〔巻頭言〕

国リハが育てる認定看護師一期生への期待

看護部長  田村 玉美


 認定看護師の養成が学院で始まった。認定看護師は、高度化・専門分化が進む医療現場における看護の質向上を図ることを目的に看護協会が発足させた制度である。6ヶ月(600時間以上)の教育を受けたのち、看護協会が実施する試験に合格することによって認定看護師の資格を得る。資格を得た後は認定看護師のレベル保持のため5年ごとに2000時間以上の実績や研究などの業績を積まなければ認定の更新ができない。この更新が看護の質の高さを担保しているとして医師法19条と保助看法の診療の補助の接点で厚生労働省が進めている特定看護師は認定看護師の資格保有を必須とする。また、現在19の分野があり、その一部は診療報酬に反映している。

 平成18年、リハビリテーション看護学会(以下:リハ看護学会)は高齢障害者の増加を予測し運動・認知機能障害について熟練した看護技術や知識をもつ認定看護師の育成を目指して検討委員会を立ち上げた。その翌年には「リハビリテーション看護」として看護協会の認定部に申請書類を提出した。同じ時期に日本脳神経看護研究学会が申請した「脳卒中認定看護」と内容が類似していたことから、当時の看護協会認定部長が両者の間に入り調整を行った結果、「脳卒中リハビリテーション看護」として18番目の看護分野特定として認定された。平成20年2月のことである。

 この認定看護師に取り組んだリハ看護学会は、1988年に東京で開催されたリハビリテーション世界大会に看護部門が含まれていなかったことに異を唱え発奮した落合理事長(当センター初代看護部長)が、当時の津山直一総長の強力なバックアップを得てリハビリテーション看護研究会を立ち上げたことに始まる。学会発祥の当センターで認定看護師の養成ができないか落合理事長は前岩谷総長と中島学院長に相談した。さまざまな意見もあったようだが、「今後のあり方に関する検討会」に学院の新規の学科創設など効果的な人材育成が課題として取り上げられていた時期と重なった。そのような背景もあったのか、今後増加が予想される脳卒中患者に深い知識と技術をもって対応できる認定看護師教育を学院で行うことはセンターの目的である人材育成に繋がると判断した上でのスタートだったと聞く。

 つくば国際大学の長島緑教授に認定教育立ち上げの協力を得られた日が準備の本格的なスタートだった。平成21年に開講していた愛知県看護協会と静岡県看護協会を見学し資料の提供を受けシラバス作成や講師陣などの準備を進め書類を整え看護協会に提出し教育機関として認定された。その後は厚生労働省の予算が認められた4月以降でないと動けないというしばりもあり、受講生の募集は4月下旬から約1ヶ月という短い期間にならざるを得ない厳しい状況だった。

 こうした紆余曲折を経た開講だったが、日本の高齢社会の問題として介護を必要とする人が450万人に達し、その原因に70歳以上が全体の60%を占める脳卒中があることに関心を持つ医療者からは認定看護師の果たす役割は大きいと激励を受けた。このように認定看護師の評価が高い背景にはパイオニア達の働きぶりや実績がある。現在では教育を受ける期間を研修とし経費まで負担する病院もでてきた。受講生が認定看護師の資格を取得し、全国に広がって国リハの卒業生として活躍する姿に思いを馳せると、期待は膨らむ。