〔トピックス〕
専門外来紹介
 

○ 嚥下外来

 当外来は嚥下障害の患者様を診察する外来です。
 嚥下障害とは水や食物などがうまく飲み込めない状態を示します。ちょっと考えてみましょう、実は嚥下障害には2つの意味があります。
1つは文字通り食物などがうまく飲み込めないことです。ではうまく飲み込めなかった食物はどこに行ってしまうのでしょう?ヒトののどは先に行って気管と食道に分かれるので、うまく飲み込めなかった、つまりうまく食道に運ばれなかった食物の行き先は、多くの場合気管になるのです。だから嚥下障害の2つ目の意味は、気道(空気の通り道)をうまく保てずに、窒息や肺炎などを引き起こす可能性があることと考えられるのです。
 したがって当外来では患者様に対して、どうしたら食物をうまく飲み込めるようになるのかを考える事と同時に、どうやったら気道を安全に確保できるかを考え、訓練が必要であればその計画を立案します。巷間見られるような「患者様さえ頑張ってくれれば食べられる」といった無理な、あるいは過度な訓練は決して行いません。
 このような診療・訓練は、嚥下に対する高度な理解と技術によって支えられており、当センターにはこれに応えうるスタッフや設備が整っていると考えております。

○ ロービジョンクリニック

 ロービジョンとは、病気やけがなどが原因で様々な見えにくい状態のことです。したがって、低視力というよりも低視覚というべき状態です。私たちのロービジョンクリニックでは、まったく見えないいわゆる全盲の方も対象とさせていただいています。
 ロービジョンで視覚に障害をお持ちの方のほとんどは、わずかであったとしても活用できる視覚を持っています。この保有視覚を生活にいかに利用するかということを患者様とともに追求します。具体的には、小さくて見えにくいものを見るために拡大鏡などの拡大器具を選定し、必要に応じて使い方の訓練を行います。まぶしさでお困りの方には、遮光眼鏡などをご紹介しています。
 さまざまな道具を用いても文字の読み書きが難しい重度の視覚障害の方には、IT機器や点字訓練、歩行訓練などを取り入れ、日常生活に必要な訓練に加え、就学や就労の継続のための様々な情報を提供します。また、患者様の状況によっては、これらの訓練を集中的かつ効率的に行えるように短期間の入院訓練を行うこともあります。
 ロービジョンクリニックは、眼科医師、視能訓練士、生活訓練専門職(兼ケースワーカー)が主に担当しております。必要に応じて、当クリニックにとどまらず、当センター内の視覚障害に関わる部門や地域の眼科医療機関、教育、福祉施設などとも連携しながら、患者様がより快適に生活できるようにスタッフ全員でお手伝いしていけることを願っております。

○ シーティング・クリニック

 当センター病院のシーティング・クリニックは今年で16年を迎えました。
 「シーティング・クリニック」とは、自力で座ることができない方や椅子に座ることができても座ったときの姿勢を保つこと(以下「座位保持」といいます。)に問題がある方、即ち座ったときに、①体が傾く ②捻じれる ③前方にずっこける などの状態がある方々を対象に、その改善を目的として、個々の患者様に適した機器の提供と助言を行うなどのサービスを提供する部門です。
 シーティング・クリニック部門では次のサービスを三本柱として実施しています。
①座位保持装置の設計・適合
 主に車いすに装着する座位保持装置の設計・適合を行います。
②電動車いすの適合と訓練
 それぞれの患者様に最適な電動車いすの選定(一部改造等を含む。)を行い、操作訓練 を行い、移動手段を確保します。
③褥瘡予防
 座り方の指導と助言、車いす・クッション等の点検と提案
 クリニックは毎週金曜日に行っています。
 スタッフは医師、理学療法士、義肢装具士、リハ・エンジニアですが、目的に応じて作業療法士、言語聴覚士も加わります。
 受診者は、主に脊髄損傷者、脳性まひ、神経筋疾患の方で片麻痺、リウマチ等の骨関節疾患がある患者様も受診されています。
 本クリニックでの活動は開設以来、スタッフによって各種学会や研究会の発表などを通じて全国に情報発信してまいりました。
 その成果は、徐々に医療関係者や患者様に伝わり、関東圏域に限らず、信越地域、東海地域など県外からの患者様もおられ、また他の病院に入院中の患者様、特別支援学校にお通いの方、福祉施設を利用されている方など、幅広く受診されています。
 新病院棟開設に当たって、シーティング・クリニックは、今後とも患者様のニーズを適切に把握しつつ、より一層クリニックの充実に努めてまいります。

