〔卒業生訪問シリーズ〕
手話通訳学科卒業生の就職先を訪問して
管理部企画課



今回は、センター学院手話通訳学科を卒業し、現在アクサ生命保険株式会社にお勤めの神戸 仁(かんべ ひとし)さん(2000年3月卒業)と森宗 美里(もりむね みさと)さん(2006年3月卒業)のお二人にお話を伺いました。

 

1. 現在の職場(所属先、仕事の内容)について
  −現在の職場について教えて下さい。
  (神戸)
    人事総務部のオフィスサービスチームに所属しています。仕事の内容は、社内郵便の発送業務および各種帳票の管理・発送業務です。私は、チームを統轄する立場にありますが、12名いるスタッフ全員がろう者ですので、手話の技術・知識は必須です。
   (森宗)
      神戸さんと同じく人事総務部オフィスサービスチームに所属しています。採用されて2年目になります。手話通訳業務、印刷物の受付業務等を担当しています。
   
  −お二人とも、センター学院で学んだ手話通訳の知識・技術の活かせる職場で活躍されているのですね。仕事をするうえで大変だと感じることはどんなことでしょうか。
  (神戸)
    スタッフに自分たちが担当している業務の重要性を理解してもらうことですね。多くの郵便物・書類を扱っている業務ですが、その使用用途や、実際に使用する営業社員や顧客について知ってもらうことが非常に困難です。目の前にある業務は理解し易いのですが、社員や顧客がそれらを実際にどのように活用しているのかなど理解してもらうのがとても難しいと感じています。
  (森宗)
    私の場合、手話通訳メインでの採用ですので、手話通訳業務のウェイトが高いのですが、事務作業も行っていて、入社当初は通訳者としての役割と社員としての業務の切り替えに特に苦労しました。それと、通訳に当たって、通訳者の言い方や語彙の選択が職場での人間関係、評価にも繋がることがありますので、その点を特に注意しながら仕事をしています。
   
  −現在の職場に就職した理由は何でしょうか?
  (神戸)
    手話通訳を必要とする一般企業への就職を望んでいたためです。
  (森宗)
    在学中に行った職場見学、実習を通し、ろう者と聴者が一緒に働いている環境に感銘を受けたためです。
   
  −実際に働くようになっていかがですか? ろう者と聴者との間の壁や共に働くことが困難であると感じることがありますか?
  (森宗)
    そうですね、共に働くことが困難であるとは特に感じませんが、情報量の格差を実感することはあります。
   
  −職場内での聴者とろう者との間の情報量の格差やコミュニケーション上の問題を解消する為に、社内で何か工夫していること、取り組んでいることがありますか?
  (神戸)
    言語によるコミュニケーションというよりも、行動や考え方の違いなど文化的なところで摩擦を感じることが多々あります。そういうこともあって、ろう者が主体となって手話サークルを設立し、手話およびろう者について学ぶ場としています。また、手話通訳者がさまざまな方面へレクチャーしたことにより、今では会議またはイベント時には必ず手話通訳がつくようになっています。
   
  −仕事でやりがいを感じるのはどんなときですか。
  (神戸)
    スタッフが、他部署や営業店に対してメールで連絡が取れるようになったり、聴者も交えたワーキングチームの中で積極的にリーダーを担当し、その職務を全うしている姿を見たときです。
  (森宗)
    他部門とのミーティングや部全体のミーティングの際に通訳をすることによって、社内に聴覚障害を持つスタッフがいるということが認知され、理解が少しずつ広まっていくのを感じています。そんなときこの仕事をしてよかったなと思いますね。
 
2. 国リハセンター学院手話通訳学科を志望した理由
  −センター学院手話通訳学科を志望した理由、きっかけは何ですか。
  (神戸)
    手話および手話通訳について理論的・体系的に学びたいと思ったためです。私の場合、地元の手話講習会で手話を学んでおりまして、その地元が所沢であり、講習会の助手や手話サークルに国リハの先輩が数多くいました。そういった方々から勧められ、手話通訳学科に入りたいと思うようになりました。
  (森宗)
    前職ではホテル内でのサービス業に従事しておりました。お客様の中にろう者の方もいらっしゃることがありましたので、コミュニケーションがとれればと思ったのがきっかけです。その後、地域のサークルに見学に行ったこともありましたが、もっと専門的に手話を学びたいと思い手話通訳学科を受験しました。
 
3.センター学院での思い出
  −センター学院での生活や勉強で思い出に残っていることは何ですか。
  (神戸)
    通訳演習と卒業研究発表会に向けた準備です。通訳演習については、わからない学生同士でああでもない、こうでもないと議論するのがとても楽しくためになりました。卒業研究発表会への準備ですが、手話に関するビデオを頭が痛くなるぐらい見ました。この時ばかりは手話が嫌いになりかけるほどとてもうんざりしてしまいましたが、今となってはいい思い出です。
  (森宗)
    卒業研究発表会、並木祭の準備、バレーボールクラブでの交流です。特に卒業研究発表会は4人のグループで行いましたが、ついつい話が脱線してしまったり、直前まで意見がなかなかまとまらず、嫌な雰囲気になってしまったり、と色々なことがありました。最後には、徹夜で資料作成を行いました。当日も、フラフラになりながら発表をしたという苦しい思い出ではありますが、準備の時にろう者にインタビューをしたことや、大勢の前で発表した経験は、現在の通訳の基礎がつまっていたのではないかと思っています。
 
4. 現在手話通訳学科で勉強している後輩へのメッセージ、アドバイスなど
  (神戸)
    手話通訳学科で教わったことを、きちんと社会に還元できるよう頑張ってください。
  (森宗)
    学院でしか学べない事がたくさんあります。時間を有効に活用し、学べることはすべて吸収できるように頑張って下さい!!
 
5.これから手話通訳学科に入学しようとしている方々に向けて、センター学院のPRをお願いします。
  (神戸)
    本来あるべき姿の手話および手話通訳技術を学ぶことができる所です。プロフェッショナルを目指す方にはぜひおすすめしたいと思います。
  (森宗)
    同期、先輩方の出身地、年齢層も幅広く、ろう者の文化だけではなく、各地方の文化に触れることもできます。学習環境もお勧めです。


(写真)右が神戸さん、左が森宗さん
(右が神戸さん、左が森宗さん)


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