〔巻頭言〕

病院長就任挨拶

病院長 飛松好子


 この度4月1日付けをもちまして国立障害者リハビリテーションセンター病院長に就任いたしました。
 こちらに再度赴任して5年になります。以前の国立障害者リハビリテーションセンターよりも組織的に整備され、対象とする障害者の種類も多様になりました。このような変化は世の中が様変わりしているからです。
 様変わりの理由は、日本の高齢化にあります。現在、日本は65歳以上の高齢者が人口の21%以上を占める超高齢社会です。2030年には人口のおよそ3分の1が高齢者だと予測されています。
 センター病院においても高齢者の障害者と、障害者の高齢化が見られます。高齢者の転倒等による軽微な外力によって生じた不全頚髄損傷の方に対するリハビリテーション手法の確立が急がれます。脳血管障害の方の入院は回復期病棟の普及によって当院においては主流ではありませんが、しかし、高次脳機能障害を合併するような脳血管障害の方も少なからずいらっしゃいます。若い頃に障害になられた方々の高齢化の問題も起こっています。機能の低下や、肩や肘関節の障害などが見受けられます。
 また患者さんの多様化として、高次脳機能障害の方や、発達障害の方、ロービジョンの方に対するサービスや吃音、難聴の方に対する取り組みなど、時代に即した対応が求められています。さらには、総合支援法によって難病の方も障害者と同様の福祉サービスが提供されることとなって、センター病院の役割はさらに多様化してきています。
 このような超高齢社会においてその影響は障害者の生活にも及んでいます。障害者同士のご夫婦の場合には、障害者による障害者の介護や、障害者による年老いた親の介護、高齢の親による障害者の介護など、超高齢社会は障害者の生活にも影響しています。
 すなわち障害者の健康増進、"健康寿命の延伸"が重要な課題のひとつとなるわけです。センターでは病院に健康増進センター(現障害者健康増進・スポーツ科学支援センター)を作り、障害者の健康増進に取り組んで参りました。そして保健としての健康増進にとどまらず、障害者の生活の質(QOL)も見据えたスポーツ科学支援も行っています。
 病院の果たすべき役割は、医療サービスの提供にとどまりません。時代の求めに応じた新たなリハビリテーション手法の開発や、その分析等、研究活動もまたその使命のひとつです。 社会状況の中で、果たすべき役割を考えながら、同時に病院として普遍的に問われる「安全で質の高い医療の提供」を踏まえて、病院の機能を発揮したいと考えています。このような取り組みは病院だけでできることではありません。研究所、自立支援局、学院、管理部、企画・情報部との連携と協働によってセンターの一部門としての役割を果たしていきたいと考えています。
 初めての病院長職で、勉強することが山のようにあり、また皆様のご協力を仰ぐことも多々あることと思います。
 今後ともどうかよろしくご指導ご協力のほどお願い申し上げます。