〔巻頭言〕

三本の矢

企画・情報部長 東 修司


 いきなり『三本の矢』とは、やや唐突なタイトルであるが、旧くて、そして新しい言葉である。ここであらためて解説するまでもなく、もともとは、戦国武将の毛利元就が、隆元、元春(後の吉川元春)、隆景(後の小早川隆景)という3人の子息に対して授けた教えを指している。一本の矢では容易に折れるが、三本まとめては折れにくいことから、一族の結束の大切さを説いたものとされている。(ただし、これは必ずしも史実ではなく、毛利元就が発した「三子教訓状」が基となった逸話であるとの指摘もみられる。この「三子教訓状」の中でも、一族の結束が説かれているものの、矢に関する記述は無いとされている。)
 他方、最近では、安倍内閣が掲げるアベノミクスの中で『三本の矢』が注目を集めた。相互に補強し合う関係にある施策、すなわち『三本の矢』を一体として推進し、長期にわたるデフレと景気低迷からの脱却を図ることが、現下の最優先課題である。具体的には、第一の矢として「大胆な金融政策」が、第二の矢として「機動的な経済政策」が、第三の矢として「民間投資を喚起する成長戦略」が位置付けられている。この三つの施策の好循環による「再生の10年」を展望しつつ、実現すべきマクロ経済の処方箋を提示することにより、強い日本、強い経済、豊かで安全・安心な生活を目指すとされている。
 さて、本年5月16日に発足した企画・情報部であるが、組織を支える基本的な機能を、この『三本の矢』に例えるならば、さしずめ「企画立案」「情報収集・提供」「国際協力」といったところであろうか。
 第一の矢の「企画立案」では、センター全体の「中期目標」の進捗整理や次の5年間に向けた検討を、企画経営本部を中心に進めている。また、この国リハニュースの編集・刊行をはじめ、効果的な広報の展開を目指した様々な対応は、知恵の絞りどころである。
 第二の矢の「情報収集・提供」については、今回の10月号のトピックスにある高次脳機能障害、発達障害の両情報・支援センターからの報告内容を見て頂くことが、何よりも象徴的かつ説得的である。他方、センター全体の情報基盤を構築するためには、各種システムの整備・更新やホームページの管理運用、情報セキュリティ対策も欠かせない。
 第三の矢の「国際協力」では、国際協力推進本部を中心に、西太平洋地域におけるWHO指定研究協力センターとしての取組や、JICAプロジェクトへの協力等が展開されてきた。日中韓3か国連携事業や国際セミナーの開催など、センター独自の対応も進められている。
 最後に、これら『三本の矢』は相互に深く関連している。まず、幅広い視野に立った企画立案を進めていく上で、国内及び海外からの情報収集は大切な「源泉」となる。さらに、センターの取組を国内及び海外にわかり易く情報提供する対応、すなわち「発信力の強化」が今後一層の重要性を増す。その際には、広報戦略の企画立案、情報提供ツールの創意工夫、それらを支える情報基盤の構築が「鍵」となるであろう。
 未だスタートして半年を経ない新たな組織であるが、こうした『三本の矢』のそれぞれを発展させるとともに、相互の連携や、一体的な推進による高い付加価値を目指すことが使命である。センター各部門からのご理解・ご協力を頂きながら、企画・情報部としての重層的な組織力が発揮できるよう、少しずつ着実に前進してまいりたい。