〔国際協力情報〕
WHOからの訪問について
管理部企画課


 3月9日(月曜日)にWHO本部の障害とリハビリテーションチーム(DAR)のMr. Chapal Khasnabis(チャパル)とWHO西太平洋地域事務局 の小川 尚アドバイザーが当センターを訪問しました。チャパル氏は日本障害者リハビリテーション協会主催のCBR(地域に根ざしたリハビリテーション)セミナーの講師として来日し、併せてWHOの指定研究協力センターである当センターの活動を視察しました。
 はじめに“WHO指定研究協力センター”について簡単にご説明します。
WHO指定研究協力センターは、国連の機関としてWHOが行う事業に協力するための国際的ネットワークの役割を担っています。WHOは審査を通った各国の機関(施設、機関全体のみならず、全体の組織の中の“部”や“研究室”単位で指定を受けることもできます)を指定研究協力センターとして認定します。指定研究協力センターの役割は、各分野の国内外における活動、情報・技術の収集と普及(開発、研究、研修等)を通じてWHO の事業を推進することです。指定の分野を標榜できるのは1か国1機関のみで、現在日本国内には32の指定研究協力センターがありますが“障害の予防とリハビリテーション”については当センターのみが指定されているのです。
 小川アドバイザーが所属するWHO西太平洋地域事務局は、WHOが世界を6つの地域(アフリカ、アメリカ、ヨーロッパ、東南アジア、西太平洋、中近東)に分けて管轄しているうちの一つで、フィリピンのマニラにあります。日本はこの西太平洋地域に属しています。セミナーを開催する際にWHO指定研究協力センターとして開催することの許可を得ることや、センターが作成しているリハビリテーションマニュアルを西太平洋地域の国々に配布してもらうなど直接的に関わる機関です。
 チャパル氏が所属するDAR (Disability and Rehabilitation Team) はスイスのジュネーブにあるWHO本部の“障害とリハビリテーションチーム”であり、DARは障害がある全ての人々が平等な権利と機会を有し尊厳を持って生きていくことを目的として様々な活動を行っています。今年中にはDARが世界各国とともに作成し、当センターも協力した、“障害とリハビリテーションに関する世界報告書”が発行される予定です。
 当センターはWHOを通じてリハビリテーション分野での国際貢献を行うため、平成7年5月に“障害の予防とリハビリテーションに関する指定研究協力センター”としてWHOから指定され、以降4年に一度再指定の申請を行い、昨年10月に4回目の指定を受けたところです。当センターが指定研究協力センターとして行った活動は毎年WHOに報告しています。WHOとの協力事項は文末をご覧下さい。
 前述したように、指定研究協力センターとしての活動を毎年報告はしていますが、実際の活動を見ていただく機会は滅多にないので、今回の訪問は当センターにとってもWHOに活動をアピールする機会となりました。
 当日は総長による概況説明の後、病院の理学療法、作業療法での臨床の状況、研究所の福祉機器開発部、運動機能系障害研究部、補装具製作部の研究・開発の内容、更生訓練所の就労移行支援の訓練の現場を見ていただき、最後に今後のWHOと当センターの協力等についての意見交換を行いました。
 意見交換においてWHOからは、当センターが有している技術や情報をガイドラインやマニュアルとして普及して欲しい、特に医学的リハビリテーション、福祉機器、義肢装具の分野が必要であるとの意見や、国際協力に関してはWHO、当センター、JICA、その他の機関が協力して活動できると良い等の意見が出され、また、本年はWHOが各国の指定研究協力センターを集めた会議等を開催するとの案内もありました。
 今後、当センターが障害とリハビリテーションの分野で国際貢献をするために、WHOならびに他の国の同分野の指定研究協力センターとの協力を推進したいと考えています。


(写真)前列中央がチャパル氏、右が小川アドバイザー
前列中央がチャパル氏、右が小川アドバイザー

WHOとの協力事項(2008年10月〜2012年10月)

(1) 障害をもつ人々の健康管理、障害の予防と軽減を図る保健、医療、リハビリテーション技術の研究と開発を行う。
(2) 社会生活能力を高め、経済的自立を促進する技術を障害をもつ人々とともに開発する。
(3) 障害をもつ人々のための地域におけるプライマリー・ヘルスケア、ソーシャルケア等の社会システムの現状について研究と開発を行う。
(4) 利用者が入手し易い福祉機器とその適合について、障害をもつ人々とともに研究と開発を行う。
(5) 障害をもつ人々に関わる保健・医療・福祉専門職の教育と研修のための手引き書を作成する。
(6) 障害をもつ人々のリハビリテーションに関する技術と情報の普及を図るため、研修、会議、セミナーを企画・開催する。