〔魚拓シリーズ21〕

「マダイ・クロダイ」

前更生訓練所理療指導室長 川政 勲

 


 マダイはタイ科タイ亜目で北海道以南の日本周辺海域、尖閣諸島、朝鮮半島南部、黄海、南シナ海に分布。奄美諸島、沖縄諸島には居ない。
 鯛の仲間には、ヘダイ、チダイ、キダイ、クロダイが居る。
 チダイは関東・東北地方ではハナダイと呼ばれている。 
 クロダイは、チンチン、カイズ、クロダイと大きくなるに従い名前の変わる出世魚の代表とも言える魚である。
 鯛は海の姫君とも言える気品があり、釣り好きにとっては憧れの魚である。と同時に日本人にとっては欠かせない目出度い魚である。
 日本人の感覚の中には赤いものを目出度いとする意識があって、赤い社殿、赤い鳥居、赤い伊勢海老、それに鯛が珍重されるようである。
 伊東に勤務した年の暮れ、正月用にと、義兄と二人で下田の船に乗り鯛を狙ったことがあった。
 風が強く、いつものポイントへは行けず、近場で鯛を狙うことになった。カワハギなどが多く釣れ、誰の竿にも良い魚は釣れずにいたところ、私の竿が大きく撓った。鯛が掛かったら慎重に上げないと、暴れて糸が切られてしまう。
 素人の私はそんなことは知らないから、夢中で巻き上げ、ようやく船の中に取り入れたが、ハリを外そうとして、鯛に噛まれて左手が血だらけ。
 でも計ったら3キロもある真鯛。船でただ一人。得意な顔で下船した。
 まだ魚拓を習って1年弱。そんな大きな魚を打ったことが無い。やむを得ず、新聞紙を広げ、大きさ(60センチあった)を分かるようにして写真を撮り、年越し用の刺身と、アラ汁として美味しく頂いた。

 

肩に手を置かれ納竿冬夕焼け  いさお


(写真)マダイ・クロダイ

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