〔巻頭言〕

2011年新年挨拶

総長 岩谷 力



 新年明けましておめでとうございます。昨年は中期目標を設定し、目標に沿った計画を立て、事業展開を始めた最初の年でありました。職員の皆さんには、それぞれの立場で職務に邁進していただきましたことを感謝いたします。
 今年も、工事が始まりました本館・病院の新築、組織改編に伴う秩父学園との業務調整、リハビリテーション機器モデルルームの開設、病院健康増進センターならびに臨床開発研究部の業務の本格化など、多くの課題に直面しております。皆さんと力を合わせて、達成して行きたいと思います。
 本館・病院の工事は4月以降に本格化いたします。平成25年2月予定の完成を無事迎えられるよう万全の体制で臨んでください。自立支援局に属することになりました秩父学園には、中期目標の設定、組織の改編、業務の統合、新規事業など取り組むべき課題が山積しております。課題は、管理部、自立支援局のみならず、病院、学院、研究所のすべての組織に関連しております。異なった歩みの2つの組織が一緒になるのですから、お互いに話し合いを深め、共に働ける組織としていただきたいと思います。その後には伊東重度障害者センターの統合も控えており、受け入れには建物・設備の整備、職員の能力向上が必要であり、自立支援局、病院が協力して準備を進めていただきたいと思います。
 さて、一昨年の政権交代を機に、障害者の制度改革に関する議論が活発になっております。我が国は21世紀の目標として共生社会の構築を挙げています。共生社会は障害のある人もない人も一緒になって築く社会であります。近年、障害は社会モデルでとらえる場面が多くなって来ました。社会モデルは、障害は社会の障壁により生じるものとして、社会を変えることにより障害を持つ人々の社会参加を促進しようとする考えです。
 障害のある人々の切実な要望を社会の制度に結びつけるためには、心身機能の低下(インペアメント)と社会参加の制約ならびに当事者の方々のニーズとの関連性を医学的、心理学的、社会学的に論理立ててわかりやすく説明することが必要になるでしょう。共生社会とは、障害のある・なしに関係なく同じ権利が保障されるという社会でありますが、どの範囲まで保障されるかは、様々な社会・経済的状況により決定されるもので、その決定は公平で社会に向かってわかりやすく説明されなければならないでしょう。これらの説明論理を考えるのは私たちの役目であると考えます。
 センターは単なる医療・福祉サービス提供機関ではありません。利用者、患者さんを多く受け入れて運営の健全化をはかることを最優先課題とする機関ではありません。我が国において障害と障害者への医療・福祉に関して研究、実践、人材育成、情報発信を主たる業務とする機関は国立障害者リハビリテーションセンター以外にありません。センターは世界的にも、きわめてユニークな存在で、我々のもつ知識、経験、技術は中国、ミャンマー、ベトナム、マレーシア、コロンビアなど多くの国の障害者施策の推進に貢献しています。
 私は、社会モデルに立った障害イメージを概念として実体化して、制度に活かしていく作業に取り組むべき時であろうと考えます。皆さんの毎日の仕事を通して、医学的なインペアメントが社会的な視点から見た障害にどのように結びつくのか、当事者の皆さんのニーズを満たすために、何が必要で、適切かを考えていただきたいと思います。  
 健康に留意し、目標に向かって楽しく仕事をして行きましょう。