○ 補装具診・装具外来

 当センターには義肢装具技術研究部があり、病院においても装具外来および補装具診にて装具療法の診療を行っています。
 通常の足底板や短下肢装具などの一般的な装具の作成は火曜日および金曜日の装具外来にて対応しています。時間枠は午前中の10時半からと11時からがあり、これは通常外来と一緒に行われています。
 義手や義足などの義肢、また装具でも通常のものより検討、調整の必要な難しいものは火曜日午後の補装具診という専門外来で対応しています。同外来には医師以外に義肢装具士が同席し、必要時は理学療法士、作業療法士なども参加して検討しながら義肢や装具の作成をすすめています。専門外来であるので広い診察室も備え、歩行や動作を実際に行って通常外来よりも時間をかけて検討しながら診療しています。筋電義手の評価・作成も対応可能であり、短断端や条件の良くない切断肢の義肢も可能な限り対応しています。実際に他院では対応不能な3肢切断や4肢切断などの多肢切断に対する義肢作成の治療経験も有しています。また実際に作成する症例だけでなく相談レベルの受診にも対応しています。
 補装具診は午後1時半からと2時からの時間枠があり、検討を要するケースに対応するため完全予約制としています。

○ フットケア専門外来

 フットケア外来は、平成20年に、多職種で関われる障害者へのサービスという観点から生まれました。看護師、理学療法士、義肢装具士などが知恵を出し合い、また医事課も積極的に関わって、何回か会議を開いて、出発しました。
 フットケア外来では自分ではなかなか足のケアのできない頚髄損傷の方や、糖尿病で常に足のケア教育の必要な方や、チェックの必要な方など、足浴の必要な方が多いのですが、足浴のためのシャワーを用意するなどの工夫がされて、汲み置きの湯を使うということがなくなりました。また、少ない人数で目を行き届かせるために部屋の仕切りをすりガラスにするなど、患者様のプライバシーに配慮しつつ安全管理を怠らないようにする工夫もなされています。
 足は歩行のための重要な身体の一部です。歩き方を観察するということも重要です。フットケア外来の部屋は、装具診などと共用することを前提にデザインされており、外部の人に見られることなく、十分に歩行を観察できるだけの広い部屋が用意されています。また、義肢装具士や看護師、理学療法士などスタッフの数が増えても十分なスペースがあり、その日に来てくれる義肢装具士の業者の方が作業するスペースも十分あります。
 レントゲンもフィルムを患者様が撮影室から持ってくることなく、画面上で画像が見られるようになったこともあって、ますます便利になりました。
 脊髄損傷、頚髄損傷者の足のケア、爪の管理、片麻痺の方の歩行時痛の軽減や装具の工夫、糖尿病の方の足のケア、潰瘍の予防と治療、ポリオの方の装具の工夫など、障害のある方の足の治療とケアは当院のフットケア外来の特徴です。

○ 健康増進・スポーツ外来

 今回の新病院棟開設に際し、2階のST訓練室近くに事務室を持ち、さらに同じく2階の共同訓練室スペースで運動療法スタッフが対応できるようになりました。部署名が長いので「健康スポーツセンター」あるいは「健スポ」と覚えていただければと思います。これまで通り、太り過ぎ、痩せすぎ、体力低下に注意しようと思っていても、病気や障害によって難しい場合への対策、また、生活の中にスポーツを取り入れたくても方法が分からない場合の相談に医療・スポーツ・栄養・生活指導の面から取り組むサービスと研究を行っていきます。今回、外来棟の中で簡単な運動ができるようになったので、これまで体育館まで移動して運動するには患者様の状態が不十分であると思われていた場合でも、柔軟に対応ができるようになりました。
 また、画像検査機器が新規のものになったことをうけ、骨密度・体組成などの健康管理情報や、MRIを用いた障害者のスポーツ外傷に対する治療もより高い水準のものを提供できるよう、心がけたいと考えています。健康増進外来は整形・リハ科・内科で行っており、医師の診察後、その人にあった運動療法や栄養指導を行い、体調管理のお手伝いをします。ご希望の方は各科の担当医に受診を相談してください。その他、木曜日には障害者スポーツ外来を開設し、障害者スポーツの競技中に生じた怪我や痛みに対する治療を行っています。