〔巻頭言〕

新年の挨拶

総長 中村 耕三


 あけましておめでとうございます。旧年中は、国立障害者リハビリテーションセンターの運営にあたり、ご尽力くださいましたことに感謝申し上げます。
 さて、年頭にあたり昨年を振り返ってみますと、障害にかかわることで大きな進展がありました。一つは、「障害者の差別禁止や社会参加を促す国連の障害者権利条約」の批准に向けて、6月に「障害者差別解消法」が成立し、12月には参院本会議で可決されたことであります。我が国の障害者施策における大きな歩みであります。そして、障害者基本法に基づく「障害者基本計画(第3次)」が定められました。平成25年度から29年度までの概ね5年間を対象とした、政府が講ずる障害者のための施策の最も基本的な計画であります。また、昨年、9月7日、ブエノスアイレスでの国際オリンピック委員会(IOC)総会において、2020年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催都市が東京に決定いたしました。先のロンドンパラリンピックでの感動を共有できた私どもにとり、この上ないうれしいニュースでした。
 今年、センターは平成22年度からはじまった5年間の中期目標の4年目で、4月から最終年度に入ります。これまでの目標の実施成果を総括し、平成27年度からの新しい目標の策定を準備する年にあたります。この新しい中期目標は、「障害者基本計画(第3次)」の2年後から開始され、3年間の重なりをもって実施されることになります。
 「障害者基本計画(第3次)」は、共生社会の実現に向けて、国が取り組むべき障害者施策の基本的な方向を示しています。その本文には、国立障害者リハビリテーションセンターの名前を直接あげ、各障害に対応した機能回復訓練、医療相談及び心理支援、障害者の健康増進についてもサービスの提供、情報提供を行う、また、障害に係る専門的な研究、障害保健福祉に従事する職員の養成・研修において当センター等の国立専門機関の積極的な活用を図る、とされております。
 計画の中には、発達障害、難病、高次脳機能障害、盲ろう、骨・関節等の機能や感覚器機能の障害等への対策、障害児支援の充実、障害の重度化・重複化,高齢化への対応、外出のための移動支援、障害者の健康増進についてもサービスの提供、情報提供を行うとされています。また、リハ技術の開発、訓練プログラムの改善、福祉用具の研究開発・標準化を進めることも計画に取り上げられ、スポーツへの支援、障害分野における国際協力、防災対策も重要な課題とされております。また、分野に共通する重要な横断的視点としてアクセシビリティの向上があり、その推進の観点から、積極的な広報活動に努めることが求められています。
 これらの計画の多くはセンターですでに進行中でありますが、一層の推進が求められているということであります。このためには、取り組みの現状と課題を吟味し、その総合的な展開や成果の発信を含めて、次の中期目標に反映させていく必要があります。
 センターのロゴは、センターを出発点として、未来にまた広く社会各方面に向って伸びようとする利用者・職員の姿、リハビリに対する強い意欲・意思・たゆまざる努力を示すものであります。この原点に帰り、また時代の変化に対応した新しいリハビリテーションセンターをめざす一年にしたいと思います。本年もどうぞよろしくお願いいたします。