〔自立支援局情報〕
平成22年度前期授業公開実施報告
授業公開係 

 理療教育課では、自立支援局の教官を対象とした2つの教官研修会(教科教育研修会、臨床教育研修会)を実施しているところですが、今年度の臨床教育研修会では、実際の授業を外部の教育関係者に公開すると共に、研究授業を取入れることによってより実践的な研修会となるよう企画し、来年度以降に向けた試行として新たな取組みを実践いたしました。
 8月24日に実施した授業公開では、自立支援局関係職員だけでなく、近隣の小学校、盲学校、大学の教育関係者、および晴眼の理療養成機関の教員等、合計45名の皆様にご参加いただきました。
 研修スケジュールとしては、まず当センターで実践している2つの授業をご覧いただき、次にそれぞれの科目に精通した外部の見識者から、講評を交えた講演をいただく形式といたしました。このようなシステムは初めての試みでありましたが、参加された皆様からは、とても有意義な研修会であったとの評価をいただきました。
 公開した授業内容は、①普通科教官による人文科学Ⅰ、「対人援助のコミュニケーション」と、②理療科教官による臨床診察学、「腰痛を想定した臨床推論」の2つを設定いたしました。
 公開後に参加者からいただいたアンケートの一部を抜粋してご紹介いたしますと、「先生の温かな笑顔と声かけで、教室にホッとした空気の中で勉強しようとする意欲が感じられました。」、「大変エネルギッシュに、かつ相手と言葉のキャッチボールをしながらの授業は、考える場面が多く参考になりました。」など評価していただいた意見がある一方、「学力の幅を感じたので、個々への配慮が大切になると思いました。」「教官の話を聞いている活動時間が多かったように思いました。」といったコメントもいただき、授業を見つめ直す契機となる貴重なご意見もありました。今後も授業について真摯な態度で取組み、現在の授業に満足することなく、積極的に授業改革を進めていかなければならないことを痛感いたしました。
 次に授業の講評を交えてお二人の先生からご講演をいただきました。1つは人文科学Ⅰの授業公開を受けて、目白大学保健医療学部理学療法学科教授、目白大学大学院心理学研究科教授の奈良雅之氏から、「対人援助のためのコミュニケーション―心理学の立場から―」、もう1つは臨床診察学の授業公開を受けて、明治国際医療大学鍼灸学部准教授の福田文彦氏から、「臨床推論における医療面接の意義」と題してお話をいただきました。
 共に公開した授業を題材としてご講演いただきましたので、日ごろ実践している授業を客観的に見つめ直し、教官の実践研修として一連の流れによって充実した研修を行うことができたと考えます。
 講演についてのアンケート結果をご紹介いたしますと、人文科学Ⅰでは、「医療面接に患者への気付きを取入るのはとても有効であると思いました。」、「あはき心理学のアウトラインを上手く教えていただきました。」等のご意見が寄せられました。また、臨床診察学では、「改めて、臨床推論としての必要性を感じました。」、「医療面接を行ううえでのマニュアルの必要性の可否を考えるいい機会になりました。」等のご意見が寄せられました。
 現在の理療を取巻く環境の中で、医療面接ならびに臨床推論は重要なウエイトを占める分野であると考えテーマとして設定したところですが、アンケートの結果から考察すると、このことは多くの参加者が意識していることであり、教官の研修のみならず、今後の理療教育のあり方、さらには理療業界全体の発展に繋がるテーマ設定であったといえます。
 このことから、授業公開でいただいた貴重なご意見、講評でいただいたご指摘、講演の中でのご指導等、今回課題となったことを教官一同で共有し、課題解決に向けて取組むことが肝要であると思います。
 今回の前期授業公開は、教育関係者をお招きして教育体制の充実を図ることを目的としたため、教官研修会の一環として企画いたしましたが、後期には福祉や就労支援に携わる皆様にもご参観いただき、理療教育に関するご理解を深めていただくと共に、視覚障害者の就労に関してさらなるご協力を賜るべく後期授業公開を検討しております。
 今後もこの授業公開を通して、理療関係者、教育関係者、福祉関係者、就労関係者の連携を図り、就労移行支援(養成施設)におけるサービス提供体制の強化を目指していきたいと考えております。
 


(写真)奈良雅之教授による講演の様子
奈良雅之教授による講演の様子