〔学院情報〕
「脳卒中リハビリテーション看護」認定看護師
教育機関として認定される
 


 当センター学院に「脳卒中リハビリテーション看護」分野の認定看護師教育課程が認められ、平成23年10月から教育を開始します。
 なぜ脳卒中なのか、その背景には日本は世界に類をみないほど急速に高齢社会を迎え65歳以上の人が5人に1人といわれる現実があります。現在、介護が必要な方は450万人とも言われその原因疾患のひとつに脳卒中があります。脳卒中は、発生状況を示すことばで表現されているように、急に(卒=突然に)意識障害を伴って発症し、麻痺を伴うことが多く、その後の生活に大きく影響する病気です。1950年頃からは日本人の死因別の第一位で、国の政策として生活・食事内容の改善にむけて保健指導が行われ、1980年頃からは死因別では第三位となりましたが、現在でも年間約40万人が発症するといわれています。医療が進歩し、脳卒中医療は超急性期から積極的な治療と早期離床が有効であるというエビデンスが示されています。しかし、発症後に早期離床が進められずにリハビリ病院に廃用症候群の状態で入院される方がいる事も事実です。その状態は本人の苦痛の増強、訓練期間の延長、合併症の併発、機能障害の重度化、生活機能の低下による要介護状態の増加、家族の負担増、医療費の増加に繋がっていきます。
 日本看護協会は、少子高齢化、医療の高度化・専門化の中で、複雑な問題を抱える患者や家族に対応できる柔軟で質の高いケアの提供が出来る看護師が必要であるとして、特定の分野を限定して1994年「専門看護師」、1996年「認定看護師」を承認してきました。日本の高齢人口増加の中で、脳卒中は超急性期、急性期、回復期、維持期を通して患者の尊厳と疾病・障害の改善の可能性に目を向け、可能な限りADLの自立とQOLの向上を図る専門性の高い分野であり、専門知識と技術を有する看護師の育成が求められるとしてリハビリテーション看護の普及に尽力している2学会が協力して認定看護の分野を申請し、2009年2月に日本看護協会で「脳卒中リハビリテーション看護」が認定されました。
 当センターは、国の機関として医療・福祉・研究・教育に関与する役割を担っています。医療・福祉に関係する多様な専門職がおり、教育機関である学院を有していることは他に例のない施設です。今後も増加が予想される脳卒中患者に深い知識と技術をもって対応できる認定看護師教育に関わることは、センターの目的である人材育成に繋がるものとであると取り組みを進め、静岡・愛知看護協会へ見学に出かけ励ましを受けました。「何故、国リハでするのか」は本省から常に問われた質問でした。学院とともに確認しあってきましたが、新規事業を要求する時のハードルの高さを実感いたしました。幸いに当センター総長はじめ幹部の理解が得られたことは大きな一歩になりました。最大の課題である主任教員、専任教員の確保では、当センターに勤務経験があるつくば国際大学教授の長島先生とつくば国際大学のご協力が得られました。専任教員候補は急性期病院に長期研修に出て条件を満たす方法を選択しました。長期研修の実現は当センターにとって初めての事であり管理部のご理解に感謝するのみです。外部の実習施設、講師をお願いした皆様方からは「国の役割でしょう」「できるだけ協力をさせていただきます」との積極的な協力を得られました。センター内部の専門職の皆様にも講師をお願いしております。このような準備を経て書類を整え平成22年8月末に日本看護協会に申請し付帯条項付きでしたが10月末に認定を受け、その後に付帯条項もクリアすることができました。厚生労働省の予算は3月の大震災の影響もあり遅れましたが、平成23年3月末に国会を通過し平成23年10月教育開始にむけて4月から研修生募集の準備をしています。
 人はだれもが1年ごとに年を重ね全身的な機能低下の途中にいます。その中で健やかに生活を楽しむ人生でありたいと思うのは万人共通でしょう。人生の過程で望まない状況が発生してもその人らしく生活できるように知識・技術を有した専門職によって治療・看護を受けたいとの願いも万人共通でしょう。この教育課程は国の施設として国民の健康を守る大きな使命に貢献することであり、育てていく価値の高いものであると信じています。

(前脳卒中リハビリテーション看護認定看護師
教育課程設立準備委員会委員長 横田美恵子)


(写真)認定看護師 教員室
認定看護師 教員室