〔国際協力情報〕
国際協力機構(JICA)
中国中西部リハビリテーション人材養成プロジェクト
中間レビュー出張報告
赤居 正美


 私はこれまで国際協力機構(Japan International Cooperation Agency:JICA)からの協力委託を受け、何回か中国訪問を繰り返していますが、今回もまた8月23日〜9月3日にかけて中国出張となりました。ただし、夏休み時期の出張は患者や他の方々にとっては休暇と思われやすく、本来の夏期休暇取得は結局3日間のみとなってしまいました。
 このJICA「中国中西部リハビリテーション人材養成」プロジェクトは、遠隔教育のネットワークを作ってリハビリテーション技術者育成の地方展開を図ろうというもので、2008年4月から5年間にわたり実施されます。これまでに2009年4月から遠隔講義が開始され、担当部署の研修など遠隔教育を支える体制つくりも進行していますが、ちょうどプロジェクト開始より2年半の時点となったので、中間レビューを行うものです。プロジェクトの進行状況の確認と今後に向けて問題点の抽出・対応を協議し、その目的に沿って、当初策定したプロジェクト計画案の改定、関連する覚え書き(ミニッツといいます)の署名などを行いました。
 計画では陝西省、重慶市、広西チワン族自治区の3箇所をモデル地区にし、まず省レベルの人材を養成し、次いで下位への浸透を図るとの戦略をとっています。現地に派遣されている専門家への助言、中国リハビリテーション研究センターの幹部との面談を行うと共に、地方の対象3サイト、すなわち陝西省西安市、重慶市、広西チワン族自治区南寧市の関係者からのヒアリングと協議を行うためにこれらの3都市を順次訪問しました。
 この時期の訪問の課題としては、今後各省の中核となるリハビリテーション人材養成の具体的方法、インセンティブ、達成目標について、などが挙げられました。今回の訪問を通じて各専門領域で担当者との面談を繰り返したのですが、臨床課題の即席解決を求める中国側の傾向が未だもって非常に強いことを改めて痛感しました。自身の知識、技術をもとに臨床問題を自ら解決してもらいたいのですが、第三者(特に外国人専門家)に聞けば、常に解決策が提示されるという態度は非常に気になるところでありました。
 また遠隔教育機器、IT機器を使いこなすにあたり、北京側が1〜2回の技術研修を済ませて、ある意味義務を果たしたというばかりの姿勢を取りがちなのも気がかりになった点です。3サイトの現場では機器を十分に使いこなしていないばかりか、むしろ一部を使えなくしてしまっているにもかかわらず、悪いのは先方との態度は問題であり、以降の改善が強く求められる部分と思われました。
 北京にある中国リハビリテーション研究センターは病院部門(中国唯一の三級甲等リハビリテーション専門病院である北京博愛病院)、研究部門(リハビリテーション情報研究所とリハビリテーション技術研究所)、教育・訓練部門(中国各地の主として省に設置されているリハビリテーション施設の勤務者に対する短期研修を行うリハビリテーション学院)の三部門からなります。その教育、情報部門が中心となって本プロジェクトを実施しているわけですが、2年ぶりの訪問に至る間に病院には新しい外来棟が完成しており、首都医科大学の臨床課程を担う教育部門では義肢装具士の教育コースも始まっておりました。
 北京以外の3都市はどれも過去に訪問した場所ではありましたが、いずれも道路の渋滞が際だち、新しいビルの林立などハード面での発展には目を見張るものがあります。しかしホテルのフロントでのクレジットカードの処理などソフト面は未だしの部分が数多くありました。これもなかなか難しいところでしょう。
 これまで何回もJICAの仕事には参加していますが、人使いはどんどん荒くなり、今回も会議を終了したのは午後10時を回っているということもありました。また重慶は中国3大「火炉」として夏の暑さが有名な所ですが、日中は少し暑くても、朝夕はかなり涼しく、幸いにも猛暑の日本を脱出できて快適な滞在となりました。帰国までに真夏日が解消されていれば申し分なかったのですが、思惑ははずれてしまいまことに残念でした。

(写真)大雁塔の月   (写真)重慶・長江の埠頭
図1:大雁塔の月   図2:重慶・長江の埠頭