能強化を実現するためには、医療から職業訓練まで一貫したサービスを提供するセンターの機能をこれまで以上に高める必要があるでしょう。
  創立30周年目を迎え、名称変更された「国立障害者リハビリテーションセンター」が名ばかりの変更で終わらぬよう、そして新たな取り組みが絵に描いた餅に終わらぬよう、私たちが新たな歴史の一ページから障害がある人達の自立を支援する方法を書き込みたいものです。