WHO指定研究協力センター活動報告

 WHO(世界保健機関)は国連機関として世界を対象に、"全ての人々が可能な最高の健康水準に到達する"ことを目的として様々な活動を行っています。"障害とリハビリテーション"の分野もその活動のひとつです。WHOには現在194の国が加盟しており、各加盟国は世界の6つの地域(アフリカ、米州、南東アジア、欧州、東地中海、西太平洋地域)のいずれかに属しており、日本は西太平洋地域に所属しています。WHOは各国に"指定研究協力センター"を認定してWHOが行なう事業を世界各国で推進しています。指定研究協力センターは、各専門分野においてWHOへの協力事項と行動計画が決まっていて、国内・外での協力活動、情報・技術の収集と普及を主な役割として担っています。世界には800以上の指定研究協力センターがあり、わが国には33の指定研究協力センターがあります。
 当センターは平成7年に"障害の予防とリハビリテーション"に関するWHO指定研究協力センターとして認定され、今日まで17年間、協力活動を継続してきました。代表的な活動としては、障害とリハビリテーションに関して当センターが有する技術や情報を英語のマニュアル本として作成し、西太平洋地域を中心に各国の保健省や障害関係の機関・団体に配布し、また当センターのホームページでも全文を公開して情報提供を行うことや、国際セミナーを開催し、国内外の専門家や障害当事者の方々の講演、意見交換を行う等を継続しています。2006年に国連の国際条約として障害者の権利条約が成立した際には、権利条約の内容についての国際セミナーを開催し、WHOがCBR(地域に根ざしたリハビリテーション)ガイドラインを作成した際にはWHOの担当者にその主旨を講演して頂きました。また、平成23年6月にWHOが発行した"障害に関する世界報告書(World Report on Disability)"を日本の皆さんに紹介するために、報告書の概要版をWHOの承認を得て日本語に翻訳し、当センターのホームページで公開しています。
 WHOの本部はスイスのジュネーブにありますが、その中に障害とリハビリテーションに関する活動を統括するDAR(Disability and Rehabilitation Team)という部門があり、世界の障害とリハビリテーションに関する指定研究協力センターや他の機関・団体等を集めて今後のWHOの活動方針に関する会議の開催、先述したCBRガイドラインや障害に関する世界報告書等の作成、DARの専門官が各国の活動現場を訪問して助言等のサポートを行っています。当センターはこれらのDARの活動にも参加しています。
 また、日本が所属する西太平洋地域にある指定研究協力センターのうち、フィリピンに1箇所、中国に3箇所、当センターの活動分野と共通する指定研究協力センターがあり、WHO西太平洋地域事務局とともに、昨年よりこれらのセンターが情報交換、交流を進めるための電子ニュースレターを年に2回作成しています。お互いの活動の紹介や、情報収集をしたい場合の呼びかけもできる仕組みも作りました。西太平洋地域には日本、中国、韓国、モンゴル、マレーシア、ベトナムのアジア諸国に加えて、オーストラリア、ニュージーランドの他、サモアやフィジーなどの沢山の島々の国が含まれています。
 当センターは障害とリハビリテーションの分野の技術や情報を利用して、これら西太平洋の国々の障害がある人々の役に立つように具体的に貢献することが求められています。そのためにも、今後、西太平洋地域の同分野の指定研究協力センターとの連携を推進していきたいと考えています。
 当センターの平成24年10月から平成28年10月までの4年間のWHOに対する協力事項を以下にご紹介いたします。

ホームページ
http://www.rehab.go.jp/whoclbc/japanese/index.html
(1) 西太平洋地域の障害をもつ人々の質の高い保健、リハビリテーションサービス、スポーツへのアクセス向上のための知識や資源の開発についてWHOに協力する
(2) WHOに協力して、西太平洋地域の障害とリハビリテーションに関する能力開発活動を行い、優れた実践・経験を共有するための活動を行う
(3) 障害をもつ人々のニーズと権利についての意識を高め、理解を進める活動をWHOと共に行う