2009年年頭あいさつ
総長 岩谷 力



 新年あけましておめでとうございます。
 昨年は一年間職員の皆さんの力を合わせて業務をとり行うことができましたこと大変嬉しく思います。年末、年始に勤務された職員の皆様のご苦労に感謝を申し上げます。
 昨年後半には、100年に一度といわれる経済不況に見舞われ、世界的な優良企業ですら赤字決算となってしまいました。約30年前に自由主義市場、規制撤廃へと改革が始まって以来、先進諸国がこぞって「私の利益」を追求し「公の利益」への配慮が欠けた結果、個の自由が行き過ぎてしまったのでありましょう。わが国においても、正規雇用と非正規雇用労働者の間、世代の間、地域の間など、いろいろな階層の間の格差が拡大し社会に不公平感が広まっております。 障害者福祉も逆風にさらされております。
 このような時こそ、事の本質を考えなければなりません。我が国は戦後60年をかけて福祉国家を築いてきました。私たちは、この社会の仕組みを時代の変化に合わせて発展させていく責任を負っていることを自覚しなければなりません。センターは日々の業務を通して、問題を探り、解決策を編み出し、提言する組織、集団となりたいと思います。
 昨年一年を振り返ってみますと、10月には、センターは国立身体障害者リハビリテーションセンターから国立障害者リハビリテーションセンターに名称が変更され、更生訓練所の組織が改定され、さらに発達障害情報センターが本省から移転されました。
 更生訓練所は、指定障害者自立支援施設として事業が軌道に乗り、新たな支援プログラム開発に積極的な取り組みが始まっております。
 病院は病院機能評価の認定を受けることができました。発達障害外来診療も始まり、次代への芽吹きが感じられます。
 研究所は、いくつかの基礎研究に基づいた新技術の臨床応用が進められております。
 学院においても、リハビリテーション専門職の技能向上への地道な努力が重ねられております。
 このように部門毎の前に向かっての努力に加えて、部門間の連携による新規事業、研究がいくつも行われるようになったことは、大変喜ばしいことであります。何度も繰り返すことでありますが、私たちのセンターは4つの部門が単独では、国内の同様の施設との差別化をはかることは難しい現状にあります。しかし、4つの部門がまとまり、さらに国立職業リハビリテーションセンターと連携することにより国際的にもきわめてユニークな研究・実践機関として障害者リハビリテーションに貢献できることとなります。障害者の保健・医療・福祉の研究・サービス提供・人材育成のトップランナーとして、共生社会の構築に寄与してこそ、国立施設としての存在意義があると考えられます。皆さんの力を、合わせて前に進みましょう。
 昨年秋に本省障害保健福祉部内に国立施設の見直しに関する委員会が組織され、将来計画の検討がはじまりました。センター全体の見直しの方向性が定まります。一昨年末に皆さんの協力を得て作成されましたセンターの見直しに関する中間報告の実現化にむけて皆さんと力を合わせて一歩ずつ前に進みたいと思います。
 昨年8月には極めて遺憾な事件がありました。この事件は、公務員としての倫理観の欠落が最大の原因と考えられますが、そのような不祥事の発生を招いたことについて、検証と反省の目を向けなければなりません。昨年10月から法律、医療、会計の専門家の先生方にお願いをして、「病院における医療機器納入にかかる不祥事の検証と再発防止のための第三者検証委員会」を組織し、医療機器購入契約等の妥当性の検証と再発防止への提言をお願いいたしましたところ、以下のご指摘・提言をいただきました。

 私たちは、この事件を重く受け止め、すでにいくつかの改善策を実行に移しておりますが、職員各位におかれましては、国家公務員としての倫理を再度徹底し、業務の公正性、透明性の保持に一層努めるセンターとなりますよう努力をお願いします。
いずれ、公判を通じて、この不祥事の全容が明らかになりました時点で、センターとしての改善策を策定し、実行に移してまいります。また、しかるべき処分をいただき、襟を正して参る所存であります。皆さんのご理解とご協力を切にお願いいたします。
以上、年頭にあたり所感を述べました。今年は創立30周年をむかえ、記念式典の準備も始まっております。これまでの歴史を振り返ると共に、次の時代を先導するセンターとしての第一歩を踏み出す年であります。全員で力を合わせて、確実に日常業務を遂行し、新たな目標に向かっての活動に積極的に取り組んで下さい。