〔病院情報〕
病院紹介シリーズ
「リハビリテーション部 言語聴覚療法部門」
 


 言語聴覚療法部門(以下ST部門)は、病院におけるコミュニケーション障害を担当する部門です。現在ST部門の職員は、常勤7名、非常勤3名で、臨床を中心に多くの業務をこなしています。そのほかに、当センター学院言語聴覚学科の教官4名、発達障害情報センターの職員1名が併任で病院の臨床業務を行なっています。ST部門では、聴覚・言語障害、摂食・嚥下障害を主な対象としていますが、対象とする具体的な疾患、障害は多様で少なくとも10種類の障害類型に分けられます。
 入院患者さまは、脳血管障害や頭部外傷による、失語症、高次脳機能障害、運動障害性構音障害、摂食・嚥下障害の方が中心です。年齢層は、交通事故等の後遺症による若年の方から、脳卒中の方が多い高齢の方まで、幅広い方が対象になります。また、頚髄損傷でも摂食・嚥下障害を伴うことがあり、高位頚髄損傷で人工呼吸器依存となった場合には、ST部門が音声確保を担当します。
 一方、外来の患者さまは、言語発達遅滞、口蓋裂による構音(発音)障害、発声発語器官に問題のない構音障害、脳性まひなど、お子さまの言語障害が多いのが特徴です。聴覚障害は、年齢的には新生児から高齢者まで幅が広いのですが、お子さまの聴覚障害はことばの獲得に関係するので、訓練の頻度も多く、期間も長くなる傾向があり、教育機関とも連携を取りながら対応しています。そのほか、幼児から大人まで幅広く対応を求められる障害として吃音があります。また、音声障害は成人の方が多い障害ですが、身体的な問題を伴わないので外来で対応します。入院後の外来フォローなどをのぞくと、外来の患者さまの訓練の指示は耳鼻科から出ることがほとんどです。また外来で耳鼻科を受診される小児、成人の聴力検査についても、ST部門の職員が対応しています。
 このようにST部門では、入院・外来の様々な障害類型の方にサービスを提供してきましたが、最近ではST部門の定員が削減されたために、以前よりも少ない人員で対応せざるを得ない状況となっています。少ない人数で様々な患者さまに対応できるよう、それぞれの職員が複数の障害類型を担当し、幼児から大人までの方を受け持っています。また、外部からの言語聴覚療法に関する様々な電話相談が相当数あり、これまではその多くにST部門が直接対応していました。今後はより臨床業務に専念できるよう、医事課からの協力も得て病院全体として対応できる態勢を整えているところです。
 ST部門はわが国の言語聴覚療法の先駆けとして、当センター設立以来30余年の歴史があります。しかし、近年では医療保険制度も変わり言語聴覚士のいる病院も増え、利用者の方のニーズも変化しています。そのため、従来とは違うことにも取り組んでいくことが、私たちにも求められています。時代の流れに合ったサービスを提供できるよう、力を合わせて取り組んでいきたいと思います。