〔巻頭言〕

視覚リハ勉強会

第二診療部長 仲泊聡



 昨年、旧第三機能回復訓練部長であった私は、元三訓スタッフはもとより、現自立支援局、研究所、学院の有志の皆様と共に「国リハ視覚障害勉強会」を開催しました。そこでご教示頂いたことを元に、平成22年度の厚生労働省科学研究費を得ることができ、「総合的視覚リハビリテーションシステムプログラムの開発」プロジェクトがこの4月よりスタートしました。それに伴い、この勉強会を本年度より「視覚リハ勉強会」と改称し、センター内の視覚リハ専門家の皆様とともにこのプロジェクトを含め、視覚リハの横断的プロジェクトを進めていきたいと思っております。以下、その概要について説明させて頂きます。
 この勉強会の目指す先には、1)視覚障害に起因するマクロニーズのリアルタイムな把握、2)個別の支援計画に必要なエビデンスの集約とその参照、そして、3) 支援の実動部隊の安定的確保とそのレベル向上があります。マクロニーズは、全国規模の標準的必要性のことです。これまで、視覚障害者のニーズ調査というと主に特定施設の利用者を対象とした調査でした。その結果、その施設が更生施設なのか特別支援学校なのか、それとも病院なのかによって基礎疾患にも生活環境にも大きく偏りがありました。マクロニーズの正確な把握には、より幅広い母集団からのデータ収集が必要になりますが、それをリアルタイムで把握するのはかなり困難なことです。しかし、これを把握しないことには、時代に合った適切な施策を提言することはできません。
 また、視覚リハに限ったことではありませんが、障害の個人差は大きいため、個別の支援計画が必要です。しかし現在では、その支援内容は、担当になった施設の支援内容や所属する専門職員の経験に依存し、科学的な証拠に基づくものであるかどうかを判断することが大変困難です。これまで視覚リハの分野では、「どのような事例」に「どのような支援者」が「どのような支援」をすると「どうなるのか」を明らかにできるほど、システマティックな情報蓄積は行われてきませんでした。私たちは、それを構築し、個人情報保護に配慮しつつも、全国に散在する支援者が、いつでもどこでもその情報を参照できるしくみを考えていかなければなりません。そして、上記の二つを現実のものとするためには、当然マンパワーが必須となります。マンパワーには、数と同時に質が問われます。私たちは、必要な専門職の養成とともにそのレベル向上に努力しなければなりません。
 私たちが求める「総合的視覚リハビリテーションシステムプログラム」とは、「どのような事例にどのような支援者がどのような支援をすべきか」の指針を示すソフトウェアです。これに当初から正確な回答を求めることは困難であり、無謀とも思われます。しかし、視覚リハに携わるものが皆で協力し合ってデータを入力し続ければ、しだいにその回答は尤もらしいものに近づいていくでしょう。もし、このようなソフトがあれば、それは、全国の視覚リハの支援者にとって便利なツールになります。そして、適切な回答が得られれば得られる程に使用頻度が高まります。頻度が高まれば、回答の精度が上がると同時に、入力データの集計によりリアルタイムなマクロニーズの把握が実現します。このようなプログラムには、管理人が必要です。そして、それこそが当センターの役割であり、その道先案内人の役を「視覚リハ勉強会」がしていくべきと私は考えます。なお、当勉強会は、ご賛同頂けるセンター職員が参加できる開かれたものとして、今後、原則として毎月第三金曜日の17時以降に開催していく予定です。