〔センター行事〕
②研究所オープンハウス
研究所 運動機能系障害研究部 小川 哲也


 12月3日(金曜日)に当センター研究所を会場に開催された「研究所オープンハウス」について報告させていただきます。
 このイベントは日頃研究所で行われている医学、工学、心理学、社会科学などを基盤とした各分野の研究について広く一般に認知いただくことを目的に毎年12月の障害者週間にあわせて開催されています。平成18年度の初回以来今回で5回目の開催となりました。来場者は年々増加傾向にあり、今年度も医療福祉関連の専門職や専門職を志す学生、ご本人やご家族が障害を抱える方々、さらには近隣にお住まいの方々を中心に300名近い方々にご来場いただきました。各展示会場では研究担当者の説明に熱心に聞き入ったりメモをとったりする姿があちこちで見受けられ、また、たくさんのご質問、ご意見をいただくなど関心の高さを窺い知ることができました。
 研究所における業務の内容については一般になかなかご理解を得難い一面もあろうかと思いますが、このようなイベントを通してその内容を努めてわかりやすい言葉で一般にご説明する、ひいてはその意義をきちんとご理解いただくことは極めて重要であり、また、研究者としての社会的な立ち位置を確認する意味でも重要であると感じました。
 以下、各研究部の展示について代表的な内容をご紹介します。

○ 脳機能系障害研究部(今年度の10月に発足)
 脳が発する信号を読み取って、手足が不自由な方でも身体を動かすことなく家庭の電化製品などの機械を操作(生活環境を制御)することのできる技術(ブレイン−マシンインターフェーズ)についての映像による紹介と、自閉症など発達障害の客観的評価・診断をできるようにするための検査方法について、パネルによる展示が行われました。

○ 運動機能系障害研究部
 損傷脊髄のメカニズムの解明と治療法の探索に関する分子生物学的な基礎研究や、ヒトを対象とした基礎研究の成果を基盤としたリハビリテーション方法の開発について、動画やパネルによる展示や、実験で使用する装置が紹介されました。また、主に脊髄損傷後に生じる褥瘡の予防に関して、動物モデルによるメカニズムの解明とこれに基づいた臨床応用の成果が紹介されました。

○ 感覚機能系障害研究部
 耳の聞こえない方が使う手話言語の学習をしやすくするための「手話言語―日本語」の電子辞書の作成に関する研究や、吃音(言葉がスムーズに言えず、どもってしまうこと)について、脳機能との関連づけた研究が紹介されました。

○ 福祉機器開発部
 障害のある人や高齢者を対象とした福祉機器、例えば手や足を切断した人が使う義肢や装具、車いすなどの移動支援機器、コミュニケーションを支援する情報機器、認知症のある人や発達障害のある人を支援するための福祉機器が紹介され、実際に使用体験をしていただきました。

○ 障害工学研究部
 網膜色素変性症による網膜の変性と再生に関する遺伝子解析に基づいた研究が紹介されました。また、障害者を支援する機器やそれらの部品の開発の過程についてのパネル展示や実際に開発された機器を用いたデモンストレーションが行われました。

○ 障害福祉研究部
 視覚障害・精神障害・発達障害・高次脳機能障害などの障害により通常の紙の本を読むことが困難な人に対する情報支援を目的とした情報機器(電子図書)による読み支援に関する研究や、特殊なニーズのある子ども(人)のきょうだいに対する支援システムの構築などが紹介されました。

○ 義肢装具技術研究部
 様々な義肢・義足・装具などの展示や、実際の義足ユーザーによる歩行のデモンストレーションが行われました。また、簡易歩行計測装置を用いて来場者の方々に歩様の計測を実際に体験していただきました。

○ 発達障害情報センター
 発達障害(自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの)に関する正しい、確かな情報の提供を目的とした書籍やウェブサイトなどが紹介されました。

(写真)オープンハウスの様子1   (写真)オープンハウスの様子1