〔巻頭言〕

サイズの大小

病院長 赤居正美


 昨今、我が国の人口は今後とも少子高齢化の流れで、どんどん減少するとの予想が出された。 柱となる労働生産人口の減少で、国の将来を悲観視する論調が多いが、果たしてどうなるのであろうか。
 さる2月11日に当センターではWHO指定協力機関の国際セミナーとして、「大規模災害と障害者支援」とのテーマを取り上げ、外国人招待者の講演もあった。 我が国の東日本大震災の関係者からの発表とともに、中国からの発表に当たったのは、やはり大地震を経験した四川大学のスタッフであるが、彼らの華西病院は4300床であるという。 もちろん、国土や人口の大小が関連するのではあろうが、我が国の最大規模の総合病院でも1500床という状況と比べるといかにも大規模である。 数年前に華西病院を訪問した際に朝早い外来部門もみたが、2階までのエスカレータもある巨大なビルであり、まるでラッシュアワー時の駅であった。病院の機能分化が進んでおらず、あらゆる種類の患者が1カ所に集中するとの説明であった。
 同様のサイズ規模については、各種学会の年次学術集会でもよく経験する。 私が昨年幕張メッセで主催した日本リハビリテーション医学会は例年2500〜3000人の参加であるが、日本整形外科学会は8000〜1万人、日本医学会総会は数万人規模である。参加者が万を超える学会では、開催可能な会場は東京や横浜などほんの数カ所となってしまう。 交通などはしごく便利ではあるものの、もう5〜6回も来ている代わり映えのない会場である。地方の県庁所在地など余りなじみのない土地での開催で、学会参加が楽しみというためには、今やせいぜい参加者500〜1千人規模までなのであろう。運営ももちろん大変であり、私自身の経験からも 、参加人数が倍になれば必要な事務量も倍になるというのではなく、より複雑となってしまい、指数関数的に手間が増えるのである。
 以前、我が国の目指す福祉社会の理想としてスウェーデンなどの北欧諸国が取り上げられたが、人口規模が一千万以下の国々は、我が国の施策の参考にはならないという記事を読んだことがある。日本の参考とするには少なくとも人口規模三千万以上が必要であり、産業構造も複雑でなければならず、高齢化率も勘案すると今や適切な外国のモデルは皆無というところなのであろう。
 ひるがえって、現在建て替え中の新病院は、40床×4看護単位の160床で計画されている。 日々多くのマンパワーを求める現在の診療水準の中で、必要な人員が確保出来るかが課題になりそうである。こうした人事管理面に注目すると、数千年にわたる世界各国における軍隊での経験から、ある指揮官の下に把握可能な人員数、各クラスの指揮官の配置や速やかな意志決定に適した組織形成に関して、一定の合理性を持った数字が導き出されているともいう。物事にはちょうどよいサイズ、適正規模があるのだ。